張り巡らされる姦計
自分達のアジトにて、順調に女騎士達を陥落していく"しいたけ山賊団"。
首領であるアナホルもこのままいけばケイトを完堕ちさせる事は確実のはずですが、彼はスマホを片手に何やら難しい顔をして悩んでいます。
「う〜ん……"しいたけ禁止令"か〜、こりゃまた厄介だな」
スマホのネットニュース曰く、女騎士部隊だけでは埒があかないと判断した王国の上層部は、
『山賊集団――とりわけその中でも、"しいたけ山賊団"は反社会的で凶悪な集団なので、国民は彼らの略奪に加担するような行為を一切してはならない』
というお触れを出しており、噂によると"しいたけ山賊団"を討伐するための王国軍まで編成され始めているそうです。
山賊として有名になる事自体は嬉しかったのですが、自分達の実力では王国軍を敵に回した状態で、このまま略奪一辺倒でやっていくのは難しい……とアナホルは判断していました。
今はまだ大丈夫ですが、もしも近隣の村に襲撃出来なくなってしまったら、この"しいたけ山賊団"の蓄えが尽きるのもあっという間のはずです。
食料だけなら、山に生息している動植物だけで何とか出来るかもしれませんが、チーズフォンデュのような女騎士を籠絡させるためのアイテムにはどうしても費用がかかりますし、手下である山賊達にもロクに娯楽も与えずに、精神論でひたすら我慢を強いるような真似をすれば、『そんなの、全然"BE-POP"じゃねぇよ……』と、アナホルのもとから離反したり、裏切る者が出始めるかもしれません。
ゆえにアナホルは、皆をまとめ上げる首領として、"略奪"以外の方法で金策する方法を模索しなければなりませんでした。
「――フン、貴様ら悪名高き山賊どもの命運もここまでだ。……分かったら、さっさと降伏したらどうなんだ?」
正面から抱きかかえられている形になっていた女騎士団長のケイトが、息を切らしながらもすぐに顔を上げて、アナホルを罵倒してきました。
ですが、若くして山賊の首領に昇りつめたアナホルも負けてはいません。
彼は、スマホを持っているのとは反対の手で、机の上のピザに手を伸ばします。
「うるせぇ!大人しくその表情同様に、トロットロなピザを咥えてろ!舌出せコラッ♡」
「ッ!?――ン、ンググッ♡」
こうして、的確な判断と行動でケイトを黙らせただけでなく、食事を分け合うという仲良し♡イベント真っ盛りな思い出の共有によって、アナホルはまた一歩『女騎士団長陥落』という偉業に近づく事が出来ました。
……ですが、このまま女騎士とShippori and the Cityな行為にふけっているだけでは、山賊団をやりくりするためのお金は入ってこないままです。
意を決したアナホルは、"略奪"に頼らない形でお金を手に入れるために、"小説家になろう"という小説投稿サイトから書籍化デビューして、印税を稼ぐ事にしました――。