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提案

レイラの強さを目の当たりにして頬を染めるエギナの<性癖>についても、彼女は驚くことさえない。彼女にとってはその程度の人間の<性癖>など、驚くには値しないのだ。


それこそ、多種多様な人間とコミュニケーションをとる必要があるロボットであるがゆえに。


だから、明らかに蕩けるような表情になっているエギナ相手でも、淡々と、


「素晴らしい腕前です。ですが、デモニューマを相手にするには、剣技のみでは厳しいでしょう。弩(いしゆみ)の扱いにも慣れていただいた方がより効果的に対処ができると愚考いたします」


手を差し出しながら告げた。


「弩(いしゆみ)をか? 私はどうもああいうのは苦手で……」


レイラの手を取り引き起こしてもらいながら、エギナはそう応えた。応えつつ、


『私の体重が掛かってもまったくびくともしない。まるで、石壁に埋め込まれた鎖にでも掴まっているようだ……レイラの強さはどこまでも底が知れないな……』


などとも考えていたりもした。だからこそ、


「でも、苦手とかなんとか言ってる場合じゃないのか。お前がそう言うのなら、そうなんだろう」


『これほど強いレイラが言うことならば』と、エギナも納得するしかなかった。そんなエギナに、


「ありがとうございます。基本的には、五人ないし七人で一つの隊を組み、まずは一斉に弩(いしゆみ)を放ちダメージを与えた上で、次の段階として剣による攻撃に移ることを進言いたします。


また、可能であれば、できる限り弩(いしゆみ)での攻撃を続けた方がリスクも少ないでしょう。ただし、乱戦になった場合には、誤って味方に被害を与えないようにするために、弩(いしゆみ)による攻撃はすぐさま中止していただいた方がいいでしょう」


とも、告げる。


「ああ、分かった。魔王討伐に出る前に、一度、実際にお前から手ほどきを受けたい」


エギナの申し出に、


「承知いたしました。では、本日、午後からはいかがでしょう?」


二つ返事で承諾し、スケジュールを提案した。


「そうだな。調整してみる」


レイラの提案にエギナも即断即決で応え、


「邪魔して悪かった。準備ができれば屋敷に使いの者を寄越す」


そう言いながら小走りで王宮へと向かっていった。その時にはもう、かなり蕩けたような表情は収まっていた。さすがに今はそれどころじゃないことを、エギナも十分に承知しているということだ。


そんな彼女を見送って、レイラも、改めて屋敷へと帰る。




屋敷に着くと、シェイナとパティリエカはまだ眠っていた。しかしニューティはすでに起きていて、


「おかえりなさいませ」


と出迎えてくれた。また、ブルーディスもすでに目を覚ましており、やはり、


「おかえりなさいませ」


丁寧にレイラを迎えてくれる。そのブルーディスは、シェイナだけでなく自身の主人であるパティリエカに対してもどこまでも丁寧に接してくれる彼女に対し、崇敬の念すら抱いていた。


元はと言えば、レイラを懐柔するという目算の上で王がパティリエカも共にこの屋敷で過ごすことを認めてくれた。聡明なレイラであればそのこともきっと察しているだろう。にも拘らず彼女はシェイナとまったく変わらずパティリエカに接してくれる。


彼がパティリエカと出逢ったのは、彼女がまだ一歳になったばかりの頃だった。王より彼女の護衛を拝命したものの、心のどこかでは、


『子守りか……』


と思ってしまったこともないわけではなかった。けれど、そのパティリエカは、幼いなりに気高さと華麗さを兼ね備えた<淑女>の素質を垣間見せ、やがて国を背負い立つ器の片鱗さえ窺わせた。だから今では、パティリエカに仕えていることを誇りにさえ思っている。


そのパティリエカをどこまでも慈しんでくれるレイラに対し最大級の敬意を払うのは当然であると思っていたのだった。



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