第33話 偶然の手引き
なるほど、だからこんな所に居た訳だな。
……本当にそうか? なんだかピンと来ないな。いまいちしっくり来ないが、それで自分を納得させる事にする。
協力する事でここは切り抜けるぞ。
「ふざけた喋り方をする人間だ。こっちではこういう頭の悪そうなのが普通なのか?」
「あ、ひっどーい。オレってばバカだけどそういう言い方されると傷ついちゃうんだよね。そんなんじゃお姉さんとお友達に慣れないべ」
「人間の友などハナからいらん」
「この子の友達なんて、それこそ今はどうでもいいでしょう? さっきの返答だけど、別に一緒に探してくれる必要なんて無いわ」
協力する必要は無いって事か? 不味い、当てが外れたぞ。
心臓の音が早くなる。どうする? どう切り抜ければ……。
「……うん、貴方がそうなのね」
水晶のような物を持った女が俺の前に立ってニヤリと笑った。な、何だ? 悪寒が走って仕方が無い。
「な、なにか?」
「貴方、私達の探し物を持ってるわね? 手を降ろしていいから差し出しなさい」
何だと!? どうやら俺はどこかでこの女達が探している物を手に入れたらしい。
しかし何だ? 一昨日から今日に掛けて手に入れた物は……この指輪? いや、それなら同じ物を棚見も持ってるし、入ってる物も全く同じだ。
(棚見に無くて俺にあるもの……?)
そこで、俺はふと宿屋での出来事を思い出した。
椅子に置いてあった石だ。何の変哲もない石。後で捨てようとズボンのポケットに入れっぱなしにしたまま忘れていた。
(だけどこれか? ただの石突き出してふざけるなって殺されるんじゃ……。でも他に思い当たるものが無い。……ええい、ままよ! どの道他に突破口なんか無いんだ!)
俺はポケットに手を突っ込んで石を掴むと、それを取り出して女の前に突き出した。
「ふふ、お利口ね。やっぱりそうだったじゃない」
「何を言って! 大体お前が落とさなければ……」
この女達の会話からして、やはりそうだったらしい。
水晶のような物を見れば、さっきよりも光が強くなっている気がする。
「お姉さんってば石コレクターだったんだ。見た目の割に渋い趣味してんじゃん。でもま、これでオレ達もお役御免っしょ?」
「そうね、確かにあなた達の役目は終わったわ。おかげで余計な苦労をせずに済んだもの。だからお礼に――」
急に身の毛がよだつような感覚に襲われた。まるで体が地面に縫い付けられたように言う事を聞かなくなるような。
ちっ! この女達はやっぱり俺達を殺す気だ。
隙が見えなかったが、こうなったらこのまま抵抗するしかない。
そんな時だ、手のひらの石が急に光始め……。
「が!? 目がっ!?」
「くっ! これで間違いないわ。でもなんでこのタイミングで……!」
女達が何かを言っているが、辺りを覆う光で顔もよくわからなくなった。
でもこれじゃ俺の目も……。くそ、何が回りにあるか分からないから動きようが無いぞ。
次の瞬間だった。
俺の手が誰かに引っ張られて、そのままどこかに連れ去れてしまったのだ。