どうでもいいから、さっさと帰ろう!
―――88階層
グリムゼードをアリスが屠り、とりあえず「"俺が"魔将王にトドメを刺した」という最悪の展開にならずに済んだ。
フニュッ……
抱きかかえている手が、アリスの胸に沈み込んでいるが、コレは不可抗力。流石の俺でも、このタイミングで揉みしだくような事はしない。
勿論、その柔らかさはじっくりと堪能させて貰うが……、
(無茶をするな……)
ただでさえ、魔力切れを起こしていたらしいアリスは、わずかに回復していた魔力と、"無理矢理"作り出した魔力で、グリムゼードにトドメを刺すと同時に意識を失ったようだ。
俺はグリムゼードの言葉なんか一切気にしていないんだ。俺が『最強』なのは随分と前に知っているし、絶対的な強者が忌み嫌われる事も知っている。
まぁ、"邪神"は言い過ぎだと思うけど……。
そんな事より、俺のために怒ってくれるヤツらがいる事がむず痒くて仕方ない。意識を失っていても力強い鼓動が手から伝わる。
「ふっ……」
俺の事もグリムゼードも、本当にどうでもいいんだ。
どうでもいいくらいにアリスは麗しい。
フワッ……
リッカに"尻尾ベッド"を作って貰い、アリスを寝かせてコートをかける。
そんな俺に待っていたのは……、
「アードォオオオオ! わからん! もう、あの、超、分からん! 全部、見たはずじゃのに、全くわからんのじゃ!!」
バカうるさいクソ賢者だ。
「……うるさい」
「この興奮がわかるか!? アードよ! 教えてくれんか!? あ、いや! ダメじゃ! ワシが自分で……いや、ひ、1つだけ教えてくれんか!?」
まだ身動きが取れず、寝転がったままのランドルフのテンションがウザすぎる。終わったのに、コイツの魔力が戻るまで帰れない。
こんな事なら、俺も"転移魔法"を覚えておけばよかった。ランドルフに教えて貰ってできる物なのか、やはり魔導書がないと覚えられない物なのか……。
俺はさっさとキスとエールを……!!
「アードォオオオオ! 聞くぞい? 聞いてよいかの?」
「……なんだよ!? 答えてやるから、さっさと魔力回復させて、さっさと帰らしてくれ! 俺には帰って『すべき事』が山ほどあるんだよ!」
「あのグリムゼードの魔法? アレはなんじゃった? なぜ、なにも処理せず、なんともなかったのじゃ?」
「"1つ"じゃないな……?」
「……お、教えて欲しいのじゃ」
「可愛くないんだよ! はぁ〜……。"アレ"は『暴力の気配』が無かったから、ダメージを負った"フリ"をすればグリムゼードに隙が生まれるってわかってたからだ」
「……『暴力の気配』? ……なるほどのぉ。アードに眠る大きなエネルギーの一端か……? いや、感知魔法の働きが……? ……じゃが、あのタイミング……焦燥に包まれたグリムゼードが、何の害もない攻撃を?」
「そんなん知らな、」
「グリムゼードの"あのスキル"は即死系の必殺なの。そこの勇者に仕掛けた《支配の魔眼》も……。でも、主様には関係ないの」
「ほぉ、なるほどのぉ……。……"畏怖"か……?」
ランドルフは寝転がったままのくせに、カッコつけやがる。なんかイラッとしたから、このまま蹴飛ばしてしまいそうだ。
「そうなの。まぁ……主様の場合、"それだけ"ってわけでもないんだけど、主様にはグリムゼードに対する"畏怖も絶望"もないの。即死系のスキルには対象者が、どちらかの感情、」
「リッカ! ランドルフ! "そんな事"はどぉーでもいい。もうクエスト完了だろ?」
「……か、完了じゃが、先程の戦闘は"そんな事"ではないぞい? ワシの夢の、」
「本来はどれくらいの期間を必要とするクエストだったんだ?」
「……20日前後じゃな」
「……じゃ、じゃあ、頼むからクエスト完了の報告は1ヶ月、いや、3ヶ月後にしてくれ。た、頼む! もう疲れた! 3ヶ月分、いや、半年分は働いた! 俺には1年間の休息がいるんだ!!」
「ア、アード、お主、天才じゃな……! めちゃくちゃゆっくりできるではないか!!」
「……主様と賢者は怠惰なの……」
「うるさい! 俺の"ベッド"にしてやっただろ? 俺は当分クエストには行かない! ダンジョンには2度と潜らない! わかったら、さっさと魔力を回復しろ! ランドルフ!」
俺はランドルフの胸ぐらを掴んでユサユサと揺らす。
「ちょ、ま、アード! ワシ、"老いぼれ"! 魔力切れたら、めちゃくちゃただの"老いぼれ"!! そんな激しく、」
ガクッ……
「主様、魔力だけでいいなら、妾、あげられるの」
ポツリと呟かれたリッカの言葉に、ピクピクとしているランドルフから手を離し振り返る。
「おお! リッカ! すぐやってくれ! アリスにも頼む!」
「……わかったの」
なんだか照れたようにそっぽを向く"白銀の妖狐"に、「ん?」と首を傾げると、
「……ね、ねぇ、アード様……。えっと、あの、"この子"は?」
ずっと沈黙していたカレンが顔を引き攣らせていた。
「……? あぁ……。俺の"ベッド"にする事にした『リッカ』だけど?」
「ハ、ハハッ……」
カレンは更に顔を引き攣らせたが、俺はアルコール不足すぎて煩わしさしかなかった。
〜作者からの大切なお願い〜
「面白い!」
「次、どうなる?」
「更新頑張れ!」
少しでもそう思ってくれた読者の皆様。
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