1話 無能な『錬金術師』
この世界には『ジョブ』という概念が存在する。
ジョブとは...
神が人間族に対して与えて下さる唯一の『祝福』であり、その祝福を授かった者には特別な力を得る事が出来るのだ。
祝福を授かる方法は...
10歳になった子供を対象に、神官が神からのお告げを聞き入れ『役職』を与えて下さるのだ。
そしてジョブを与えられた子供たちは、そのジョブの特性によって体つきが変わったり、特殊なスキルの使用が可能となる。
現に先程僕のわき腹を殴打してくれた奴は、『戦士見習い』のジョブを有していた筈だ。
昔はヒョロヒョロの体型をしていて、僕といい勝負だった筈だ。
でも今では筋骨隆々とは言えないけど、中々にいい体をしているのだ。
しかし全てのジョブが、彼のような前衛向けのジョブではない。
つまり後方支援に向いているジョブのことだ。
ではそういったジョブも身体的特徴が変わるのかというと、これは変わらない。
しかしその代わりに、知能指数が上昇しやすくなったり、習得出来るスキルが豊富になりやすいというメリットがあるそうだ。
またその他にも、非戦闘職と云われるジョブも存在する。
例えば『商人』や『鍛冶師』などが挙げられ、大体の人間族はこの割合が最も多いと云われている。
そしてそんな中、僕に与えられたジョブは『錬金術師』だったのだ。
これは一見、非戦闘職に類するものと考えられそうだが事実は異なる。
所謂、『イレギュラー』な存在らしい。
『錬金術師』は戦闘能力が皆無な上に、後方支援に向いているスキルを一切覚えない筈だと神官が言っていた。
だから僕は非戦闘職だと思い『金』を生成しようとしたのだ。
...しかしその結果は、無残にも生成不可能だった。
自身の価値の無さに焦った僕は、色んな文献を読み漁り、錬金術師の価値を探したのだ。
...その結果得た情報は、"この世で錬金術師となり、その情報を文献に残した人間は1人もいない"と言うことだけが分かったのだ。
そして当時、全てに絶望した僕に村のみんなは優しかった。
...けれどそれも最初の内だけで、いよいよ錬金術師の価値が無いと判断するなり、僕に対する当たりが次第に強くなっていったのだ。
今では仲の良かった幼馴染にすらボコられる次第だ。
「...なんで『錬金術師』に選ばれたたんだろ」