理解の外
いずれにせよ、こうしてパティリエカがレイラの屋敷に滞在することになったわけだが、国王は、娘の要望に、
「そうか……あれもやはりエギナと同じ血を引いているということだな……」
と呟いたという。強情さでは姉に引けを取らないことを悟ったのだろう。
一方、いずれは王の後を継ぎこの国を治めていくことになるであろう王子達は、娘二人とは正反対に、大変に利発で聡明ではあるものの突飛な発想で周囲を振り回すようなタイプでは決してなく、王自身、頭を痛めることもなかったそうだ。
なので後継者という意味では何の心配もしていないものの、正直なところ印象は薄いのだとごく一部の者には漏らしていたという。
『出来の悪い子ほどかわいい』
ということなのかもしれない。
が、レイラ達にはその辺りの国王の胸の内など何の関係もないことなので、シェイナやパティリエカを、出発の時間までたっぷりと甘えさせるために、二人が起きている間は、料理を作ったりデザートを作ったり屋敷の掃除をしたり針仕事をしたりと、一緒の時間を過ごしたのだった。レイラ自身の言う<準備>とは、このことである。
この世界において彼女が<装備品>として持って行けるものは、ナイフ数本と大型弩砲の投擲体くらいのものだ。
本来なら、最低でも、
対物ライフル(できれば電磁加速質量砲)と弾丸。
ショットガンと弾丸。
自動小銃と弾丸。
携帯用ロケット砲ないし、携帯式レーザー誘導ミサイル。
超振動ナイフ。
手榴弾。
サポート用のドローン。
予備のバッテリー。
高機動車二台。
を、小隊規模(六体から十二体)の同規格のメイトギアと共に装備して向かいたいところではあるものの、さすがにこの世界では用意できないし、よしんば用意できたとしても逆に過剰戦力となるだろう。この、<ベル・ルデニオーラ>の備えを考えても、確実に数時間で陥落させられる戦力である。
はっきり言って、<魔王>などよりよっぽどこの世界にとっての<脅威>になるに違いない。
レイラとしてはそんなつもりはまったくない。彼女の役目は、どこまでも、
『人間の幸福に資する』
ことなのだから。
そのために、シェイナとパティリエカには幸せになってもらわないといけない。
「なあ、レイラって何だと思う……?」
どこまでもシェイナとパティリエカのために笑顔を絶やさず二人の言葉に耳を傾け、温和に接するレイラの姿を見て、エギナがブルーディスに語り掛けた。
そんなエギナの問い掛けに、
「私にはその答えを用意する力はありません。レイラ様は、完全に私の理解の外におられる。しかし、パティリエカ様に向けられる視線に嘘はないと私は思うのです。なれば私は、パティリエカ様のためにも全力でもって支えるまでです」
と、真っ直ぐに背筋を伸ばしつつ応えたのだった。




