表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/82

大波


 ――ラハルの森 vs."変異"ゴブリン



 ピキピキッビキ!!



 俺が気味の悪いゴブリンを抑えていると、リッカの氷の塔が目の前に顕現する。


 目の前に一瞬で創造された氷、ヒンヤリした冷気。ドン引きしていた俺は、少しだけ反応に遅れて、普通にびっくりしたし、普通に鼻水を垂らした。


 それにもかかわらず、目の前の"氷塔"の中にゴブリンの姿はない。


 俺は見ていた。


 リッカの氷が地面から上がってくる瞬間に、発達していた両腕の筋力がグニュんっと両足に移動して、"空中"を蹴ったのを……。



 ゾクゾクゾクゾクッ!!!!



 俺の背筋には冷たいものが走る。



 キモすぎるだろ!! 

 な、なんだ、アイツ!!

 ゆ、夢に出る! 

 グニュんって! グニュってぇえ!!


「あ、主様!! マジックゴブリン? ……とりあえず、"変異種"なの! それもかなり上位、」


「そんな事知るか! そんなことより、見たか? 今のグニュんって!! 身体がボコボゴォって!!」


「……」


「おい!」


「……け、気配がないの!! 妾でも感知できな、」


 リッカの言葉を遮るように、俺は《地面縮小アースシュリンク》を発動させ、リッカとシルフィーナの背後に移動し、


 ガキンッ!!


 また両腕が発達している"変なゴブリン"の鎌のような双刃を受け止める。


「コ、コイツ……なんて高位の《隠密》なの?」


 リッカの言葉を背に受けながら、俺は目を瞑った。また"グニュん"を見せられるわけにはいかないからだ。


 あ、あんなのが夢に出てきたら、飛び上がって起きる自信がある。疲れ果てて眠っているであろうアリスに、そんな情けない姿を見せるわけにはいかない!!


 と、と、とりあえず、早く屠ろう。

 それにコイツの"暴力の気配"はシルフちゃんのおっぱいにしか向いて、


「……アード君……」


 ポツリとつぶやかれた言葉に、俺はクワッと目を見開いてバッと振り返った。


「主様。少し面倒だから、妾が広範囲を一気に凍らせ、」


「大丈夫だ、リッカ。ここは俺に任せろ!」


 またもシルフィーナに向かう"不埒な気配"。


「《重力縮小グラビィティ・シュリンク》」


 俺は周囲1m前後の重力を縮小シュリンクを済ませると、片腕で軽く刀を振る。


 ガキンッ!!


 俺は難なく変なゴブリンを弾き飛ばした。


 あのいびつな両腕の筋力が力を発揮する前……、つまり、重力が急に軽くなった場所で勢いよく振り上げた両腕により、ゴブリンの体勢が死んだ瞬間。


 そのタイミングに合わせて弾けば、


 ガサガサガサッ!!


 ゴブリンを吹き飛ばし、木々に突っ込ませるくらいはわけないのだ。急な剣戟の音にシルフィーナはビクッと身体を震わせるのを見つめながら、


 ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ!!


 "なかなかのスピード"の攻撃を弾き返し続ける。


「……主様? 何してるの?」


 リッカはジトォーっとした視線で俺を見つめる。


 呆れたような、諦めたような、軽蔑したような……。まるで俺がわざと屠らない事に気がついたような態度だが、俺がそんなものを気にするわけがない。


 シルフィーナは音が響く度にビクッと身体を震わせる。その都度、一緒に踊っているおっぱいに俺は釘付けなのだ。


 シルフィーナを襲うゴブリンの気持ちがわかってしまう自分を愛おしく思う。※なんで?


「……ア、アード君、ウチ、相手の姿が見えないんだけど!!」


「……安心してくれ!! 俺には見えてる! (おっぱいがっ!!)」


 ガキンッ、ガキンッ!!

 バユンッ、パユんッ!!


「す、すごいスピードッ!! ゴブリンって弱いんじゃなかったの!? こんなゴブリン……まだウチじゃ……」


 ガキンッ、ガキンッ!!

 バユンッ、バユンッ!!


「……確かに、素早い動きだっ!! くっ、くっそぉ~……おそらく、最上位だな! なかなか手強い……(おっぱいだッ)!!」


 ガキンッ、ガキンッ!!

 バユンッ、バユンッ!!


「……えっ!! ウ、ウチも戦うよ!!」


 シルフィーナは2本のダガーを手に取るが、俺の視線はシルフィーナの"片乳"に夢中だ。


 心臓部には簡易鎧を装備しているシルフィーナ。固定された"お山"に、寄せては返す"片乳おおなみ"。


 流動的で一箇所に留まることがない津波おっぱいは俺の欲望を刺激する。


 は、は、挟まれたい……。

 俺は、この"大波"に溺れたい!!


「……えっ……? アード君!! な、何か指示して!! ウチにできる事はなんだって!!」


「……えっ、マジで……!?」


「アード君!! 早く!」


「……えっ、あ、……ん?」


「ウチ、アード君がいつ攻撃されたのかわからなかったけど、……"受け流す"だけなら、ウチにだって!! 大丈夫、きっと反応できるよ!!」


 勇ましくグッとダガーを握りしめたシルフィーナの言葉にハッと我に帰ると、何やら鼻の下に液体が流れているのを感じた。


(鼻水か……? 攻撃なんてされてないが?)


 俺は首を傾げながらスッと拭い、緊張しながらも立ち向かう事を選んだシルフィーナに、(不安にさせすぎたな……)なんて少し反省する。



 ガキンッ、ガキンッ!!



 襲い来るゴブリンを片手で軽くあしらい、シルフィーナの肩にそっと触れる。


「アード君、ウチだって、」


「わかってる! 大丈夫。心配しなくていい!! シルフちゃんは、これから異常なスピードで強くなれるよ! さっきの戦闘でわかってるから……」


「……えっ? でも、アード君、」


「ふっ……、だが、今は俺に任せてくれ。俺は冒険者の先輩だし、勇者パーティーのポーターだからな! それに……、"もう、充分見たから"……」


「……アード君」


「安心していいからな?」


 俺はニカッと笑顔を作ってから、めちゃくちゃ真剣な表情を浮かべ、果てしなくカッコつけると、シルフィーナに完璧すぎる横顔を見せつけた。


 『いつも酒場に来るグータラの常連客』


 そのイメージはそろそろ払拭してもいいだろう?


 俺が、"実は無能じゃない"と知っているシルフィーナ……、いや、「守るべき対象」であるシルフィーナには、力を誇示する事で"本当"に只者じゃないと教えておいた方がいいのかもしれない……。


 ってか、シンプルにチヤホヤされたい!


 当初の目的通り、


 ――アード君、素敵!! 抱いて!!


 なんて言われて、


 ――悪いな、俺にはアリスがいるから……。


 なんて言って、カッコつけたい!!

 でも、シルフィーナは抑えられなくて、俺を押し倒して……ハハハッ、最高かよ!


「主様、カッコつけてるけど鼻血が出てるままなの」


「……は、鼻血?」


「乱暴に拭ったから頬にまでベットリなの」


「……」


「…………」


「……」





 死にたいんだが……?






「……ア、アード君! だ、大丈、」


 慌てた様子のシルフィーナの言葉を片手でいさめ、あまりの恥ずかしさに赤面しながらも鼻血を拭った。


 ……めちゃくちゃカッコつけてたのに台無しだ。なんで俺は『ここぞ』という時にバシッと決まらない……?



 ……全ては煩悩か……?

 俺の煩悩は絶対に108つじゃない!!

 クソッ!! ふざけろッ!!

 いっつも、いっつも俺の邪魔しやがって、俺っ!!



 ガキンッガキンッ!!



 ってか、なんだよ、コイツ!

 いつまで諦めないんだよ!! 

 気持ち悪い!!

 さっさと消えろよ、バカがッ!! 


 俺は襲ってくる"変なゴブリン"のせいにした。

 もう全てはコイツのせいなんだと、情けなすぎる自分を正当化して、剣を少し握りなおした。







〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「大波のルビ、おかしいやろ」

「シルフィーナ好きィ!」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

 広告下の評価ポイントを、


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】


 にして【ブックマーク】もして応援して頂ければ最高にテンション上がります! たくさんのブクマ、評価、心から感謝ですよ! 毎度、励みになっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ