13話 『契約』と『呪い』
世の中には『調教師』と呼ばれるジョブが存在する。
調教師の主な役割は、魔物を『テイム』し、使役をすることだが、あくまでテイムがし易い環境を整えたり、成功率を上げるスキルが豊富なだけであり、調教師の専売特許ということではない。
魔物自身が『服従』することで『テイム』は成り立つ。
しかし、元々大抵の魔物は知能が低く、碌にコミュニケーションが取れないため、あまり例がないと言われている。
「ねぇ、キュゴ、本当にいいのかい?」
本来魔物を連れて人里に行くと、危険と判断されて殺されてしまう。
しかしながら、魔物がテイム状態になっていれば安全だと認識されて、一緒に暮らすことも可能だ。
だけど、魔物のテイム状態とは、絶対服従を意味する。
つまり、何が何でも主人に対する敵対行動がとれないのだ。
それは強制的に縛る『呪い』とは異なり、相互の合意から成る『契約』ではあるが、結果は同じだ。
つまり、再びキュゴを縛ることになるのだ。
「折角自由になったのに、また縛られちゃうんだよ?」
「キュイッ!」
問題ないというような強い返事が返ってきた。
「まぁ、僕も一緒にいれて嬉しいから気にしないでいっか!」
「キュイッ!」
「じゃあさ、契約の期間とか約束事とか決めよっか」
「キュイ?」
『契約』には、見返りや期間を定める必要がある。
しかし、それは一般的ではない。
冒険者の多くは魔物の知能の低さを利用し、わざと契約内容を伝えず契約をする。
そのために魔物に対する『呪い』と『契約』は同一視されるのだ。
一方ニヒトは、全て文献からでしか学んでいないため、律儀に契約内容を取り決めたのであった。
666文字になってしまった。