4話 『才能無し』たる所以
この世界の常識では、冒険者を目指す子供は15歳で旅立つことが基準とされている。
そんな中でもバルト村は、魔物と戦う機会が豊富なために、12歳から旅立つことが義務づけられている。
しかしそんなバルト村で生まれた子供たちが、皆一様に戦士職に生まれてくるようなことはない。
中には『薬師』や『農民』、『商人』と呼ばれるジョブを与えられた子供もいるのだ。
...だがそういった子供たちですら、僕とは異なり魔物と戦う力があるのだ。
どんなに非戦闘職であっても、レベルさえ上がればステータスは上がる。
要はステータスだけで語るのであれば、伸び率や、上限率の差があるだけなのだ。
では僕の場合はというと...
レベル10であり、12歳の子供の平均値だ。
戦ってもいないのにレベルが上がった理由はきっと、分解スキルを乱用していたからだろう。
では次にステータス値についてだが、僕が上昇したのは『賢さ』『運』『魔力』"だけ"だ。
一見優秀そうなステータスタイプに見えるが、事実は異なる。
先ず、賢さは魔法の種類を覚えやすかったり、魔法の発動時間を短縮するものである。
では、魔力はというと、魔法を使う際の体力のようなものを増加させたり、単純に魔法の威力を増加させるものである。
最後に運についてだが、これは未だに何か分かっていないとされている。
...風の噂ではギャンブルの勝率が上がるとか言われているそうだが、絶対嘘に決まっている。
つまり要約すると、僕のステータスタイプはがっつり魔法使いタイプなのだが、僕は『錬金術師』なのだ。
戦闘向けの魔法なんて覚えてないし、これから覚えられるかどうかも分からない。
持っているスキルといえば、『合成』スキルと『分解』スキルだけだ。
...それに忘れてはいけないのが、『賢さ』『運』『魔力』"だけ"しか上がっていないという点だ。
ステータスにはその他にも『体力』『筋力』『速さ』といった項目があるのだ。
僕にはレベルが上がってもそれらが一切1ミリも上昇しないのだ!
故にそこだけは生まれたての赤子と然して変わらないのだ。
...まぁ厳密には骨格や筋肉が付いているから違うんだけど、潜在的には同等なのだ。
しかし、そんな僕にも実は生まれ変わるチャンスがあったりするのだ。
それは『祝福の神殿』と呼ばれる"ジョブを変更出来る施設"があるのだ。
それはどの王国内にも必ず構えてあり、"神官に多額の寄付すること"と、"自らが保有しているレベルを破棄すること"によって、『ジョブを昇格』させたり、『下位職のジョブに変更する』ことができるのだ。
では僕もそれをやればいいだろうと思われるが、これは残念ながら無理な話なのだ。
まず条件その1である『寄付』についてだ。
寄付の金額はお布施という形にしているが、明らかなラインが存在する。
最低限でも100金貨は必要だ。
これは、この国の上位の冒険者が5年間働いた時に得られる収入に値するらしい。
まだ働いてすらいない僕には、到底無理な話なのだ。
次に条件その2だけど、自らの保有しているレベルの破棄についてだ。
これにも実はラインが存在しており、レベルが50を超えていないと転職出来ないと云われている。
またレベルがリセットされるために、ステータスは最弱からスタートだ。
今までの努力が一瞬で霧散するのだ。
僕には到底考えられない行為だ。
しかし世の中は広く、転職しても"スキルの引継ぎは可能である"ために、上位の冒険者からは一定数需要があるのだ。
僕がそんな世の中を憂いているある日のこと、遂に僕らバルト村の子供たちに命令が下った。
今日はここまでです。
気が向いたら続編を書いていこう思います。