第16章 お宅が貴瑛の家へ
第16章 お宅が貴瑛の家へ
「あっ、お姉ネェちゃん、来た!」
「ママから!」
「そう・・・良かったわね!」
「貴瑛お姉ネェちゃんの言う通り、今ロンドンだって!」
「そう、でも紗枝ちゃん今何時・・・?」
「ええと・・・1時50分!!」
「紗枝ちゃん、そのメール読んだら・・・お休みしなさい!」
「はぁい!」
「後は、お姉ちゃんがパパの傍にいるから・・・」
「うん、紗枝・・・眠い!」
「そうでしょ、もう本当は寝ていないと駄目でしょ!」
「はい! あっ・・・ママみたい! 貴瑛お姉ネェちゃん!」
「えっ・・・でも大人はみんなそう言うでしょ!」
「そうだけど・・・何か似てるの! ママに・・・」
貴瑛その言葉に一瞬どきりとした。
編集中に何度か、翔市の言い回しを聞いていたせいなのか、それとも・・・
何故か自分でも、紗枝のママに近づいて行く様な錯覚が・・・・それって・・・
紗枝ちゃん寝るといっても、翔市はICU病棟から、
症状の落ち着いた患者として扱われ、
もう少し管理のゆるい部屋に移されている。
今翔市は、植物状態になっていても移された病室は、
ライフラインがかなり外れ、規制もゆるい。
それなので紗枝は、特別に翔市のベッドに添い寝する様に寝ている。
その姿を微笑ましそうに見つめる貴瑛。
こんな幼い娘に、これからの幾多の試練にどう立ち向かえば・・・・
紗枝、知る由も無い。
やっぱり・・・この私が何とかしないと・・・・
でも、どうやってこの娘に現実を知らせる、それもママの事そして、
翔市の現状をどの様に理解させるのか・・・
それを誰が・・・・?
それは、私しかいないだろう。
この現実を詳細に知るのは・・・・、
そして紗枝の心を掴んでいるのは・・・・私 貴瑛しか・・・
そんな事を考えていると、病室にノックが!
“うん・・誰?・・・今頃?”
「はい!?」
「あっ・・・スイマセン科捜研の横溝です!」
「はい・・!!」
「夜分にスイマセン! 今どうしても確認しておきたい事が?」
「はい、では・・どうぞ!」
横溝は自分のノートPCを、脇に抱え済まなそうに立っていた。
「実は、このメールなんですけど・・・!」
そう言いながら半開きのノートPCを開き、
メールの送受信記録を貴瑛に見せた。
「どれ・・ですか? あっ・・・これ??」
貴瑛はメールの細かい流れを、3桁の数字が区切られて3つ並ぶ、
画面を追う。そして気づいた、
「ハッキング?」
「そうです! 貴方と、翔市さんとの間に・・・」
「では・・・これを追えば・・・・」
「はい、追いました!」
「でももう姿形は、跡形も無いです!」
「さすがですね・・・相手も!」
「貴瑛さん、相手に感心してどうするんです!」
「はぁ・・・そうですが・・・でも相手も相当ですね!」
「はい、それは認めます!」
「でも・・・これを追えれば・・・犯人に・・・」
「それで、相談なんですか・・・」
「そうですか、私の家のPCも一緒に照合すれば・・・」
「少しは追跡が・・・・可能性が生まれる、・・・ですね?」
「はい! それで一刻も早く、と思いまして!」
「・・・・こんな夜分に!」
「あら・・・もう夜分ではなく早朝でしょう・・・!」
「あっ、はいそうなりますね、今午前4時05分ですから・・・」
「わかりました、では行きましょう!」
「はい、お願いします!」
「では、看護師さんに話してきます!」
そう言って、この場・・・病室を離れた。
病院の玄関に向かう、そこには制服警官が2名立っていた。
まだ、警戒は続いている。大友警部の命令で暫く続けるとの事だ。
外に出ると太陽が昇り初めて、明るい光が貴瑛の目に眩しさが・・・
どうやら、この横溝も同じで寝ていないのだろう。
「どうぞ!」と言われ、横溝のマイカーのドアを開けてもらい、
助手席に乗り込んだ。
何と、その車・・・ベンツのツーシーターのスポーツカーだ。
やはり、坊ちゃんなのだろう。
しゃべり方、身なりで想像はしていたが・・・
「貴方、こんな車で良いの?」
「えっ・・・どう言う事ですか?」
「この車、貴方の給料じゃ無理でしょう!」
「はい! でも学生時代から乗っていますので・・・」
「そう・・・でも周りが・・・うるさく無いの?」
「そんなの、気にしませんから・・・僕は!」
「そう、貴方意外とマイペースなのね!」
「よく・・言われます!」
「で、どちらへ向かえば・・・・」
「春日通りに入って!」
「はい!」
暫く無言で二人は前方を見る!
意外と、この横溝必要以外の話はしないのか・・・
貴瑛少しずつ眠気が・・・・・
「あの・・・今・・・茗荷谷ですが・・・?」
「・・・・・・」
「あの・・・すいません・・・」
「あっ・・・ごめんなさい、つい!」
「あっ・・・そこ右!」
「はい!」
「左!」
どうやらナビに、住所入れたくないらしい。
そして、横溝もあえて聞かない!
そして、高層ビルの駐車場に車は入って行った。
See you later Nozomi Asami




