お目付け役
『裸でデモニューマの前にだって立ってやる!』
レイラの<本気>を見るためなら自分の命だって投げ出すとでも言わんばかりのその発言に、彼女も<苦笑>を浮かべてみせた。人間であればこういう場合、そのくらいの反応は見せるだろうからということで見せたものだった。ロボットであるレイラ自身には、<感情>もないので、本来は苦笑いも浮かべることはない。
しかしそこまで冷淡だと人間にとっては違和感が強くなりすぎてしまうこともあり、敢えてそういう細かい<表情>も再現するようになっているのである。
すると、そんな表情を見せるレイラに、髭面の小隊長をはじめとした兵士達の同情が集まり始める。
<得体の知れない余所者>
のはずの彼女にだ。
それほど、エギナの<悪癖>には彼らも振り回されてきたのだろう。
とは言え、兵士達の心理的な<壁>が低くなるのは、レイラにとっても都合がよかった。
何しろ、レイラに同情が集まるのに伴って、シェイナへの不信感も和らいでいくのが察せられたのだから。
レイラが大変になれば、彼女が連れているシェイナもとばっちりを受けるのは目に見えていたからと思われる。
「よし! 今から父上にお目通り願おう!」
エギナが嬉しそうに声を上げる。
「エギナ様……!」
それまで『中隊長』と呼んでいたエギナのことを名前で呼んだ髭面の小隊長は、憐れなほどに困っていた。その様子から、
『彼が、エギナ様のお目付け役だったということでしょうか。敢えて部下に据えることでエギナ様の自尊心を傷付けずに抑えると。なるほど』
そう推測する。
『彼も苦労なさっているようですね』
とも考え、
「ご心配には及びません。私はこの国にとって役に立ってみせますので。陛下にも必ずや気に入っていただけるでしょう」
笑顔で彼に声を掛けた。それは、見る者すべてを魅了し、心を解きほぐす、癒しの笑顔だった。
「行くぞ! ついてこい!」
そう言って詰所の扉を開けて中に入っていくエギナに続こうとするレイラに、
「レイラ様…!」
シェイナが縋りつく。髭面の小隊長が兵士に目配せして、解放させたのだ。
もうこうなっては、成り行きに任せるしかない。彼もそう思うしかなかったようだ。
「大丈夫です。私がついています」
レイラが、シェイナにもあの笑顔を向ける。すると、強張っていたシェイナの表情も安堵したものに変わっていく。
そんな少女を抱きかかえ、レイラは改めてエギナに続いた。
詰所の奥が城壁内に通じていて扉を開けると、そこには、先ほどのものに比べて格段に整えられた、石造りの町並みがあったのだった。




