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馬車馬のように働く魔物たち  作者: 蘆田
第3章 【安息の地 ウェスタ村】
19/69

18話 『決意』と『最後』

ウェスタ村に住み始めて数日が過ぎた。

そろそろこの生活も終わりかな、なんて空を見ながら黄昏れていたら、大量の鳥達が空を横切った。

「あっ、本当に来ちゃったか」

「…キュ?」

日向ぼっこをしながら気持ちよさそうに寝ていたキュゴが目を覚ました。

まだ眠たそうな顔をしながらこちらを見てくるが、頭を撫でながら頼みごとをした。


「キュゴ。そろそろ狩りの時間だよ。頼んでもいいかな?」

「キュイ!」

キュゴの前で無残に嬲り殺される姿を見せたくない。そう思い、キュゴを狩りに行かせた。

「…きっと寂しがるだろうな。でも、キュゴはもう自由だから大丈夫。また新しい友達が出来るよ」

実は先程、頭を撫でながらキュゴとの『契約』を破棄しておいた。これで、キュゴは完全に何者にも縛られない自由の身となったのだ。


最後に念願の友達も出来たから心残りは何もない。


………いや、嘘だ。本当はまだ生きたい。

「…死にたくないなぁ」



それから半刻後、徐々に地響きが鳴り始めた。まるで大地が怒っているかのようだ。

地響きが鳴り始めて数分後、突如村の門が蹴破られた。

「聞けい!人間ども!! 吾輩は悪魔将軍『ギャルド』、今からこの地は我ら『悪魔族』が支配する! 惨たらしく殺されたくなければ直ちに投降せよ!!」

悪魔大将の『怒声』が聞こえる。

「ギャルド将軍、斥候部隊から報告。この村の人間は既に退却している模様とのことです」

「ふん、怖気づいたか。だが油断はするなよ!!まだ潜伏しているかもしれん。発見次第、即座に殺せ!」


…あぁ、僕のことだ。早いうちに投降して一瞬で殺してもらおう。うん、そうしよう。

事前に用意しておいた白旗を震えた手で掲げ、悪魔族の方に足を進める。

「ん?なんだあれは?」

「人間の子供のようですね」

先程の『悪魔将軍ギャルド』が見えてきた。ギャルド将軍は筋骨隆々で紅い髪を逆立ており、非常に怖い。隣にいる副官と思わしき悪魔は金髪ロングで細身の女性のようだが、顔はフードを被っておりあまり見えなかった。

僕の出現に周りの配下の悪魔たちが臨戦態勢を取り始めたので、早めに要件を伝えよう。

「あ、あの!投降します。痛いのは嫌なので、一瞬で殺してください…お願いします。。。」

僕は土下座しながらそう伝えた。


「ふん、逃げ遅れでもしたか愚者め。だが、潔し良し!そんな貴様に免じて、吾輩自ら引導を渡してやろう」

悪魔将軍がこちらまで歩いてくる。もうすぐ全てが終わるようだ。

「…あ、あの。」

「ん?、なんだ『レイティア』?」

どうやら、悪魔将軍の隣にいた副官の名前は『レイティア』というらしい。

「…いえ、なんでもありません」

「?、そうか」

何も要件がないなら口を挟まないでほしい。一度決意した覚悟が揺らいでしまったではないか。


「では行くぞ小僧」

「……はぃ」

僕は、なんとかカラカラの喉から声を絞り出せた。

あぁ、僕はこれから死ぬんだな。

キュゴ、短い間だったけど本当にありがとう。そして、さようなら。

心の中で感謝を伝え、最後の時を待つ。






……………?


いくら何でも焦らしすぎじゃないか?

覚悟を決めた男に失礼だ。少し文句を言ってやろうと顔を上げると…


…目の前に『キュゴ』が立っていた。

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