『人形師《ドールマスター》』
運動会の昼休みのこと。チームで固まってとのことだったから、とりあえずチームのシートで食事をとることになった。なぜか、見習達の親やら世話係やらと一緒に。
正直師匠の考えていることは分かないけれど、まあ学院長の許しもあることだし、少なくとも建前はちゃんとしたものがあるんだろう。
考えても仕方のないことは置いておいて食事に集中していると、『人形師』が寄ってきた。
「『魔術遣い』、いまよろしいか?」
「構いませんけど、どうかしました?」
どういうわけかたたずまいを正して。なんとなくこちらまで緊張してしまう。
『人形師』はちょっと躊躇した様子を見せてから、決心したように口を開いた。
「その、ヤーレのことなんだけれど、どう……かな?」
「どう、とは」
「こう、色々あるだろう? うまくなじめているかとか、学校の成績とか、とか」
『人形師』らしくない、自信なさげにもじもじとしている。母として子供が心配なのでしょうが、なんというか、人は変わるものなんだな。
「そうですね……まあ、仲良くしている人もいますし、成績の方も……前期はギリギリでしたけど、最近は頑張ってるみたいですよ」
「そ、そうか」
それで安心したように息を吐きます。それでも、まだ緊張した様子を残していた。
「もう少し詳しく聞きたいんだが、その、魔術の授業とか」
「その辺は問題ないですよ。魔術よりは魔法の授業の方が得意そうですけど、まあそれでも平均以上には分かってるそうですし」
「知識の方は心配していない。実践の方は」
「実践というと……それなら『泣女』に聞くのが早いでしょう」
「なに、呼んだ?」
名前を出したと同時に『泣女』がこちらにやってきた。
「『人形師』が娘の様子を聞きたいそうです」
「なに? ちびっ子ちゃん? ってほどちびっ子でもなかったわね、あなたの娘は」
「またあなたはそういうことを」
「あなたのクラスだと年は2番目に若いはずですけどね」
「人間年じゃないのよ、魔女になるんならなおさらね。それはともかく、それはちょうど『魔術遣い』に相談しないといけないと思ってたところで」
そしてこれまた珍しく、『泣女』が口元に手を当てて考え事をしている様子。しかし、『人形師』よりは決断は早いようだ。
「あの子、このままだとダメね。全然魔力を扱えてない」
「それは……」
魔女見習いにとって、魔力の扱いは必須中の必須。これが出来ずに魔女にしてしまえば、すなわち死に繋がる。魔女見習いとは、本質的には魔力の扱いを学ぶためにある期間でしかない。
それが駄目ということは、つまりは魔女になれないと言われるようなものである。
けれど、意外と『人形師』はショックを受けていなさそうだった。
「やはり、そうか」
「あら、想像してたの? 想像以上かもしれないけど」
「いや分かる。それも、私のせいだからな」
「それはどういう――」
詳しい話を聞こうとしたところで、『泣女』が立ってしまった。
「なんか暗い話になりそうだからあっち行ってるわ」
「ああ、すまない」
それで、私もなんとなく聞きづらくなってしまった。どうせならもっとうまくフェードアウトしてくれたらよかったのに。




