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第30話 波乱が来たる

「ふぃ~着いた~」


 あれから更に数時間、二人の内片方は肩を落としながら目的の場所に到着した。

 道中は魔物に遭遇する事もなく順調な旅路だった。

 おかげで俺の足も大分回復……する訳ない。酷使してるんだから仕方ないじゃないか。


「よし、それじゃあ早速中に入っちゃうぜ!」


 意気揚々と炭鉱跡地へ入っていく棚見を見送りながら、再度俺は自分の足の調子を確かめるように軽くジャンプした。…………やらなきゃよかった。


「何してんの? 置いてちゃってお宝もオレのもんにしちゃうよ~」


「……直ぐ行くさ」


 呑気なもんだな。


 中に入れば当然暗い。跡地でありもう使われていないのだから、明かりなぞ付いていないのだ。

 なんとなくジメジメしていて、でもガスの臭いはしない辺りはまだましか。

 唯一いい点はひんやりしている事。人によっては快適な空間だろうな。


 今日ここに寄ったのは、いわゆる棚見の気まぐれだ。

 地図を見て、村からほど近い場所にこの炭鉱跡地を見つけた。それで好奇心を刺激されて行きたいと言い出した。


 今なら装備の面でも余裕があるし、わがままの一つくらいは聞いてやってご機嫌取りをするのも別に悪くはないかなと、俺自身そんな気持ちで了承した。


 指輪の中に入っていた松明にマッチで火を付けて持ちながらも相変わらず鼻歌を歌いながら前を歩くその姿。本当にお宝があるとでも思ってるんだろうか?

 普通、炭鉱跡地っていうのは取るものを取り切ったから跡地なんだ。

 一体何を期待しているというのやら。


「ふんふ~ん」


 ま、いいか。本人が楽しいならそれが一番なんだろう、きっと。


 火の灯りで仄かに照らされた岩壁は、つるはしの跡が目立つ。

 この何度も叩きつけられた痕跡から、石炭が残っている可能性はやはり感じない。

 仮に見つけたとしても活用出来る訳じゃないが。


「お前が石炭に興味があるとは思わなかったな。古い汽車でも好きなのか?」


「石炭? 何言ってんの、こういうトコ来たんならやっぱ金っしょ!」


(こいつ……、薄々そんな気はしていたが炭鉱の意味をわかってないぞ)


 こんな所で見つかるのは当然石炭か石灰岩ぐらいなもんだ、よくて鉄鉱石だろ。

 こいつ、ここを鉱山かなんかだと勘違いしてやがる。


 ……別にいいけどな、半ばわかってたし。



「ねえ、香月くん。なんか変な音しない?」


「……え?」


 言われて耳を澄ませば、確かに何か聞こえるような。


「ちょっ~と、見に行っちゃおっか」


「は? え、あ、おい!?」


 言いたい事だけ言うと棚見は奥の方へと慎重に音を立てずに進んでいった。


「……ちっ」


 もしかしたら俺だけでも引き返すのが正解なのかもしれない。しかし光源を新しく作るのも面倒だし、ここで一人で帰るのもきまりが悪い……ような気がする。


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