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番外:アミー先生の授業~人間分類編~

読まなくても、今後の展開に影響はありません。

 入学してから、それほど経っていないころの授業。

 「……はい、それでは授業を始めます。今日は、魔女がどのように人間や魔女のことを見ているかという話です。まず大きな分類としてですが、魔女と魔女以外と分けます」

 アミーが後ろを向いて杖を振る。すると、普通の人、耳や尻尾の生えた人、そしてローブを着た人の3人の絵が壁に描かれた。

 「魔女以外のことは、特に『ただ人』と呼ぶこともありますが、さらにいわゆる『人類』と『亜人』とに分けて認識する人がほとんどです。それ以上に分けてみるか――例えば国籍とかケモノの種類とかですが、そこを意識して見るかは、人によるとしか言えません。多くの魔女は気にしないとは思います」

 次にアミーはローブ姿以外の絵を消す。

 「そんな感じで、特に長いこと魔女として生きている人の場合、ただ人のことは、知ってる人か、知らない人かくらいしか考えてないですね。というわけで、この授業では特に魔女について話そうと思います」

 言いながらまた杖を振って、ローブ姿の人を3人描く。1人は両手を広げ、1人は杖を地面に立て、そしてもう1人は腕に鳥を止まらせていた。

 「魔女をどう分けるか、について、最も良く行われているのは、『その魔女が主に何を使うか』で分ける方法です。魔法をよく使うなら『魔法使い』、魔術であれば『魔術師』、そして召喚(サモン)――具体的には来年授業があると思いますが、つまりは生物を儀式によって使役するようにしている場合、『召喚士(サモナー)』と呼ばれるようになります」

 説明の途中で、生徒が質問のために手を挙げた。

 「はい――私がどれに当たるか、ですか。それが厄介でして、私は主に魔法を使いますが、その魔法で魔術を発動させています。というわけで、魔法使いと言われることも魔術師と言われることもあります。私の二つ名(ウィッチネーム)である『魔術遣い(マギクラフタ)』という名前も、そこから来ている、んだと思います。あとはまあ、私の師匠はほとんど魔術を使わない魔法使いですから、それに合わせて私も魔法使いとされることが多いですね」

 言いながらまた杖を振って、後ろの絵を消し、代わりに7人、色とりどりのローブの人を描いた。

 「もう一つの分類は、魔力の色によるものです。ただ人、つまりみなさんの魔力は、単に白く光るだけだと思いますが、魔女になると、決まった色で光るようになります。色もおおむね決まっており、紫・緑・青・赤・黄・そして茶の6色だと言われています。ちなみに、私は赤色ですね」

 言いながら描いていた人を指し、最後に自分の魔力を光らせる。アミーの周りに、明るい赤の光がまとわりつく。すると、また手を挙げた。

 「はい――どの色になるか、については、誰が魔女にしたかが関わってきます。普通は師匠が魔女化の儀式をしますから、師匠と同じ色になりますね。そして師匠の色はその師匠から――となるわけですから、初めて会う魔女でも、その色を見ればその系統がなんとなく分かるようになっています」

 アミーは周りを見て、他に質問がないかを確認して、だれもいなさそうなので頷いた。

 「それじゃあ、ちょっと休憩にしましょう。ここまでの話をまとめたり、何か分からないことがあったらまた声を掛けてください」

 それで色とりどりの人を消して、椅子を出してそこに座った。


 しばらくしたあと、アミーは4人の人型を描く。なんとなく、左から右にえらそうな感じになっているようにも、自信満々といったようにも見える。

 「次に行きましょう。次は名前による分類です。魔女には二つ名(ウィッチネーム)というものがある、という話はしたかと思います。それは一人一人、必ず違うものになっているのですが、それに加えて、4つのランクが決められています」

 そうして、まずは一番左の自信のなさそうなローブ姿を、犬のような姿に変えた。

 「まずは『動物』、後ろのランクに関わる人や鳥以外の動物にまつわる名前です。生命の象徴と言われ、まあ要するに『魔女として生きている』ことを認められた状態です」

 つぎにその隣の人を鳥に変えた。

 「次は『鳥』。自由の象徴とされます。魔力を自由に使えるだとか、『ただ人』に縛られないくらいの強さを持っているだとか、まあ色々言われています。このランクまでなら、魔女に鳴ったばかりでも名付けられることがあります」

 3人目は龍のような姿に変える。

 「3つめのランクは『幻獣』。何らかの伝説を持った動物だったり、あるいはこの世に存在しない生物の名前だったり、あとは強大な魔力を持った、実在する生物に由来した名前が付けられます。魔力の象徴とされていて、アカデミアでは『幻獣』以上でないと、弟子を持つことは許されないことになっていますね」

 最後、4人目は……そのままにした。

 「最後は『人』です。知恵の象徴といわれていて、『人』の魔女であれば、その人の極めた特殊な魔術や魔法を持っていると言われています。私なら魔術魔法というものですが、まあそれはいいでしょう」

 また生徒から手が上がった――また同じ生徒だ。

 「どうやってランクを上げるか。それはまあ、名前を変えるときに、どのランクが相応しいか名付け人が決めてますね。名前のランクは、その名付け人のランク以下で付けることができます。私であれば『人』なので『人』以下、『幻獣』の魔女であれば『幻獣』以下の名前を付けることができる、という形ですね。あとは、同じ人が2連続で名付けを行うことはできませんから、いろんな人に実力を認めてもらう必要があります」

 また同じ生徒から手が挙げられた。

 「どういう基準で名前を付けるか……うーん、さっきも言った各ランクでのなんとなくのイメージはありますが、正直名付け人によるのでなんともいえないです。私だったら? まあ周りの実力とかを考えて、ですかね。あ、たしか『召喚士(サモナー)』は同時に呼び出せる数に合わせて決められるとかいう話もありましたね」

 今度は別の生徒が、元気よく手を挙げた。

 「『概念』……ああ、そうですね。厳密には、第5のランクともいえる『概念』の魔女がいます。ほかの4つのランクとは異なって、名付けによってなるのではなく、自然と二つ名(ウィッチネーム)がその概念に変わるそうで、名前そのものがその人を象徴していると言われています。現在は世界に6人だけいて、それぞれ『最強』『高潔』『正義』『平和』『悪意』『自由』と呼ばれています。……え、どれだけすごいか、ですか?」

 アミーは少し目をつぶって考えて、そうして小さく頷いた。

 「もし出会ったら、基本的には関わらないで逃げてください。敵になるまえに。私もそうします」


 教室がざわつきはじめたので、それが止まるまでしばらく待ってから、そしてまた絵を描き始めた。今度は3つの集団だ。

 「最後に、所属しているコミュニティによって分けることもあります。魔女のコミュニティは大小様々ありますが、とくにこの大陸で有名なのは3大コミュニティとして挙げられるものがあります」

 ひとつの集団は、大きな城の建物に集まる人を指した。

 「ひとつは魔法学院(アカデミア)、つまりはここです。3大コミュニティの中では幅広くただ人達と政治的に関わっているとか、積極的に弟子を取っているという評判で話されることが多いですね。昔はレーゼバルトから領地を受けていましたが、色々あって今は中立地とされているここに本拠を構えてますね。あとは先に話した魔力の色は、青系か緑系が多いです。赤は他よりはちょっと多い程度ですね」

 次の集団は、全員がまとまってひとつの輪を作っている。

 「もう一つは魔術師団。その名の通り魔術師だけで構成されている集団で、今は裂空帝国に本拠地があります。そのほかには、3大コミュニティの中では最も閉鎖的で、コミュニティとしての結束も強いのが特徴です。まあ別に接触禁止というわけではないですが、秘呪もあるとかで情報を出すことを嫌っていますから、もしかしたら冷たい態度を取られることもあるかもしれません。魔力色はほぼ紫で固定されています」

 そうして最後の集団、集団といってもほとんどまとまりのない人の集まりといった風を指した。

 「最後は魔女集会。これは……なんというか、特徴がないのが特徴というか、コミュニティというほどまとまってません。定期的に会合を開いているらしいですが、誰が来るかとかは各々の気分で決めているそうです。ギルドのように仕事を斡旋することもあるらしいですけど、独占しているわけでもないし。本拠地みたいなものもないですし、決まった魔力色もほぼないです。赤がちょっと多いらしいですけど、まあそれくらいです」

 何を言うか考えていると、また生徒から手が上がった。それを指そうとしたが、やっぱりやめた。

 「すみませんがそろそろ時間ですね。質問は次の授業か、あとで聞きに来てください。それじゃあ、また」


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