5話 バルト村の『掟』
僕の住処はバルト村の片隅にある洞窟の中にある。
元々は何もない所だったけど、分解スキルを用いて横穴を掘っていき、無理矢理に部屋を形成したのだ。
最初こそ雨風をしのぐ程度しか事を成さなかったが、今では内装も凝り始め、満足のいく住居に仕上がっていたりもする。
そんなある日のこと、いつもなら人すら寄り付かないこの洞窟に人の気配を感じた。
恐る恐る洞窟の入り口に目をやると、そのには村の大人が立っていたのだ。
「おい、糞坊主、お達しだ」
乱暴な言葉と同時に、男は紙を僕の前に放り投げた。
そしてその紙には、以下の文章が記載されていた。
『今年度12歳を迎えるものは、1週間以内に1年間以上の旅を命じる』
僕はこの文章を読んだとき、「...あぁ、遂にきてしまったのか」と、意気消沈した。
「これでようやくこの村の魔女を追い払えるって、村のみんなが喜んでたぞ」
男はニヤニヤしながらそう言った。
因みに僕の性別は間違いなく男なのだが、何故か周りからは『魔女』と呼ばれ、忌み嫌われている。
...まぁ、毎日気味の悪い紫色の煙を発したり、魔物の肉を食べているのだから、そう呼ばれてもしょうがないか。
「…分かりました。今までのお世話になりました」
僕は早くこの男が去っていってほしいので、心にもない言葉を放ち退居を促す。
「てめぇの世話なんざ誰もしてねぇよ。実の親にも見捨てられた悪魔の餓鬼が」
...僕の思いは残念ながら通じ無かったけど、その後嫌みを二三言い放ったら洞窟を後にしていた。
「僕の寿命も残り1週間かぁ...」
村の子供たちはパーティーを組んで、誰一人欠かさないように大人たちが配慮しているみたいだけど、僕には当然声がかからず、ボッチ確定みたいだ。
家を勘当された時点で覚悟していたけれど、ここにきてまた孤独を感じたのであった。
コロナではありませんが、風邪を1週間引いており心が荒んでいる今日この頃です。