冒険者ギルドにて
―――辺境都市「ルフ」 冒険者ギルド
「アード様だ!」
「横の"亜人"は誰だ?」
「……あ、あれ、"ラフィール"の!!」
「顔を隠してるのは……?」
今日も冒険者ギルドは騒がしい。
だが、これも今日で終わりだ。
なんてったって、俺はただの冒険者に戻るんだ。
シルフィーナのポニーテールが素敵。
リッカに特注で新調してやった露出度高め、俺の欲望を詰め込んだ裾の短い白い"着物"も……、顔をフードで隠しながらもオーラが消えていないアリスも。
全てが完璧……だ……?
……ん?
……あ、あれ?
えっとぉ……これだけ悪目立ちしてる俺が、シルフィーナとリッカとアリス、タイプ違いの美女だらけの"ハーレムパーティー"……を?
パーティーで唯一の男が『無能』?
そ、それで、ただのFランクパーティーだと……?
いやいや、ダメじゃん!!
待て待て! "バカ共"に絡まれ続ける日々は要らないぞ!?
俺の事なんて相手にされないような……、見向きもされないような無能じゃないと意味がない。
って……、"勇者パーティー"に入って目立った時点で詰んでる? これは、より、面倒な事になる!?
な、なんで『今』気づいた!
「ちょ、シ、シルフちゃ、」
「ぼ、冒険者になりたいんですが!? ど、どうすればいいんですか!?」
ぬォオオオオ!!
「妾、リッカって言うの。妾も冒険者になるの」
ぬォオオオオォオオオオ!
「私もです。"アリス・グレイスロッド"と申します。新規で冒険者カードを発行して下さい」
ぬぉオオオオオ!!!!
どうする? どうする? どうする!?
しかも、このパーティーは『脱退』できない。
――アード。シルフに傷1つ付けないって"約束"してくれ。
つい先程のガーフィールの真剣な眼差し。
――いや、それは無理だ。
普通に断った俺。
だって"傷1つ"って転んだだけでつくだろ? 流石に、そこまでは面倒みれない。ガーフィールは俺を"全能の神"だとでも思ってるらしい。
出来ない約束はしない主義だ。
でも……、
――『絶対に、このラフィールに"生きて"連れて帰る』って"約束"してやるよ。
正直、アリスがいれば、生きてさえいれば無傷も同然だ。でも、それとこれは別。父親の顔をしてるガーフィールに対して、"俺"が出来る約束はこれだけだった。
――カッカッカッ! 約束だぜ? アード! シルフを頼んだぜ?
や、"約束"しちまったぁ!!
なんかカッコつけて、流し目でニヤッとか、しちゃってたぁああ!!
「え、はい……。え、えっと……」
俺がDランク冒険者の時にはピクリとも表情を動かさなかった受付嬢の"エリナ"は何やら、ポーッと頬を染めている。
「……し、新規登録ですね?」
「え、ちょ! エリナちゃ、」
俺が声をかけると大きく目を見開くエリナ。
「アードさん! 最近、ちっとも来てくれなかったので、寂しかったですぅ!」
エリナはわざとらしく猫撫で声を出し、ハラリと上着を脱ぐ。
そして……、胸を突き出すようなポーズをとった。
明らかにサイズの合っていないシャツから、黒い下着と……、わがまま"おぱい"が、こんにちは。
「……」
い、いやいや……、ふざけろ! このクソ女!
これまで一度たりとも、そんな顔で俺を見てなかったくせに! ……なんてしたたかな女だ! 他の冒険者にも色目を使って無茶苦茶してるんだ! 受付嬢なんて、裏で何してるかなんて……わかったもんじゃない!!
「……ア、アード君? ど、どこ見てるのかな?」
「主様は浮気者なの……」
「……旦那様? 今は登録を急ぎましょう」
3人の声にハッと我に帰ると、至近距離にエリナの"おぱい"があった。
「《魅了》を使うとはな……。ふっ、危ないところだった」
「そんなぁ〜……。エリナ、《魅了》なんてぇ、使ってないですぅ〜」
「バ、バカめ……。俺にはわかってる! みんな、騙されるんじゃないぞ?」
「アード君、未だにチラチラ見てるの気づいてるぞ?」
「……主様は嘘つきなの」
「……は、早く登録を済ませましょう」
3人の言葉にパチパチと瞬きをしながら、
「あれ? なんだっけ? どうしようと思ったんだっけ……?」
俺はエリナのおっぱいの破壊力にやられていた。
ちょっと気持ち悪いくらいにデカいけど、悲しいかな、思考はぶっ飛ばされた。どうせパッドでも仕込んでいるんだけど、悲しいかな、視線が向いてしまう。
「エ、エリナちゃん、な、なんて乳してる……」
「上着の中にあんな絶景が……」
「ちょ、ちょっと俺、娼館に行ってくるわ」
ざわつく冒険者達と……、
「ア、アード様! なんでギルドに!?」
「えっと、この方達は? この子、ラフィールの美人店員ですよね?」
「……こ、この……えっと、け、け、ケモ耳幼女は?」
一斉に俺たちに押し寄せてくる冒険者達。
め、めんどくさッ!!
宿に帰りてぇええ!!!!
自分の選択がバカの極みであった事を実感していると、
ガンッ!!
「うるっせぇんだよぉお!!」
人ごみの奥で、椅子を蹴飛ばし、声を荒げたバカが1人現れた。
「ソイツは【縮小】の雑用だろ?! 何が"アード様"だ! 勇者の威を借りるだけのザコだろうが!!」
シィーンッ……
静寂に包まれる冒険者ギルドと、「ハハッ!」と笑みをこぼした俺。
いたわ〜。こういうヤツいたわ〜!
なんかめちゃくちゃ懐かしくも感じるけど、こういうヤツ、"どこのギルド"にもいたわぁ〜!!
ルフに限らず、こういう輩はどんな街のギルドにもいる。
きっと『噛ませギルド』と呼ばれる、モヒカンしか入れない"隠しギルド"が存在していると俺は睨んでいたんだった。
コイツらは絡んでやられるのが、仕事なんだ。
俺はこういう輩は相手にしない。放っておけば、あまりに傲慢で高圧的なクズになっていく。社会的に死にながらも、懸命にお金を稼いでいるやつらなんだ。
俺が言いようのない懐かしさと、意味のわからない感動に包まれていると、
ピキピキビキッ! ビキィッ!!
ニヤニヤと笑っていた連中と俺に絡んで来たヤツが一瞬で"氷漬け"になった。
「……妾の主様をバカにしたら、"こう"なるの。全員、気をつけた方がいいの」
リッカはニッコリと笑顔を浮かべたが、その笑みは氷のように冷たかった。
……リ、リッカちゃん? お前、何してくれてんの?
俺は顔を引き攣らせながらも、ふわっと漂った『悪意の気配』に気づき、そちらに視線を向けた。
〜作者からの大切なお願い〜
「面白い!」
「『噛ませギルド』ってなんやねん!」
「リッカ、いいわぁ〜!」
少しでもそう思ってくれた読者の皆様。
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『噛ませギルド』のエースが、聖女に一目惚れしてうっかり勇者をワンパンで沈める新作も考えてましたw
興味ある方は感想下さーいww
 




