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▼01.はじめましてから始まる配信(ストーリー)

「はじめましての人ははじめましてー! 前に見てくれた人はこんにゃっぱー! 現役JCのつぐみるらとほてっぷちゃんです!!」

「はじめまして。えっと、あ、あに「姉!」……姉の、つ、つぐにゃるらとほてぷです」

 視聴者はまだ30人だというのに、しょっぱなからこのテンション。我が妹ながら恐ろしい子である。

 目の前にあるのはウェブカメラ。それが写すは僕達の姿であり、それをパソコンのディスプレイの中で配信中の映像に表示している。

 とはいえ、嗣深は猫のイラストが描かれたマスクをつけ、猫耳フードをかぶって顔の全部は分からないようにしており、僕も伊達眼鏡をかけてマスクをつけている上、嗣深の手によってうっすらと化粧されているために画面にうつる姿はど見ても我ながら女の子にしか見えない程度には変装している。

『つぐみーん! 俺だー! 結婚してくれー!』

『前回配信は姉フラで突然切ったと思ったら、今日はまさかの姉を引き込んだだと……!?』

『姉が普通に美少女でわろた』

『眼鏡姉メインキャスト化期待』

『まぁ待て落ち着けお前ら、マスクの中はきっとパーツのバランスが悪いに違いない』

 画面に流れるコメントは好意的なものが多いが、期待しすぎるなよと釘を刺す人もいるが、そのとおりである。女装なんですコレ、と今からでもバラしたいけれども、嗣深に念を押されているためそうもいかない。

 そもそももう女装して出されてる時点で、バラしたら僕が恥をかくだけである故に。

「ふぁー、つ……お姉ちゃん初登場なのに人気をいきなり持っていくなんて、皆、つぐみんのことは遊びだったんだね!」

『愛してるよつぐみん!』

『遊んでやる、かかってこいよベネット』

『ほーら猫じゃらしだぞー』

『俺は美少女よりも美幼女派だからつぐみん派だ、安心していいぞ!』

『ちくわ大明神』

『誰だ今の』

「扱いが雑い! 雑いよ皆! もっと敬って! 崇め奉っていいんだよ! ほら、いつものいくよー! いあ いあ つぐみーん!」

『いあいあつぐみん!』

『いあいあつぐにゃる』

『いあいあくとぅるふだごん』

『おう邪神呼ぶのやめーや』

『いあいあつぐみん』

『いあ! いあ! つぐみーん!』

 ノリが良いなぁ視聴者の皆さん……。

 というか、いあいあって、妹よ、君は邪神にでもなるつもりなのかね。

 いや、というかまぁ、らとほてぷの名前を名乗ってる時点でそうなんだろうけども、もっとこう、何か可愛い名前とかなかったのだろうか。

「いいよいいよーその調子だよ! はい、じゃあ少人数でも私をあがめている人がいるのが分かったところで、さっそく今日のゲーム配信をやっていくよ! さぁお姉ちゃん、パッケ出して!」

 喋り捲る嗣深とちょいちょい流れるコメントをボケーっと眺めていたら、嗣深に声をかけられて慌てて段取りを思い出し、横に置いてあった今日やるゲームのパッケージをカメラの前に突き出す。

「え、あ、えーっと、は、はい。えーっと、今日やるのはこちら、熱狂ワンダフル草野球です」

「皆ご存知の大御所、わんこ達の草野球ゲームだね!」

『最新版じゃねーのかよwww』

『3年前版w』

『個人的に自分もその年の高校野球編が好きだから配信者さんとは趣味が合いそうだ』

「JCの財力を舐めたらいけないよ! 最新版なんて高くて買ってられないからね! 遊べれば良いんだよ遊べれば!」

「うんうん」

 嗣深が珍しくちゃんと正論を述べているので頷いておくけれども、僕は知っている。嗣深はお小遣いで買えなくも無かったはずなのに、つい巨大ぬいぐるみを衝動買いしてお金が無くなったことを。

 ちなみに僕もちょっと出したので、たまにもふらせてもらっている。

「というわけでねえ。一応知らない人のために解説するとー、これはねえ、現役プロ野球選手の名前をもじった人型わんちゃん達の草野球チームで対戦するゲームです」

「えーっと、自分でキャラクターを作って球団を作ったりも、できます」

「なので、さっそく今日は、お姉ちゃんとわたしで作ったチーム同士で対戦する様子をごらんいただこーと思います!」

 嗣深のその言葉のあと、PCに映っている画面から僕たちがフェードアウトして、ゲーム画面が開始する。

 オープニングは毎回力の入っている、人型わんこ達による野球シーンをしっかり流す。

 流石にこれは露骨な尺稼ぎではなかろうか、という思いを抱かないでも無いけれど、まぁ出来の良いオープニングとかって何度も見たくなるよね。

『ワン草をJCがオリジナルチーム作るほどやりこんでいるだと……?』

『いや、最近はそこそこいるぞ、女子でもこれやってる奴。わんこ可愛いからな』

『わかる。私もやってるわ』

『俺もやってるわー』

『じゃあ俺もやってるわ』

『は? 俺なんかお前作りすぎてキャラ数カンストさせてるぞ』

『むしろこのゲーム、キャラ数カンストさせてからが本番じゃね?』

『作ったキャラを仲間にできるから、後から作る奴のほうがいいのできるしな』

 流石にメジャーどころのゲームなだけあって、コメント覧も勝手に盛り上がっている。

 それに対して嗣深が適当に相槌を打ったり、コメントをかえしたりしながら、僕と嗣深は対戦モードでお互いのオリジナルチームを選択し、ランダムで先行後攻を決める。

「はーい注目。えー、この球団のパラメーターグラフ見ると分かると思うんだけど、その球団の得意不得意な能力が出ていますね!」

 そう言って嗣深が両チームのパラメーターグラフを表示する。

 打撃、走塁、守備、投手、意外性の五つのパラメーターがあり、嗣深は10段階評価の内、打撃9、走塁4、守備3、投手8、意外性9という完全なる特化型。

 対して僕のチームは打撃5、走塁8、守備7、投手9、意外性9と、打撃が若干低いものの、バランスは良い感じである。

『つぐみんのチーム、打撃と投手と意外性に偏りすぎだろwww』

『走塁と守備完全に捨ててやがるwww』

「良いんだよ! 全員三振にとって、ホームラン打っとけば勝てるんだよ! 走塁と守備なんて飾りです! 意外性はほら、なんていうか、特殊能力ってほしくなるじゃんね?」

『謝って! ジャパニーズリトルベースボールに謝って!』

『流石はつぐみん。メジャー思想である。そして特殊能力とりすぎて基本能力がおろそかになるのあるある』

『おい待て、いくら打撃と投手がメジャーレベルでも流石に走塁と守備がゴミは駄目だろwww』

『対してお姉さんのチームのリトルベースボールっぷりよ……』

「大きく打てなかったら走れば良いんだし、点とられないために守備って大事だよね……?」

『少なくとも日本の野球はそれで合ってると思うよお姉さん』

『バランスって大事ぃ』

『お気楽能天気な妹と堅実で知的な眼鏡の姉……最高じゃあないか』

 ごめんね、兄です……そして知的ではありません、はい……。

 コメントに若干の罪悪感を感じつつ、野球場はランダムで、試合前のスタメン及びベンチメンバー入れ替えに突入。

 調子が最悪のメンバーを、ベンチの調子が良いメンバーと入れ替えて、いざ、試合開始である。

 一回の表、先行は嗣深だ。

 先頭バッターは<シュツルム>。ドーベルマンの人型わんこで、打撃評価A+走塁評価C+守備評価Eという完全打撃特化だが、確か特殊能力に走塁と盗塁の最大ボーナスが振られていたと思うので、走塁評価は実際のところB+程度と見積もったほうが良いだろう。

 嗣深のチームで唯一俊足を誇る選手である。

 対して僕のチームの先発投手は<アイン>。

 ヨークシャーテリア?の人型わんこで、左投げ、コントロールA-スタミナA-球速143km、スライダーS、スローカーブA、ナックルB、スクリューEの四球種持ちだ。

 スタミナを上げるために球速が少々犠牲になってしまっているけれど、コントロールを活かして攻める技巧派投手である。

『どっちもドイツ名の選手だと……?』

『さてはこの姉妹、女子だともっと早くにかかっていると言われる、その年齢なら男子がかかるはずの病気を発症しているな……!』

『ドイツ語=厨二病の発想は悪』

『でも厨二病にかかってた頃って、ドイツ語最高に格好良く感じたよな?』

『え、今でも格好良いと思ってるんだけど、俺』

『わかる』

『わかる』

「わかる!」

 嗣深がコメントにめっちゃ目を輝かせながら頷くが、僕的にはドイツ語も確かに格好良いけど、日本語も格好良いと思うよ? うん。

 ちなみに、嗣深は余所見をしたお陰でストライクを一個儲けた。しめしめ。

『多分、世界中の全言語の中で一番イカしてるわ、ドイツ語』

『いやいやいや、お前世の中にはもっと格好良い言語一杯あるで?』

『例えば?』

『大阪弁や』

『草はえるwww』

『それ言語っていうか方言やwwww』

「なんでや! 大阪弁かっこええやろ!」

「嗣深、似非関西弁やめーや?」

 そんなん言うてる僕も似非関西弁なんやけどね?(虎次郎くんの真似)

 かくして、なんやかんやぐだぐだと駄弁りながらゲームしているだけの配信だったけれど、どうも結構評判が良かったらしく、ぜひまたやろうと嗣深に頼まれるのであった。解せぬ。

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