第28話 先を見据えて
「目のクマすごいね、どうしたワケ?」
「……気にするな」
宿のモーニングサービスでパンとスープを食べながら、自分の迂闊さを呪っている俺。
久しぶりに徹夜してしまった。本に夢中で夜が明けたなんてのは、余程の本の虫ぐらいしかやらないと思っていたが……まさか俺がこんな事するとは。
ま、まあいい。簡単だが魔法の知識を得た。後は練習あるのみだ。
今はスープでも飲んで腹を満たそう。
「あっつぁあ!?」
「大丈夫? 顎でスープは飲めないよ」
だめだ、頭がはっきりしてない。
足の疲れも取れてないし、最悪だよもう。
「そういえばさ、ここの椅子に座る時にこんなものが置いてあったんだけど……」
そういって棚見が見せて来たのは、手のひらに乗っかる程度の小さな石のようなものだった。
「誰かの忘れ物かな? 石コレクターみたいな人の」
「なんだよ石コレクターって。ポケットにいつのまにか入ってた小石に気づいて置いていったんじゃないか?」
そう、何の変哲もないただの石にしか見えない。
別段表面が綺麗なわけでもないし、ゴミとして置いて行ったんだろう。迷惑な話だ。
「貸せ、後で外に捨てておいてやる。こういう自分勝手に店に迷惑掛ける人間のせいで、サービス内容が変わったりするんだ。そういう奴を見ると腹が立つ」
「ああ、いるいる。その場のノリで店の物壊してネットに上げるヤツ! ああいうののせいでオレも変な目で見られたりするんだよね~嫌い」
やはりああいう迷惑系の人間というのは、似た見た目の陽キャにとっても嫌われる対象らしい。
棚見の手から石を取ると、ポケットにしまい込んだ。
ちなみに、今俺達は指輪に入っていた服に着替えている。やっぱり新鮮な服に着替えると気持ちがいいもんだな。
制服は汚れも目立っていたし、どこかで洗濯したいもんだ。
サイズもそれなりに揃っていて、男女どちらでも着れるような無難な服だが、それがありがたい。
「食べるもの食べたし……、それじゃあこれからどこ行くか決めようぜ」
地図を取り出してテーブルに広げる棚見。
現在地点が分かりやすく赤い点で示されている。これは昨日の道中で気づいた事だが、この点は俺達が進むと同時に移動しているようだ。これも所謂マジックアイテムってやつなんだろう。
この村から先は一本道というわけじゃない。いくつか分岐されていて、それぞれが町やら森やらに繋がっているようだ。
これがゲームならば、途中の洞窟あたりに寄って経験値を上げたり宝物を探したり、そういうことをするんだろうが……。
「俺個人の意見としては普通に次の町を目指したい。だけど、お前はどうだ?」
二人旅をする以上、俺の意見だけを押し付けるのも不味いんじゃないか? 昨日からそういう考えるようにして、棚見に意見を求める事にした。
「オレ? オレはねぇ……」