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先生  作者: wann
1/1

再会

初めて書きました。

乱文、駄文お許しください。

どうなるのかもよくわかりません。

大きな心で読んでいただければ幸いです。

あなたの年齢はもう 五十 になっていて、

その響きは私の心臓を少し痛めつけた。




山崎祐一は高校の美術教師で、何だかんだ好きな先生の一人だった。

まるで子供のような人で、

授業中、作業している私に向かって、くだらない昔話を延々としていた。

聞いている暇はないので適当に相槌を打つ私に、

「聞いてんのか」

と文句をつける。

絵を描くことで生まれる何も考えない時間と、そのやりとりが心地よくて、

先生と二人、草原でスケッチしているような気分だった。

例え現実では1対40の一斉授業の最中であろうとも、そんなことは感じられないくらい、爽やかな時間だった。


この時間が永遠に続いたらいいのに

などとは思わずに、私は卒業し、大学生になった。




大学3年生の秋、それまで先生のことは何度も思い出し、何度も忘れていた。

友人に高校の文化祭に誘われたのをきっかけに、あの時間が再び色付きだして、

もはや文化祭は、どうでもよかった。

山崎祐一に、会いたかった。



先生は相変わらずプードルみたいな頭をしていて、相変わらずの細い眼は、睨んでいるのか微笑んでいるのかよくわからない。


「お、久しぶり」


覚えていてくれた。

単純にうれしかった。

単純な私は美大に進み、先生と同じグラフィックデザインを専攻していた。


「10月末までの美術展、行ったか。」

「行ってないです。」

「行けよ。一緒に行くか。」


もちろんです。





美術展に行く日までのあまりに長すぎる1週間、

私は高校生の頃の記憶を辿り、先生の個人情報を何度も確認して過ごした。

確か、

先生には美人と噂の奥さんがいて、

顔に似合わず愛妻家で、

子供はいないけれど可愛い黒いポメラニアンがいて、

顔に似合わず毎朝先生が散歩をしている。



先生と私と友人と、知らないお兄さん2人と、合計5人で美術展巡りをした。

知らないお兄さんたちは先生の教え子だった。

人見知りで有名なこの私が、こんなにわけのわからないメンバーと、こんなに微妙な空気の中で、こんなに爽やかな時間を過ごしているとは、周囲の誰が気付くだろうか。

ミーハーそうな女子大学生が、いかにもアート系のお兄さん二人を差し置いて、

まさか五十のおっさんとの爽やかな時間を楽しんでいるとは、周囲の誰が気付くだろうか。

40人を消してしまう二人だから、4人を消すなんて容易かった。

またこうして草原に来られるなんて、こんなに幸せでいいのでしょうか。




美術展の後、山崎祐一からメールがくるまでのあまりに長すぎる2週間、

私は、異常なくらい携帯のメールチェックばかりして過ごした。


‐今日の7時から元美術部の安川と荒井と飲むけど、来るか。‐

‐安川くんと荒井くんかぁ、懐かしいー。8時くらいになら行けると思います。大丈夫ですか‐

‐8時に新宿東口交番前ね。‐

‐はい。‐



8時新宿東口交番前に、山崎祐一の赤い笑顔。

「わざわざ来てもらってすいません。」

「おうー。飲むぞ。」


ソファー席の先生の隣に坐って、一生懸命先生を酔っ払わせる。

先生は二時間半ずっと、私にぴったりと寄り添った。

そうだ、先生はいつも、気軽に生徒に触る人だった。

寂しがりやなんじゃないかと思う。


10分おきくらいに安川くんと荒井くんを消させてもらって、

大人になった私たちは、夕暮れの海で寄り添った。



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