ウォシュレッド
微エロ、微グロ要素あります。
「ウ〇シュレットはT〇T〇の登録商標だから、ちゃんと伏字にしないとダメじゃないかぁ」
なんてことを得意げに言っちゃうような性格だから、H係長は周りからあまり好かれていない。
今日も独りデスクで昼食を取りながら、不要書類を処分するOLたちの世間話に耳を傾けていると、なにやら面白そうな話ではないか。ぎゅういぃん、という、機械が紙を細かく裁断する音で聞き取りづらいが、こういう内容だった。
「昇天トイレ」なるものがあるらしい。
曰く、この会社のトイレは全てT〇T〇製だが、ある個室トイレだけ「てんごくや」なるメーカーの温水洗浄機が取り付けられており、それを使用すると天国にも勝る気分を味わえるというのだ。
この手の話にありがちなことだが、場所は不明だ。H係長は興味をそそられていたので、ちょっぴり落胆した。
しかし、彼は実際にそのトイレを発見することになる。昼食後、たまたま入った個室で「てんごくや」のロゴを発見したのだ。なんと。噂は本当だった。
いったい、どんな快楽の渦に飲み込まれてしまうというのか――H係長は豪快に下穿きごとズボンを下ろし、どすんと便座に腰を下ろした。高ぶりを抑えきれなかった彼は、その時、ほんのわずかな違和感を見逃してしまった。用も足さずにボタンを押す。
ウィーンという機械音が響き始めて、H係長ははたと気付いた。操作盤には「ウ〇シュレット」の文字があったのだ。この便座、T〇T〇の製品じゃないのに。商標権の問題はどうなっているんだ。
いや――違う。よく目を凝らしてみた。
ウ〇シュレットじゃなくて、ウォシュレッ「ド」。そう書いてある。汚れではなく、確かに濁点が印字されていた。
ウォシュレッド……シュレッド……シュレッダー。
「ぎゅういぃん」
ついさっきも聞いたような重低音の中、H係長のケツは便器の奥からの有無を言わさぬ引力を感じていた。(完)