6話 『旅立ちの日』
僕が外の世界に出たら間違いなく死ぬと思うけれど、足掻けるだけ足掻こうと思う。
一応荷物の中には【魔肉の干肉、真水の入った水筒に魔草..etc..】を詰められるだけ詰めた。
これだけあればきっと、1週間は待つだろう。
「...まぁ、魔物に襲われた時点で詰むんだけどね」
それでも奇跡を信じて準備だけは行い、旅立ちの日を待った。
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「それでは子供達よ、気を付けて行くのだぞ」
村の村長が皆を代表して子供たちに言葉をかける。
「何かあったら直ぐに連絡してこいよ!」
何人もの親が、自分の子供に言葉をかけている。
やはり村のしきたりとはいえ、自分の子供が心配でしょうがないのであろう。
正直子供達だけで旅に行かせるなんて、正気の沙汰ではないからな。
しかしそういった親の中には、大金を叩いて傭兵を雇っている者も大勢いた。
正直それはルール違反のように見受けられるけど、どうやら暗黙の了解があり、村長に賄賂を渡したら許可が降りるみたいだ。
どこまでもしょうもない村だな。
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僕はそれから旅立ちの前に辺りを見渡したけれど、ついに"自分の親"は来ていなかった。
...この日くらいは来てくれるかと思ったけれど、こんなにも薄情な親だとはね...
因みに僕には弟がいるのだが、その弟が今年で10歳を迎え、『聖者』のジョブを与えられたそうだ。
これには両親も大層喜んだそうで、だからきっと今も訓練に付きっきりなのであろう。
...そんな事を思いながら憂いていると、背後から声がかかってきた。
「おい、ニヒト!お前のパーティー教えてくれよ」
...確か此奴の名前は......いや、忘れてしまったけれど、間違いなくつい数日前に僕のわき腹殴った奴に違いない。
「僕にパーティーなんていないよ」
顔なんて見たくなかったから、俯きながらそう答えた。
「ガハハハッ!そりゃあそうだろ!お前なんかと組んでくれる奴なんかいるわけねぇだろ」
...どうやら、パーティーがいないと分かった上で聞いてきたみたいだ。
なかなかに性格が悪いやつだけど、今に始まったことではないので我慢した。
「...ねぇ、そんなやつほっといて早くいきましょうよ」
此奴の名前も勿論忘れたけれど、性格が悪いことだけは記憶している。
どうやらこの性格最悪パーティーは、4人組で、『戦士見習い』『薬師』『タンク』『魔法使い見習い』の編成のようだ。
...なかなかに良い編成で腹が立つな。
「そうだな!...おいニヒト!俺らはこれからキーン王国に向かって冒険者になる」
「...へぇー、そうなんだ」
「だから、付いてくんじゃねえぞ」
ここで、ようやく彼が僕に声を掛けてきた意味を理解した。
「...わかったよ。そっちには行かないことにするよ」
「あったりめぇだろ。ついてきたらぶっ殺すからな」
他のパーティーからも声をかけられ、皆一様に付いてくるなと釘を刺してきた。
...どうやら僕は、しばらくの間どこの国にも行けないみたいだ。
...まぁお金なんてないし、入国税を払えない僕には関係ない話なんだけどね。