逡巡
『ニューティと共に、私の外套を作っていただきたいのです』
その申し出を受け入れたシェイナを見届け、レイラはニューティに向き直り、
「聞いての通りです。ニューティにはシェイナと共に、私の外套作りを改めてお願いしたいと思います」
と告げた。急な話ではあったものの、
「仰せのままに」
ニューティは恭しく応える。
『なるほど、これが目的だったのですね』
そう考えながら。そして、
『このシェイナに、針仕事や家事を教えるのが私の役目ということでしょう』
とも察する。
我が子をデモニューマの襲撃で亡くして一年。ようやく気持ちの整理がある程度は付いたところに、亡くなった我が子に生き写しのシェイナとの出逢いに戸惑いつつも、ニューティは自身の役目を理解し、それを果たすことを心に誓った。
主人あくまでパティリエカであるものの、そのパティリエカに、このレイラという女性に仕えることを命じられたのであれば、レイラはいわば<仮の主人>。仮とはいえ主人であるならば、身命を賭して仕えなければならない。
この、麗しく、高潔で、大きな器を見せる主人に。
こうしてニューティが自身の役目を自覚したところに、
「レイラ様……」
兵士が声を掛ける。急かそうとしているのだろう。
「申し訳ございません。直ちに」
応えて、レイラはシェイナに向き直り、
「それでは、ここでニューティと共に外套作りをお願いします」
告げると、シェイナも、
「はい…! レイラ様……!」
力強く応えてくれた。その様子にレイラも満面の笑顔になる。
「いいお返事です」
そしてエギナとパティリエカを伴い、レイラは軍議を行うための部屋へと向かう。
「……」
ただ、パティリエカは、何度か控室の方に振り返る。
『シェイナが一緒だったから無様な姿は見せられなかったし我慢できましたが、彼女がいないとなると、あの退屈な大人達の話なんて、ただの拷問ですわ。私は、どうするべきか……』
レイラの傍にはいたいものの、かといって自分にかまってもらえるわけじゃないから正直辛い。
そうして逡巡しているパティリエカの様子に気付いたレイラが、
「もしよろしければ、パティリエカ様にも、私の外套作りを手伝っていただけますか?」
歩きながら声を掛ける。
「私がですか……?」
確かに、針仕事などについても<淑女の嗜み>として学んではいる。きっと、シェイナなどよりも立派にやり遂げる自信はある。そこで、
「レイラ様は、私が作った外套をお召し上がりになりたいですか?」
問い掛けてしまった。するとレイラは、ふわっと微笑み、
「もちろんです」
穏やかに応えた。それを見て、パティリエカの気持ちも固まったのだった。
「分かりました!」




