第3章 いざディズニーランド
第3章 いざディズニーランド
翔市と紗枝の住所は秋田県、秋田県郊外の八橋であった。
秋田県の中では、比較的開けた場所だろう。
翔市の仕事の関係で、そこへ引っ越して間も無く妻は亡くなった。
と言っても、妻はどれ程自宅で朝食を摂っていたのか、疑問はあるが
何とも・・・幼い愛娘一人残して、無念が残った事だろう。
妻は仕事が忙しく世界中を駆け回っていた。
二人とも本当は東京に住みたかった。
がしかし、翔市の両親を面倒見る必要があった。
何故か、その両親も早々と病気で他界した。
先ず母親が脳梗塞で倒れ、その後を追うように父親も逝ってしまった。
とにかく、翔市の家族には何故か不幸が重なった。
そう、翔市の両親が他界して東京に住もうとしていた矢先に、
妻が不慮の事故で亡くなった。
それは東南アジアの飛行機会社だった。
突然エンジンが炎上・・・・それも1つを残してすべてだ。
パイロットは必死に1つ残ったエンジンで、不時着しようと試みたが、
結局インド洋の海に沈んだ。
が、その遺体はまだ家族に戻されていない。
勿論・・・何の遺留品も戻って来ていない、未だに!
それ故、娘紗枝にはまるで現実感が無い。
ママは遠い所に仕事に行って・・・・帰って来られない。
と、今でもずっと思っている。
そして、翔市であるパパが言う言葉を、
かたくなに信じている純な娘なのだ。
たまに友達などが、
“お前のママはもういない!”
“死んだんだ!”という奴がいても、耳を傾けない。
紗枝は信じている。
きっと帰って来ると・・・・
今までもそう言う事、すなわちママの不在が多いこと・・・
その様な事が何度もあったから余計だ。
「紗枝・・・! 準備出来た?」
「もう・・とっくに出来てます!」
「お父さんこそ・・・早くしないと・・・!」
「はい、これ・・新幹線の切符!」
「パパしっかりしてね!」
うん・・・・!?この言い回し、しゃべり・・・まるでママだ・・・
声も幾分・・・いや相当似て来た。
と、言うより・・・・そっくりだ!
翔市は後ろから聞こえて来た声に相当驚いた。
「うん・・・ううん分かった!」
「もう・・・どうしたの? パパ!」
「うん、何でも無いよ! さあ・・・行こうか!」
「もしかして・・・?」
「ママの声に・・似ていた?」
「ああ・・・そうだね・・少し!」
全く、紗枝・・・驚かさないで!
それにしても・・・・似ている!
「紗枝ね・・・・ママの声いつもパソコンで聞いているから・・・ね!」
「それで・・・真似したの?」
「そうよ! だってパパ可哀想でしょ!」
「ママ・・!いなくて・・・・」
「おい・・・それ・・・」
“こっちの台詞だろ!”と後の言葉を飲み込んだ。
もう・・・どこまで気持ちの優しい子なのだろう・・・・
これも・・・ママの、しつけ? それとも持って生まれた気持ちの優しさ・・・?
翔市、紗枝から目を背けて空を見上げて、こぼれる涙を何とか誤魔化した。
「さあ、行くぞ・・・紗枝! 乗って?」
「ねえ・・・パパお願いが・・・!」
「なんだい・・・紗枝?」
「助手席に座っていい・・・?」
「そうだな・・・いいよ!」
「わぁ・・・やった、嬉しい!」
今までは助手席はママ、そして後ろの席に紗枝は座っていたのだ。
これは、娘のパパへの想いか・・・それともパパへの甘えか、
はたまた紗枝がパパの気持ちを察してなのか・・・・
もしかすると、紗枝もうママがいないのを克服するための、
紗枝なりの決断か・・・
涙もろい翔市また目に・・・・・
新幹線乗り場で、手をつなぐ親子、
始発で東京へ向かうその姿・・・何とも微笑ましい!
紗枝にとってパパとこの様な、シチュエイション最高の幸せだろう・・・
うん・・・そうではない一人大事な人が足りない・・・ママだ!
しかしそんな素振り二人の後姿に、微塵も感じさせないオーラがある。
「わぁ新幹線だ!・・・紗枝うれしい・・・のパパ!」
「そうか、紗枝新幹線に乗るの、初めてか・・・?」
「うん! 友ちゃんは乗ったって・・・すぅごっくカッコイイって!」
「それにディズニーランドのお城の前のホテル泊まるんだよ!」
「わぁ本当・・・最高にうれしい! パパありがとう!」
そう行って紗枝背伸びしてパパに抱きついた。
「パパ、新幹線凄いね!」
「早いね・・・とても、ほら・・・」
そう言って景色を眺めて・・・とても嬉しそう・・・
「そうだね、本当に!」
「紗枝がこんなに嬉しそうな顔、見るの・・・パパ、始めてだよ!」
「パパは!? 嬉しくないの?」
「嬉しいよ・・・パパも!」
全く、あいつどうして・・・・・
まさかメール直し忘れているわけ無いよね!
貴瑛は、あれからもメールが送られて来るのが理解に苦しむ。
それに、娘の文面も一緒に残したメールで・・・・
何故か・・・・関心が、好奇心が湧いて来る。
それは貴瑛の止められない好奇心、冒険心が
思いもよらぬ行動を起こす事に・・・・
See you later Nozomi Asami