再会
初めて書きました。
乱文、駄文お許しください。
どうなるのかもよくわかりません。
大きな心で読んでいただければ幸いです。
あなたの年齢はもう 五十 になっていて、
その響きは私の心臓を少し痛めつけた。
山崎祐一は高校の美術教師で、何だかんだ好きな先生の一人だった。
まるで子供のような人で、
授業中、作業している私に向かって、くだらない昔話を延々としていた。
聞いている暇はないので適当に相槌を打つ私に、
「聞いてんのか」
と文句をつける。
絵を描くことで生まれる何も考えない時間と、そのやりとりが心地よくて、
先生と二人、草原でスケッチしているような気分だった。
例え現実では1対40の一斉授業の最中であろうとも、そんなことは感じられないくらい、爽やかな時間だった。
この時間が永遠に続いたらいいのに
などとは思わずに、私は卒業し、大学生になった。
大学3年生の秋、それまで先生のことは何度も思い出し、何度も忘れていた。
友人に高校の文化祭に誘われたのをきっかけに、あの時間が再び色付きだして、
もはや文化祭は、どうでもよかった。
山崎祐一に、会いたかった。
先生は相変わらずプードルみたいな頭をしていて、相変わらずの細い眼は、睨んでいるのか微笑んでいるのかよくわからない。
「お、久しぶり」
覚えていてくれた。
単純にうれしかった。
単純な私は美大に進み、先生と同じグラフィックデザインを専攻していた。
「10月末までの美術展、行ったか。」
「行ってないです。」
「行けよ。一緒に行くか。」
もちろんです。
美術展に行く日までのあまりに長すぎる1週間、
私は高校生の頃の記憶を辿り、先生の個人情報を何度も確認して過ごした。
確か、
先生には美人と噂の奥さんがいて、
顔に似合わず愛妻家で、
子供はいないけれど可愛い黒いポメラニアンがいて、
顔に似合わず毎朝先生が散歩をしている。
先生と私と友人と、知らないお兄さん2人と、合計5人で美術展巡りをした。
知らないお兄さんたちは先生の教え子だった。
人見知りで有名なこの私が、こんなにわけのわからないメンバーと、こんなに微妙な空気の中で、こんなに爽やかな時間を過ごしているとは、周囲の誰が気付くだろうか。
ミーハーそうな女子大学生が、いかにもアート系のお兄さん二人を差し置いて、
まさか五十のおっさんとの爽やかな時間を楽しんでいるとは、周囲の誰が気付くだろうか。
40人を消してしまう二人だから、4人を消すなんて容易かった。
またこうして草原に来られるなんて、こんなに幸せでいいのでしょうか。
美術展の後、山崎祐一からメールがくるまでのあまりに長すぎる2週間、
私は、異常なくらい携帯のメールチェックばかりして過ごした。
‐今日の7時から元美術部の安川と荒井と飲むけど、来るか。‐
‐安川くんと荒井くんかぁ、懐かしいー。8時くらいになら行けると思います。大丈夫ですか‐
‐8時に新宿東口交番前ね。‐
‐はい。‐
8時新宿東口交番前に、山崎祐一の赤い笑顔。
「わざわざ来てもらってすいません。」
「おうー。飲むぞ。」
ソファー席の先生の隣に坐って、一生懸命先生を酔っ払わせる。
先生は二時間半ずっと、私にぴったりと寄り添った。
そうだ、先生はいつも、気軽に生徒に触る人だった。
寂しがりやなんじゃないかと思う。
10分おきくらいに安川くんと荒井くんを消させてもらって、
大人になった私たちは、夕暮れの海で寄り添った。