第7章 貴瑛の決断
第7章 貴瑛の決断
「おかしいな!」
「どうしたんだろう?」
桜井貴瑛は何故かディズニーランドにいた。
それもぬいぐるみを着て・・・・そう・・・
ミニーの格好で上地親子が来るのを待っていた。
貴瑛は上地親子の行動を全て把握していた。
それは、今も不思議だが、持って生まれた好奇心が貴瑛の心を揺さぶる。
結果が、今日のこの衣装だ!
何故か翔市は親子の会話をあえて、間違いメールのそのあて先である、
貴瑛に送っていた。
その真意を掴みたいのと、上地親子の姿をこの目で見たいと言う好奇心が
自分の両親に無理を言ったのだ。
桜井貴瑛は、と言うか桜井家はとても関係が深い。
貴瑛の祖父がこのディズニーランドの経営に関与している。
勿論貴瑛も・・・・だ!
貴瑛はまだ異変に気づいていない。
翔市親子が、このゲートを潜る予定時刻を過ぎても、
一向にあの親子の入場を確認していない。
貴瑛はサプライズを用意していた。
あの親子が入場する時には、
“!! あなたは何百万何千人の入場者です!! ”
と紹介してあっと驚かす、セレモニーを予定していたのだ。
貴瑛は携帯を取り出し、ニュースチェック・・・確認した。
ワンセグTV画面にテロップが流れていた。
“! 東京駅構内で親子連れに何者かが襲いかかり、
父親を鋭利な刃物で刺して逃走した模様!!“
“! 父親は近くの大学病院に搬送され重症である!”
と、報じていた。そのテロップは2度ほど流れた。
うん、これは・・・この親子はもしや・・・・
そう直感した貴瑛、ミニーのきぐるみを脱ぎ捨て、現場に直行した。
何故・・・そこまであの親子を・・・・と、
一瞬考えるが、体は自然と行動していた。
消防隊に身内と偽って収容先を聞き出した。
そして今、その病院の待合室にいる。
やって来て見たはいいが、どう相手に接して良いの、
かまるで思い当たらない。
何故自分が今ここにいるのか・・・・
自分でも理解できていないのが現状だ。
少なからず、あれからの翔市との経緯を話したら、
まず容疑者扱いされる要素が多いに決まっている。
はて・・・・、如何した物か、思案に暮れていた。
まず、ICUに簡単には近づけないだろう。
おそらく警察が・・・・傍に張り付いている。
だがしかし、貴瑛には一つ名案が・・・
それはママへのメールだ。
翔市が毎日ママとしてメールを紗枝に送っている。
それを、私が行えば病状はわかる。
そうだ、それがいい。
そう決心した貴瑛は病院を後にして、自宅に向かった。
一方警察も犯人の行方を必死で追っている。
何故あの親子が・・・父親が刺されたのか!
それは・・・無差別なのか?
あの家族を狙っての犯行か?
目下その両方の線で、犯人を追っている。
怨恨の線で・・・・・、翔市の仕事先に出向く刑事は、
会社の上司、同僚、部下などの証言から、まず恨まれるような人間ではないと、
みな証言している。
どうやら、行きずりの犯行、無差別犯行の線が強いだろう!
だがそれにしては犯行は翔市一人だけで、さっと姿をくらましている。
この事を考えると無差別の可能性も薄い。
どうやら、既に現段階では捜査は行き詰っている・・・・ようだ!
犯行に使われたナイフからは指紋は見当たらない。
鑑識からの報告が・・・・
どうやら手袋をしての反抗らしい。
諮問をふき取った形跡も無いとの事!
そして、現状に残された犯人の遺留品は、現在もナイフ1本のみで、
犯人の足跡なのか確実ではないが、多くの足跡の中に混ざり、
血痕のついた靴の足跡が数箇所確認できる。
だが、あの人混みでそれが果たして犯人のものがあるのか・・・・
現在その辺を、鑑識が調査中であるとの情報が、
続報として刑事にあるも、逃走経路、犯人の目撃情報もあいまいだ。
余りにもスマートに犯行を行いあの混雑の中、
目撃者の特定も出来ない。
そう、倒れている場所に人垣があっという間に出来、
その後はあの秋葉原の無差別殺人の後だけに、
不用意にみんな近づかない。
もしも犯人が傍にいれば、自分の身が心配で、
逃げる方に気を取られていた人が多く、
犯人を見た人が少ない。
その少ない目撃談から、犯人像は漠然としていた。
身長は175前後、服は黒い服コート、黒いサングラス、その程度だ。
その姿を、少し離れた場所で、サングラス、コートを脱げば、
もう別人になってしまうだろう。
もう足取りなんて無理に近い状況だ。
唯一可能性の高いのは娘の証言だ。
しかし、あのようなショッキングな状況から、
直ぐに事情を聞くのは、無理だと言う事が、医者からきつく刑事に、
ストップが掛けられている。
See you later Nozomi Asami