46話 『代行』
僕はウーノさんが居なくなった事で暗くなってしまったこの場を、少しでも明るくしようと思い、アエリア曹長に話を切り出すことした。
「...そういえば、悪魔族の人達は人間族によって捕らえられているんでしたよね?」
「えっ!? その話、誰から聞いたの?」
アエリア曹長はそう言うと、僕に鬼気迫る表情で問いただしてきた。
これって話したら不味かったのかな?
僕はそう思いつつも素直を話すことにした。
「レイティア副官から聞いたんですよ。以前、キュゴが暴走した時に悪魔族の情報と引き換えに教えて貰ったんです」
「...あ、なんだレイティア副官か、びっくりしたぁ」
因みにこれは後から聞いた話だけど、この情報は”秘匿事項”に値するからあまり口外しないように注意された。
レイティア副官も教えてくれれば良かったのに...
「それで、悪魔族の人達は『レージング』には居ないんですか?」
僕はてっきり、今回の悪魔族の進軍は、同族の解放だと聞いていたもんだから、キーン王国に彼らがいるのかと思っていた。
「ボク達には、同族を感知出来る方法があるんだ。だから、”あそこには”反応がないんだ」
これも何処かで聞いた事のある話が出てきた。以前キュゴを見たギャルド将軍は、オーラでキュゴの正体が分かったと言っていた。
つまりそれと同じ能力なのだろうか?
僕がそんな風に考えていたら、アエリア曹長から声がかかってきた。
「...あのー、これは別の話なんだけどさ、さっきのウーノの話は、その~...」
どうやら彼女はウーノさんの話を詮索して欲しくなさそうだ。
僕も元からその件について掘り下げるつもりもないし問題ない。
「それはいつか、ウーノさんが自分から話してくれた時にでも聞きたいと思います」
「...うん、それがいいね!」
それはそうと、僕はさっきドスさんの話を聞いた時から1つの”アイディア”が浮かんでいた。
それを今から彼女に伝えることにした。
「あの、さっきのドスさんの話なんですけどいいですか?」
「ん?なんだい?」
彼女は小首を傾げて、僕の顔を覗き込むように視線を送ってきた。
「もしよかったら僕がドスさんの様子を見てきましょうか?」
「うぇっ!?ニヒト君が?」
アエリア曹長は驚愕の表情を作り、口をあんぐりさせている。
確かに、急な話で驚かせてしまったのかもしれない。
でもこれには、ちゃんとした訳があるのだ。
「はい、僕であればキーン王国に怪しまれずに入れると思います。それに今は戦争中ですし、簡易的な身分確認しかしないと思いますから、僕でも簡単に入国することが出来ると思うんです」
そう、つまり彼女達には困難なことであっても、『人間族』の僕であれば簡単に遂行出来そうなのだ。それに何かあったとしてもキュゴがいるし、ラミーも...まぁ、ラミーはいないよりはマシくらいか。
「...班長、ここは正直彼にお願いした方がいいと思います。ドスがここまで音沙汰がないのは明らかに不自然ですし、ニヒトが言うように私達だけでは何も出来そうにありません。だからここはニヒトに甘えても良いのではないでしょうか?」
「で、でも!それでも無関係なニヒト君を巻き込むにはやっぱり危険なんじゃ...」
ドレスさんは僕の案に賛成みたいだけど、アエリア曹長は僕の事を慮ってくれてあまり乗り気ではないようだ。
正直、アエリア曹長の気持ちは嬉しいけど、それでも僕も彼女達の力になりたいのだ。
それに、キーン王国って初めて行くから少し楽しみだったりもするのだ。
「大丈夫ですよ。僕は『人間族』ですし、あの王国内で襲われるような事は多分無いです。それにドスさんの様子を見るだけでいいんですよね?」
僕が彼女に安全性を伝えると、ようやく首を縦に振ってくれた。
「...う、うん、わかったよ。申し訳ないけど、よろしく頼むね...」
「はい!任せてください。では僕たちは早速準備が出来次第行って来ますね」
僕はそう言ってこの場を去ろうとしたら、後ろから声がかかってきた。
「あ、あのっ!ニヒト君!」
「はい?」
声の正体はアエリア曹長だった。
まだ僕に何か用があるのかな?
「け、怪我しないでね?」
「...へ?あ、はい。大丈夫ですよ。キュゴもいますからね」
僕がそう言うと、足元で「ラミーも行くから心配ないゴブ!」と何者かが叫んでいたけど、僕は無視してこの場を後にした。




