第8章 翔市の運命
第8章 翔市の運命
看護師岡本の腕の中で紗枝は夢を見ていた。
ディズニーランドを、パパママの間に挟まれ手をつなぎ、
楽しそうに笑っている。
そこは、ミッキー、ミニーたちのパレードだ。
ミニーが、紗枝に大きく手を振り、大きなジェスチャーで握手、抱擁を・・・
そして、きっキーとも握手、抱擁・・・うれしい、
ママ・・・パパとっても・・・
そう言って振り返ると、ママの姿が消えていた。
「ママ・・・ママぁー・・・・!」
そこで目が覚めた。
紗枝は周りを見回し、ここは病院である事を認識した。
紗枝を抱いていてくれたのは、看護師の岡本さんだった。
それはまるで、ママに抱かれているような感じがした。
とっても幸せな気持ちになって、夢を見た。
その夢はいつも紗枝が夢見ていた事だった。
そう、もう少しで現実になるはずの・・・・
「紗枝ちゃん、夢見てたの?・・・・お母さんの?」
「うん! そう・・・でも・・・ミッキーと握手してそれで・・・」
「ママが・・・・急にいなくなったの!」
「そう、それは・・・・・」
「あっ、パパ、パパ・・・・・!」
そう、紗枝パパが誰かに刺されて大変な事にそれを思い出し、
ICUに走り出した。
そこには、寝入ってしまう前と同じように、体中にコードが・・・、
チューブが取り付けられていた。
当然中には入れないガラス越しで見るだけだ!
それを追うように、看護師の岡本が付いて来た。
「紗枝ちゃん! パパきっと・・・大丈夫よ!」
「本当に!」
「本当に・・・ほんとう・・・看護師さん!」
うん・・・看護師さん!・・・か?
普通おばさんとか・・・
「ねえ、紗枝ちゃん! パパを応援しようか!」
「うん! でもどうやって?」
「パパの手・・・紗枝ちゃん握ってあげたら・・・きっと!」
「うん、そうする! ね! ね!」
「わかりました、それでは・・・あなたを消毒して・・服を着ましょう!」
「はい!」
素直に看護師岡本の指示に従い、エアーカーテンの中を通り予防衣を、
マスクをつけてICUの中に入った。
看護師の岡本と一緒に・・・・・
やはり相当緊張しているのか、紗枝前に足が進まない。
岡本が小さな背中を少し押すようにして、パパのベッドの傍にやって来た。
「紗枝ちゃん! パパの手握って! しっかりと!」
「はい!」
だらりと伸びた、血の気を失った白い手を紗枝は少し戸惑いながら、
でも、しっかりと握った!
「冷たい! パパの手・・・いつもの手と違うの!」
「そう・・・そしたら紗枝ちゃん暖めて上げて!」
「うん!」
その時、何故か心電図が少し変化したようだ。
脈拍が幾分あがった。紗枝の手を感じたのか・・・・・
「あっ! パパの手が・・・動いた! 動いたよ!」
「そう・・・きっと紗枝ちゃんがわかったのよ!」
「本当?」
「そうよ・・・、だってあなたが一番でしょ!」
「うん!」
「もう少し・・・そこに座ってパパの手を握ってあげて!」
「はい!」
「どうですか?・・・・先生!」
「そうですね・・・・、50% ですかね!」
「そうですか!」
「処置が早かったから! でなければ・・・」
「危なかったですか?」
「そうだね! 刺さった場所が少し心臓から外れていたから・・・」
「それに、少し前の経験が・・・生きた!」
「そう・・それは言えてるね! 間違いなく!」
「後は・・・彼の生への執着・・・かな!?」
「それで・・・娘さんを!?」
「そうだね! われわれは成すべき事をした。」
「すべて・・・ね!」
「後は・・・祈る・・・ですか?」
病状は落ち着いて来ているが、油断は禁物だ。
夜8時を過ぎ小康状態が続く中、紗枝の疲れもピークに・・・・。
看護師が、もう少しと言うのを制して、ICUから紗枝を連れ出した。
さすがに、もう限界と言った感じの警察も、犯人の詳細が聞きたい。
あえて、父親の傍にいさせたのも紗枝の気持ちを落ち着かせる目的も・・・
しかし、刑事は紗枝から今まで以上の情報は得られなかった。
そして、紗枝は別な看護師さんの下へ預けられた。
何せ、今現在紗枝の身内が見つからない。待合室に一人は無理だ。
別の看護師さんとは少し距離があった。さすがに岡本看護師の様にはいかない。
紗枝は、ずっとママとのメールが気になり、ミニPCをバッグから取り出し、
PCを開けて電源を入れた。
メールの更新を見に行く。
紗枝が叫んだ!
「あっ・・・ママからだ!」
「ママからのメールが来てる!」
「えっ??」
傍にいた刑事が叫んだ!
なぜだ・・・何故!!
See you later Nozomi Asami