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要望

<ベル・ルデニオーラ>の防衛力を上げるためにそちらを優先するしかなかったとはいえ、だからといってシェイナを蔑ろにはできない。


そこで、レイラは、


「パティリエカ様。お願いがあります」


今日の軍議に参加するために、エギナと共にレイラを迎えに来たパティリエカに、彼女は改まって言った。


「は、はい、なんでしょう?」


レイラにまっすぐ見詰められたことで顔を真っ赤にしながら応えるパティリエカに、彼女は告げる。


「<乳母>を一人、派遣していただくことは可能でしょうか?」


「はひっ? 乳母、ですか…?」


思いがけない言葉に、パティリエカは唖然とする。そんなパティリエカに対しても、レイラはあくまで柔和だった。


「はい、<乳母>です。できれば温和な性格で、丁寧に子供に接してくださる方が望ましいですね。これは、私がデモニューマ討伐に集中するためには必要なことなのです」


どこまでも穏やかで丁寧なレイラの申し出に、パティリエカも、


「分かりました! レイラ様のお願いとあれば、このパティリエカ。全力をもってお応えいたします!」


顔を真っ赤に染めながらも、真っ直ぐに視線を返して、応えた。


奔放すぎて臣下の貴族に養子に出されてしまったエギナと違い、パティリエカは国王からも愛されている。そんな王女の願いとならば融通はしてもらえるだろう。


すると、隣に控えていたブルーディスが、


「パティリエカ様、よろしいでしょうか?」


恭しく発言の許可を求めてくる。


「許します。申しなさい」


許しを得たブルーディスが、


「ニューティはいかがでしょう? 歳は三十手前と若いですし、今はまだメイドではありますが、乳母としての将来も嘱望されている者です」


告げると、


「ああ! そうね! ニューティならお父様にお願いしなくても私の権限で寄越すこともできるものね!」


パティリエカがパチンと手を叩いて声を上げた。そしてレイラに向き直り、


「ニューティは、壁の外の出身だけど、優秀なメイドなの! 子供をデモニューマに殺されてるけど母親としての経験もあるし、ちょうどいいわ!」


実に朗らかな感じでそう口にしたが、『子供がデモニューマに殺された』という事実をこともなげに笑顔で話す様子に、レイラは改めてこの世界の厳しさを実感した。単純に子供らしい気遣いの足りなさもあるのかもしれないが、それ以上に、デモニューマによる犠牲が日常的な出来事に過ぎないという現実があるからなのだろう。いちいち気に留めていられないのだと思われる。



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