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〜「俺とパーティーを組まないか?」〜



【side:シルフィーナ】




―――酒場「ラフィール」



「シルフちゃん! 俺とパーティーを組まないか?」



 いつも通りの綺麗な笑顔にキュンっと胸を高鳴らせながら、ウチは言葉を失った。


 滲んでいく視界は歓喜による物。


(ゆ、夢じゃないよね……?)


 ここで泣いちゃダメ。不審に思われて「やっぱりやめた」なんて言われたら、元も子もない。


 でも、言葉が出てこない。

 口を開いたら、涙が出ちゃうから。



「ここ最近のシルフちゃんを見てて、充分、冒険者でもやっていける"力"はあるなって思ったんだ! 魔物を狩ってるのは"食材調達"かなんかだろ?」



 アード君は自信満々にそう言い切り、ニカッと笑う。ウチの感動はサラサラと風に吹かれて、



 ど、鈍感すぎないかなぁ!?



 ここ数日のアピールが何1つして、伝わっていない事を実感する。



「ゴブリンとか、"食べれない獲物"とも戦闘しなきゃいけないんだし、どうせなら売れた方が良くないか? 冒険者になるなら、俺とリッカもポーターとして雇ってくれるとありがたいんだけど?」


「……う、うん!! ありがとう! アード君! ……ん? "雇って"……?」


 ……えっ? あれ? ウチがパーティーのリーダーなの……? ゆ、"勇者パーティー"は……?


 チラリとアリスさんを見ると、無表情のままぺこッと頭を下げる。



「私も回復役ヒーラーとして参加させて頂ければ幸いです。シルフさんさえ、よければですが……」


「えっ? アリスもか!? カレンやランドルフがうるさいぞ?」


「……何も問題ありません。私は、その……。1人でも多くの民を救うためにどんな下位クエストでも懸命に取り組むべきだと思いまして」



ポンッ……



 アリスさんの頭に手を置くアード君。


「ふっ、俺と離れたくないならそう言えばいいだろ?」


「……だ、旦那様」


 無表情のまま顔を真っ赤にさせるアリスさんと、プイッと視線を逸らすリッカちゃん。



ズキッ……



 この1ヶ月、何度も何度も見ている光景なのに、ウチは学習能力がないみたい。2人の仲睦まじい姿に、胸を痛めては無理矢理にでも笑顔を浮かべる。



「アード君! アリスさん! イチャイチャする前に、ちゃんと説明してくれないかなぁ? 店の温度まで上がってるよ?」


「ハハッ! エールが美味くなるってもんだろ?」


「ふふっ、まだ開店前だけどね? カレンさんとランドルフさんは、どうしたの?」


「あぁ。なんか王宮に招集があって、王都に行ったぞ?」


「……えっ? あの、アード君とアリスさんは、行かなくてよかったの……?」


「ああ。俺、表向きはシルフちゃんのパーティーに加入しようと思ってるから!」


「……わかっちゃったよ、アード君!! ウチは名探偵だからね!!」


「……ま、まさか、もう見破られるとは!? さすが、名探偵"シルフ"だ!!」


「ぷっ、ふふふっ」


「ハハハハッ! で、何がわかったんだ?」


「ふふっ、アード君、国王様に会いたくなかっただけでしょ? ウチを利用して面倒事から逃げてるんだ?」


「……そうだ! その通り! ハハッ! 本当に名探偵だな! まぁ"食材探索"の"万が一"の護衛でもあるつもりだけどな?」


 アード君はそう呟くと、ポンッとウチの頭に手を置いた。


「……ん、ありがと」


 とぉーっても勘違いしてるけど、そんな事は気にしなくていいよね? 一緒に居られる時間が増えるって事だもん。


 ウチの『隣に立つ』って目標に一歩近づいたんだ。


 どうなるかわからないけど、頑張ってみよう!


 一歩前進とアード君の手の温かさを堪能していると、下からの視線を感じた。



「……妾は主様と居なきゃなの。妾もいいの……?」


 

キューンッ……!!



 リッカちゃんは銀白の瞳で小さく首を傾げる。

 見た目と"お酒の強さ"のギャップが激しいリッカちゃん。


 戦闘においても、パパやランドルフさんが「伝説級だ!」って騒いでたけど、ウチにはとっても可愛い"狐人"にしか見えない。


「も、もちろん! いいのかな? ウチなんかのパーティーで?」


「主様がいいからいいの。それに……、妾、シルフのご飯、好きなの」


 フイッと視線を外すリッカちゃんの可愛さったら、もう堪らない。


「嬉しい! ウチ、頑張るね? 戦い方とかも、色々教えてくれるかな?」


 リッカちゃんは小さくコクッと頷いて、"1本"に見える尻尾を振る。



「よし。決まりだな!」


「シルフさん、わ、私もよろしいですか?」


「ふふっ、もちろんですよ、アリスさん! 至らない事ばかりかもしれませんけど、頑張りますね?!」

 

 アリスさんはホッとしたようにペコッと頭を下げた。


 それは心配だよね? ウチが逆の立場でも絶対ついていっちゃうし……。アリスさんの嫉妬の対象になれるってだけでもなんだか、嬉しいな。


 コソコソはしたくない。


 もし、"念願"が叶った時には、アリスさんにも認めて欲しい。そのためにも、ウチはもっと頑張らないといけないよね。



「そういえば、ガーフィールは?」


「……ん? "上"だよ? 部屋にいると思うけど……」


 パパはウチに稽古をつけてくれていたから、シャワーを浴びてる……、って、あ、あれ? そう言えば、ウチもいっぱい汗掻いてて……。



サァー……



 顔が青ざめて行くのが自分でもわかる。



「そっか! んじゃ、今のうちにギルド行くか? バレたら何かとうるさそうだろ?」


「え、あ、いや……」


「……嫌だったか?」


「い、嫌じゃないよ? 嫌じゃないけど、」


「……けど?」


 アード君は子犬みたいに口を尖らせて、ウチがこの顔に弱いのを知ってる。

 

 か、可愛いッ! 100億点満点だよ!

 嫌なわけないよ! アード君と一緒にいるために剣を手に取ったんだから!



「シルフちゃん?」



 アード君はウチの顔を覗き込むように顔を寄せる。


 カ、カッコいいよぉ〜! ずるいよぉ〜!


「え、あ、ちょ、ちょっと待って! い、急いで準備するから、」



グッ!


 慌てて後退りをすると、服の裾を踏んでしまい、視界がスローモーションで天井へと変わっていく。


 や、やばい! こ、転んじゃう!!



グイッ!


 

 倒れる前にアード君がウチを支えてくれたけど……、



グニュッ……



「んっ……!」


 密着しているアード君の手は、ウチの背中をグルリと回り、胸に……。


 って、「んっ!」じゃないよ! ウチ、今、汗が……、アリスさんも見てるし、あ、あああっ! ど、どうしよう!

 


「……ハ、ハハッ……だ、だ、大丈夫?」


「……ア、アード君? "手"!! "手"!!」


「……た、助けようとしただけだから! 不可抗力だからッ!」


 アード君は叫びながらウチから離れる。


「う、うん! わかってるよ? ありがとう。さ、支えてくれて……! えっと、あの……、ちょ、ちょっと準備してくるから待ってて?」



 顔には尋常ではない熱が込み上がる。



 ク、クサくなかったよね? へ、変な声出ちゃった……! い、急いでシャワー浴びて、ママの装備をして……。あぁあ!! 冒険者登録って何かするのかな? ああ! なんか、頭ぐちゃぐちゃだよぉ! ちゃ、ちゃんと待っててよ? アード君!!



 ウチは勢いよく、自室に入り、まだじんわりと熱くなっている自分の胸を抱きしめた。





※※※※※



 部屋に駆け上がったシルフィーナを見送り、アードは先程の感触を確かめるように、手のひらを見つめる。



「主様、だらしない顔なの」


「バ、バカめ! 不可抗力だって言ってるだろ!」


「誰もエッチな顔だなんて言ってないの」



キュッ……



 アードはリッカの耳を摘む。



「ひゃっ! んんっ……!」


「ご、『ごめんなさい』は……? リッカ」


「ご、ごめんなさいなの!!」



 2人の一連のやり取りを見つめながら、アリステラは不思議な心待ちに包まれていた。


 本来、結ばれるべきであったシルフィーナとアード。自分が無理矢理に奪い去ってしまった負い目が消えた事はなかった。


 今の、幸福に包まれた毎日。


 その毎日をくれるのはアードだが、恨み言も一言も言わずに、いつも屈託のない笑顔で迎え入れてくれるシルフィーナにも深く感謝している。


 独占欲はどれだけ押し殺そうとしても湧いてくる。でも、2人の邪魔をしているような気分にもなる。



(……私はどうすれば、良いのでしょうか……?)



 とても不思議な心持ち。どうすればいいのかわからなくてアリステラはアードの服の裾を摘んだ。





〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「シルフ、頑張れ!」

「その三角関係のパーティーどうなるんだ!?」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

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 たくさんのブクマ、評価、心から感謝です。

 次もよろしくお願いしまーす!!

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[一言] 三角関係というか、アード君を頂点につくった三角錐関係w
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