魔法の才能
それから、あおいはキャロラインと共に魔法の特訓をした。
キャロラインの言う通り精神を集中させ、発生させる事象を思い浮かべた。
炎の槍を放ち、氷の壁を作った。土のゴーレムを作り、嵐を呼び起こした。
「あなたは四大元素すべてが使えるのね。すごいわ」
「そ、そうかな」
なんだか照れ臭かった。
自分には今まで大した才能なんてないと思っていたのに、異世界に来た途端、魔法の才能があると褒めちぎられ、とても嬉しくなっていた。そんなに才能があるのなら、このまま異世界に居続けてもいいかもしれない。
そこまで考えて、母親の顔が浮かんだ。ずっと帰らなかったら、きっと家族が悲しむ。
ひきこもりをやっている自分がそんなこと言えるような立場ではないかもしれないが、ひきこもっていることよりも突如姿形もなく消えてしまうことの方が、家族が悲しむのは間違いないと思う。
「ところで」あおいが口を開く。
「聞いてもいいことならですけど、いえ、聞いておかなくちゃいけないことだと思うのですけど、私が戦う理由は何なんですか?」
あおいの質問に答えてキャロラインは長々と話したが、彼女の言うことを要約するとこうだ。
「つまり、正式に貴族として認められるためには、腕の良い魔闘士を育て、国王の前で立派に戦士を育成できる能力があることを示さなければならないと」
「さすがあおい、のみこみが良いです」
戦うのは怖かったが、自信がついてきたのもあって、不安はあまりなかった。それに何をしても褒めてもらえるのはとても気持ちいい。キャロラインありがとう。
ゆるんだ笑顔でそんなことを考えていたら、キャロラインは真剣な顔つきで、あおいの相手する魔闘士について説明し始めた。対戦相手が決まったとのことだった。相手はノーマという名の女性魔闘士で、魔法の才能には乏しいものの剣術の天才だとのことだった。
「接近されると厄介だわ」
キャロラインは真剣な面持ちで言う。
「だけど大丈夫。あなたなら絶対勝てるわ。いざというときは、私が助言することもできるから。私を信じて」
「これ、負けたらどうなるの?」
少し不安になってあおいは尋ねた。
「大丈夫。負けてもどうにもならないわ。ただ勝った方が評価が良いことは確かね。一緒に勝ちを狙いましょう! あなたならできるわ」
キャロラインの言葉に、自信がついたあおいだった。