12話 『服従』
「ん?あれ? また、寝ちゃったてたんだ」
気づいたら外は明るく、木漏れ日が降り注いでいた。
「あっ! キュゴは!?」
周りを見渡しても、『キュゴ』の姿が見えず、焦ってしまった。
しかし、よくよく自分の周りを確認してみると、膝の上で包まっている魔物がいた。
その『キュゴ』と思わしき魔物は、小さい寝息を立てて眠っていた。
「ね、ねぇ? 君は『キュゴ』かい?」
寝ているところ悪いと思うが、僕には予定があるため、軽く揺さぶって起こすことにした。
「…キュ?」
どうやら、目が覚めたみたいだ。
鳴き声的に、『キュゴ』で間違いないようだ。
「あ!、おはよう。 よく眠れた?」
「キュッ!」
記憶は朧気だが、僕は最後まで『キュゴ』の呪いを解くことに成功したようだ。
「どうだい? 体に異変はないかな?」
「キュ? キュゴォ!!?」
僕の言葉を聞くと同時に、自身の体を確認して自分の体が見えていることに驚いているみたいだ。
「よかったね。 君の『呪い』はもうないよ」
一度『キュゴ』の体に触れて、魔素の流れ確認したが、もう『呪いの楔』は確認できなかった。
「これで、寂しい思いはしなくて済むね! じゃあ、僕はもう行くよ」
「キュ?」
『キュゴ』は僕の言っている意味が分からないのか、首を傾げた。
「ごめんね。 僕は生きるために、旅に出なくちゃいけないんだ。」
一瞬、この森で暮らそうと思ったが、僕では勝てそうにない魔物が沢山いることを思い出し、一蹴した。
「キュイ!キュイ!」
寂しそうな声で鳴いてくるが、仕方がないんだ。
「ごめんね。僕も別れたくないはないんだ。 それに大丈夫だよ! 定期的に顔を見せに来るから」
「キュイィ! キュゴォ!!」
『キュゴ』は、駄々をこねて暴れ回っている。
「もぉ~、困ったなぁ。 君を連れて行くことは出来ないんだよ。 だって、魔物を連れて、人里に降り立ったら、絶対に冒険者や警護の人に殺されちゃうよ」
「キュゥゥ…」
僕の言っている意味を納得したのか、残念そうに俯きだした。
『キュゴ』が可哀想で困り果てていると、『キュゴ』は唐突にパッと顔を上げて、「キュイ!」と鳴き、お腹をこちらに見せてきた。
これは、魔物が服従する時にするポーズであり、無条件で『テイム』する事が可能なのだ。