防衛体制強化
新型の大型弩砲については、最初のうちこそ一から作り上げていたが、それが実際に配備されるにしたがって、不要になった旧来の大型弩砲を撤去・回収し、それを基に新型に作り替えるという工法へと遷移していった。これならば、途中の工程を大幅に省略できるため、完成までの時間をさらに減らすことができるのだ。
レイラに至っては、一時間でその作業を終わらせてしまう。
これは、旧来の大型弩砲の加工精度を上げることで性能を格段に向上させるというレイラの設計の合理性も大いに貢献しているだろう。
けれど、彼女自身は、
『この地の技術者達の設計がすでに非常にレベルの高いものになっていました。私はそれに若干の改良を加えたに過ぎません』
と考えていた。その上で、職人達と一緒に黙々と作業を続ける。
この国の防衛体制自体、本来は強大な軍事国家であったはずの隣国<帝政バルラシアム>の侵攻を想定し何百年という時間をかけて築き上げられてきたものだった。元々の都市を高い城壁で囲み、その周りに賎民達が勝手に住み着くのを許したのも、実はそれが目的なのだ。
加えて、デモニューマが現れてからも、状況に即した対応を構築できている。賎民達を<肉の盾>に使うという部分についてはもちろん褒められたものではないものの、しかし、現時点の防衛力を勘案し、守るべきものの優先順位を冷淡なまでに厳密に熟慮すれば、それしかないというのも事実ではある。
にも拘らず、周辺の国々にとっては大変な脅威であり、ベル・ルデニオーラにも非情なまでの備えを強いた存在であったはずの軍事国家でさえ、デモニューマの前には、たった十数年の間に影も形もなく、わずかに逃げ延びた者達を残してこの世から消え去ったという。
だからこそレイラは、現実に可能な備えを模索する。と同時に、賎民達を犠牲にせずに済むだけの防衛力の構築に力を注ぐのだ。それをどう活かすかは、人間達に任せる。自分はロボット。人間達の判断に異を唱える権限は持たない。持たないが、人間達の意に反しない範囲内で何ができるのかを、最大限、考え、実行する。
こうして夜が明けると、
「後はお任せします」
交代のために工房にやってきた職人達に挨拶し、屋敷へと向かう。
その途中、
「エギナ様」
立ち塞がるようにして姿を現したのは、エギナだった。
「レイラ、手合わせしてほしい……」
突然の申し出にも、レイラは動じることなく、
「なぜでしょう?」
と問い掛けた。それに対してエギナも、
「私の今の力を知るためだ……っ!」
突然、剣を抜いて切り掛かってくる。まったく手加減なしで。本気の殺意と共に。
さりとて、人間がどれほど殺意を込めて本気で挑もうと、レイラは、そういう人間から護衛対象を確実に守り切ることを目的に作られた、
<要人警護仕様のメイトギア>
である。目的のためなら手段を選ばないテロリストを圧倒することが、彼女に与えられた使命なのだ。剣を手に真っ向から勝負を挑んでくる人間に後れを取るようでは、それこそ話にならない。
「うおおおっ!!」
一切の躊躇もなく全力で打ち込んでくるエギナの剣を、レイラは手で払いのけるだけで対応して見せた。その上で、
「エギナ様、力の乗った良い太刀筋です」
お世辞ではない事実を、告げたのだった。




