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#4追い詰められた犯人

 玉座の間に集まったのは俺と愛用の弓を傍に置いた女王に、昨夜見回りをしていた衛兵達とエケストリスだ。


 始めに口を開いたのはエケストリスだ。


「タンテイ。犯人が分かったようだな」


「まず言っておくが犯人はハーピーでもホビットでもない。あれは全部偽装だ」


 周囲のエルフがどよめいた。


「一つずつ話していこう。まず深夜に目撃されたハーピーは存在しない。何故なら彼女達は昼行性で夜は目が見えないんだ」


「では手摺りの傷は?」


「犯人がハーピーに見せかける為に傷をつけたんだよ。

 次にホビットの侵入だがあれもあり得ない」


「何故だ。タバコ草はホビットのものだろう」


「エケストリス。確かにあれはホビットの作ったタバコ草だ。

 だが彼らの持つタバコ草は命と同じくらい大事なものだ。

 それを落としていくはずがないんだよ」


 コリル女王が身を乗り出す。


「なら私が見た賊は一体?」


「犯人がホビットに変装した姿だ。周りが小さい背丈にホビットと言えば、あんたもホビットだと思い込むだろう」


「確かに一理ありますね」


 女王は納得したように頤に手を当てる。


 エケストリスが噛み付くような勢いで迫ってきた。


「犯人は誰なんだ」


「あんただよ」


  タバコを持った手でエケストリスを指差す。


 周りから混乱と敵意が伝わってくるが、俺は怯まない。


「私ではない」


「気になったのは二つ。一つは俺が来たときに俺の事を思い出せなかった事。

 そしてもう一つはあんたの背負ってる弓だよ」


 全員がエケストリスの弓に視線を注ぐ。


 近衛隊長が俺から一歩離れた。


「私の弓の何が事件に関係してるというんだ」


「しらばっくれるなよ。あんたの弓弦に違和感を感じていたんだ。

 その弦は女王の髪で出来ているんだよな。何故白金の弦を白銀の弦に変えてるんだ」


「エスケトリス。事件後、鍛冶屋で白銀の弦を買いましたね」


「へ、陛下! 私を疑うのですか? 長年仕えてきた私を犯人だと思っているのですか!」


「見苦しいぞ偽者」


 新たに玉座の間に入ってきたのは、もう一人のエスケトリスだ。


「本物のエケストリスは本人の部屋で監禁されていたよ。近衛隊長の部屋だから許可なく立ち入ることなんてできない。うまく考えたな」


 コリル女王が遠視石と呼ばれる水晶を取り出した。


「各国に連絡を取ったところ、行方不明のハーピーとホビットが発見されました。彼らに変装して罪を着せようとしましたね」


 偽者は観念したのか何も言わない。


 衛兵が連行しようと近づくと、賊は素早く弓を構えた。


 俺に矢が放たれる前に賊の心臓に矢が突き立つ。


「駄目!」


 矢を放ったのは女王だった。


 心臓を貫かれた賊の体が泥のように崩れ落ちていった。


「何にでも擬態する化け物、名付けるなら

 擬態(ミミック)かな」


『こうしてエルフの国は救われましたとさ』


 話を聞き終えた僕は思わず拍手していた。


「おじいちゃんは本当に名探偵だね!」


『しっかりと観察すれば探にも出来ることじゃよ』


「お話聞いて分かったことがあるんだ」


『何じゃ?』


「僕のおばあちゃんってコリル女王様だよね。だって名前は瑠璃子(ルリコ)。逆から読むとコリルになるじゃん」


 僕の推理におじいちゃんは無言だったが、しばらくするとこう答える。


『外れじゃ。コリルはファーストネーム。つまり名字なんじゃよ』


「なーんだ違うんだ。残念。あっ母さんに呼ばれたから切るね。じゃあねまた明日」


 ビデオ通話のおかげでつまらない夏休みともおさらばだ!


 孫とのテレビ通話を終えた儂は背もたれに深く沈み持っている本に目を落とした。


「後数年もしたら孫がそっちに行くだろう。その時はくれぐれもよろしく頼む」


 コリル・オ・ルリコに伝わったのか、革表紙の本が微かに震えるのだった。

 

 ―お・わ・り―

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