酒は飲んでも呑まれるな!
ギルドマスター、もとい、ブリーフマスターへの"処理"を終え、その後のシルフィーナ、アリス、リッカとの晩餐から一晩明け……
―――高級宿「風見鶏」
「スゥー……スゥー……」
う、嘘だろ……?
え、いやいや……、ち、違う。
アリスとは違うがとてもいい匂いと抱き心地。
ガバッ!!
ベッドから飛び上がりベッドを見下ろす。
(な、何があった!!??)
スヤスヤと眠っている肌着だけのシルフィーナと上半身に何も着ていない俺。
えっ? あ、いやいや……はっ?!
違う! ち、違う!! し、"して"ないよな?!
部屋はいつもと少し違う。
造りは同じだが、俺とアリスの"新居"ではない。
ゴクッ……
そんな事よりも、気持ちよさそうに眠っているシルフィーナが刺激的すぎて、俺の目はバッキバキだ。
細くしなやかな四肢は引き締まっているが、出るところはバッチリと出ている。胸の谷間の暴威と、少しエッチな"おパンツ"の食い込み。
(さ、最高かよ……)
って違がぁあうッ!! アリスは? リッカは!?
こ、これは流石に冗談じゃ済まないだろ? いや、してない! してないよな……? してたら流石に覚えてるよな!? してたらマジで色々とヤバいよな!?
そもそも、"してた"んだったら……、忘れてるなんてどういう了見だ!! ど、どれだけもったいない事してるんだよ……。じゃ、なくて、マジでクズじゃないか? 俺!!
俺はズキンッ、ズキンッと痛む頭を抱えながら、昨夜の事を必死に思い返した。
※※※※※
「ふふっ……あはははっ。アード君! 楽しいねぇ!」
見た事のないほどのシルフィーナの飲みっぷり。
俺のペースに合わせて酒を飲んでいるうちに、シルフィーナは何でもない事でも笑い始めた。
無邪気で子供のような笑顔だが、仄かに染まった頬に少し潤んだ瞳、完璧なスタイルは控えめに言って死ぬほど色っぽかった。
「ハハッ! 大丈夫か? 無理に合わせなくていいんだぞ? シルフちゃん!」
「むぅー……ウチ、今日はアード君に付き合うの!」
ピタッ……
俺の隣に座り、至近距離で顔を覗き込んでくるシルフィーナ。
「えっ、あ、シ、シルフちゃん?」
「あははっ、ふふっ、アード君だ!」
シルフィーナはまた無邪気に笑うと、俺の頬を軽くツンツンしては、頬を赤くして「ふふっ」と小さく微笑み、パッと顔を手で覆う。
(な、なんなんだ? この生き物……。は、はちゃめちゃかわいいんだが?)
チラチラと指隙間から俺を見つめては、
「アード君って……、やっぱりかっこいいよね?」
急に真剣な顔をして首を傾げる。
「ハ、ハハッ! 今更気づくなんて、」
「前から知ってるもぉん!」
ニカッと微笑むシルフィーナと、心臓が"ハウッ!"としてしまった俺。
チラリとアリスとリッカの様子を伺っては、熟睡しているアリスに安堵し、"寝たフリ"をしているリッカに心を落ち着けるが……、
コテンッ……
シルフィーナは俺の肩に頭を置き、俺を更に動揺させる。
シルフィーナが酔えば、こんなに小悪魔だったとは……。だ、誰にでも……? いやいや、ガーフィールが許すはずない。
ダメだ。いい匂いがするし……!!
鼻息の荒くなる俺。
だって、谷間が"こんにちは"してるんだから、これも仕方ない。「浮気は流石に……」そんな事を考えながらも、俺はグラっグラだ。
酔いもあってか、今にも大きなお胸に手を伸ばしそうになっている。
「ねぇ……、アード君……」
「……ん? ど、ど、どうした?」
至近距離での上目遣い。
仄かに染まった頬、濡れた唇……。
シルフィーナはジッと俺の唇を見つめ、
「キス……しよっか……?」
小さく呟きながら俺の瞳を見つめた。
「……え、あ、え? シ、シルフ、」
「アリスさんとは"した"……?」
「……」
シルフィーナは俺の目を見つめたまま……。
――心から幸せです……、旦那様。
シルフィーナの言葉に、アリスとの『初めて』の記憶が蘇り、俺は「ふっ」と小さく笑みを溢す。
これで正気に戻るなんて、俺はなかなかアリスに"やられてる"。まさか、こんな形でもそれを実感させられるなんて、アリスは本当に罪深い女だ。
「……ああ! したぞ? けど、詳細は内緒。俺とアリスだけの秘密だ!」
「……ハ、ハハッ……、そっか!」
シルフィーナは椅子に座り直し、グイッと果実酒を煽ると、俺に顔が見えないように視線を伏せた。
「……ん? シルフちゃん?」
「ふっ、ふふふっ! そっか! そうだよね!! "お嫁さん"なんだもん! そんなの当たり前だよね!」
「……えっ? あ、うん! ってか、それがどうか、」
「あっ! 飲み過ぎちゃったかな! ちょっとお手洗いに行ってくるね?」
笑顔で捲し立て、慌てて席を立ったシルフィーナに俺は口を尖らせた。
……なんだよ。俺、めちゃくちゃ我慢したんだぞ!? なんか変な事言ったか? そこは「おっ! 偉いぞ、アード君!」なんて言いながら、よしよししてくれる所だろ?
シルフィーナの"頭コテンッ"と度を越した"冗談"の破壊力に理性を保ったんだ! 誰か褒めてくれてもいいだろ?!
俺は部屋から出たシルフィーナを見送り、未だに寝たフリを続けているリッカに声をかけた。
「おい、リッカ。"ヤマト酒"!!」
「……」
「……ふざけろよ。俺はちゃんとアリスの旦那として我慢して……、飲まないとやってられるか! 寝たフリはやめろ!」
リッカは少し恥ずかしそうに顔を背けながらも頬を染めて起き上がる。
「バカめ。寝たフリしてるのバレバレなんだよ」
「……あ、主様、"我慢"っていう発想をしてるだけでアウト、」
「《地面縮小》……」
パッ! キュッ……
リッカの言葉を遮るように瞬間移動して、すぐさま耳を摘む。
「んんっ!! あ、主さ、ま……あっ……」
「……そういえば、"お仕置き"……まだだったな?」
コリコリッ……
「ん、あっぁ……っ! んんっ!! はぁ、あっ」
「『主様、我慢して偉いの!』は?!」
「んっ、ぁあっ! はぁ、はぁ、あ、あるじ、しゃまぁ……が、あっあ!」
「……どうした? 早く言ってみろ」
リッカは自分の尻尾を口元に持って来て、声が漏れるのを我慢するが……、
「んぅっ……んんっ! はぁ、あぁっ」
次第に白銀の瞳にうるうると涙が溜まっていく。
ピタッ……
なんだか、めちゃくちゃ悪い事をしている気分になるのは、リッカが幼女の姿だからなのだが、
「リッカ? 泣いても終わらないぞ?」
この1ヶ月で、それにもすっかり慣れたし、コイツはどう考えても喜んで、いや、悦んでいるのも知っている。
キュッ!!
「ぁあッ!! んんっ、あ、あぁ……ん、も、もう、やめ、」
「リッカ? 言えないのか?」
「あ、あるじしゃま!!」
コリコリッ!!
「んんっ! え、えら、んんあっ!!」
ビクンッ!!
リッカは身体を大きく震わせると、真っ赤の顔を3本の尻尾で隠し、
「……はぁ、はぁ……あ、主様、……え、偉いの……」
小さく呟いた。
ふっ、使い魔の調教は主である俺の責任だと思うし、今日はこれくらいで勘弁してやろう。
「付き合えよ、リッカ。俺が潰れるまで、一緒に飲もうぜ!」
俺はうるうると涙を溜めて、真っ赤な顔をしているリッカの頭をポンッと撫でて、ヤマト酒が入った"お猪口"を合わせたのだった。
※※※※※
「……で? えっ……、あれ? で!? で、そ、"それから"…!?」
そこから先を考えるが、一切記憶がない。
「え、いや……、酒のせいだ! いや、し、してない!! パ、パ、パーティーメンバーとちょっと一緒に寝ただけだ……」
気持ちよさそうにスヤスヤと眠っている半裸のシルフィーナを見下ろしたまま言い訳をするが、酒の恐ろしさをまざまざと実感する。
ドクンッドクンッと脈打つ心臓に痛む頭。
いくら考えても蘇らない記憶。
(……ア、アリスは? な、何がどうなって? い、いやいや、してない! ど、どこにいるんだ? アリス!!)
心の中で絶叫しながらも、罪深いほどに素晴らしいシルフィーナの半裸を見つめたまま動けない俺。
コンッコンッ……
唐突に鳴ったノックの音。
(え、あ、いや! ぬ、ぬぉおおおおお!! な、なんでこうなったぁああ!?)
俺は血の気が引いていくのを感じながら頭を抱えた。
〜作者からの大切なお願い〜
「面白い!」
「おいおい! どうなる!?」
「アード……やっちまったなぁ!!」
少しでもそう思ってくれた読者の皆様。
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