『解放者《スプリンター》』.
魔法学院の廊下を歩いているとき、ふと気付いた。最近お師匠様と会えてない!
……まあ理由は分かってる。
「お師ちゃん、急に止まってどうしたの?」
後ろを付いてきていた弟子がキやすく声を掛けてきた。お師匠様に会えないのはこの不肖の弟子の世話のせいだ。
「……別に。アンタがいつ『幻獣』になるのかなって思っただけ」
「えー、でも『幻獣』になったらお師ちゃんは私のこと追い出すんでしょ?」
「追い出すって。『幻獣』にもなれば魔女としてはまあ一人前。ここじゃ弟子を取ってもいいことになってるんだから、いつまでも私のところにいたってしょうがないでしょ」
「ええー? つまんなーい!」
つまるもつまらんもない。
私だって、『幻獣』になったころから、お師匠様方から離れることになってしまったのだし。
しかし異大陸にいたころは良かった。お師匠様もお姉様もいつも一緒だったし。いやまあ大変は大変だったんだけど。
「ちょっと待ってミルー!」
後ろから名前を呼ばれた気がして振り返ると、獣人と子供が2人、3人組が見えた。服装からして見習いだろう。位置関係を見ると、獣人がミルなのだろう。
「お師ちゃん、しっぽがしなびてるよ」
弟子を睨み付ける。顔を見ても反省している様子が見えず、ため息をついてしまう。
話題を変えよう。
「見習いって今年来たんだっけ」
「そうそう。来年にはまたお師ちゃん忙しくなるんじゃない?」
そうか、もうそんな時期なのか。
しかしそうだ。また気合いを入れ直さないといけない。
お師匠様の、『最強』様の邪魔をさせるわけにはいかないのだから。




