表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

2話

「ごほん。ご苦労。よくやってくれたわ。ありがとう。

まあ、とりあえずこれでも着なさい」


女装少年が、どこからかドレスを出して俺に差し出す。

見た限り、少年と俺の背格好は変わらない。170センチくらいだろう。

ドレスもおそらくぴったりのサイズだ。

変態度がアップしそうだった。


「あの、男性用の、いえ、倒れている方々みたいな服ってないんですか? 」


「ないわ。ドレスが嫌なら、その辺の転がっている奴らから剥いたら?」


さて、どれがマシだろう。ドレスと誰かの血がついた服。あと、見るからに盗賊の汚らしい服。

断腸の思いでドレスを受け取った。




「お礼をしたいのだけど、手持ちが少ないから、後で渡すわね」


「はい、お気遣いなく」


女装少年は、じっと俺を見つめた後、口を小さく動かした。


「演技ではなさそうね」


「演技?」


どうやら俺の耳はすごい地獄耳みたいだ。

鈍感系主人公みたいには聞き漏らさない。

いや、男を攻略対象(ヒロイン)にする気は全くないけど。

俺が聞き返したことは無視して、少年は話を続ける。


「ねえ、あなたは何者? 」


「俺も知りたいですよ」


自分が何なのか。ゴキリンが何なのかとか、俺は一体どうしたのか、色々。


「訳ありのようね。

詳しく話してみない?

力になれるかもしれないわよ」


何にしても、誰かの助けが必要だろう。自分では食べ物すら用意できそうにない。

常識もわからない。

少し考えて、自分に起きたことを彼に話して聞かせた。




「そう、そういうこと。

それなら、あなたの力になれるわ。

あなたに起きたことは融合と呼ばれる現象よ。

融合の専門家がいる場所は知っているから、一緒に来る?

偶然だけど、私の目的地もその専門家がいる大学だから」


話が上手く行き過ぎているような気もするが、ほかに案はない。

彼についていく以外の方法はないだろう。


「お願いします」


「こちらこそよろしく。

そういえば、自己紹介がまだだったわね。

私はラン。あなたは? 」


偽名、だろうか。この世界の名付け方が分からないから、女の名前と男の名前の違いがわからない。


「俺はタロウです」


「よろしくね」


「ところで、ランさん。あなたが襲われていた理由とか教えてもらえますか?」


場合によってはこの人と一緒にいない方がいいかもしれない。

てか、できればチェンジでお願いしたい。

オカマとか、そういう問題じゃなくて、この人を守っていたであろう人たちが死んでも、顔色ひとつ変えていない。

旅の同行者にするには、ちょっと怖い。


「そうね。

まずはこの周りの人たちが何なのかを話すべきかしら。

私を怖がっているみたいだし」


「ははは」


心を読むのか、このオカマ。


「ここに倒れている人たちは、みんな私の敵よ。

私を守っていたのは私を監視することが目的。

私を襲ってきたのは命を奪うことが目的。

どちらにしても私の味方ではないわ」


なんだか面倒な背景を持ったオカマらしい。


「私はこの国の第1王子。一応、国家元首の継承権第1位よ」


ほう、この国はダメかもしれないね。この少年の代で終わりそうだ。


「なるほど、では権力闘争か何かですか?」


これは関わらない方が良さそうだな。

専門家とやらの場所だけ聞き出して逃げるか。


「そうよ。そして、そこの兵士達は宦官、意味はわかるかしら」


「ああ」


酷い世界だ。人を去勢するような文化レベルか。

これは絶対に、こいつとはさっさと離れるべきだな。


「へえ、博識なのね。

この宦官達は私の母が、私が呪いを解くのを邪魔するためにつけたの」


「呪い?」


「あなたは私を不気味に思っているみたいだけど、私は女よ。

呪いによって、男に変えられただけ」


本当の話だろうか。そもそも呪いっていうのがあるのかないのかもわからない。

そうだ、そういえば俺の持っているスキルの中に、鑑定ってあったな。

鑑定と念じてみると、女装少年のステータスが現れた。


+++++++++++++++++++++++

名前/ ランダート・グランド・シルフォード

種族/ 人間

性別/ ♂(呪い)

ユニークスキル

・王族の威光

・王族の加護

スキル

・生活全般スキルセット

・王政執行スキルセット

・魔法スキルセット

+++++++++++++++++++++++


まあ、王族であることと呪われていることはわかった。


「誰に呪われたんですか」


「母よ。母は側室だから、私が女だと困るのよ。女性に継承権はないから」


筋は通っているか。


「いつ呪われたんですか」


「生まれてすぐよ。

それにしても、信じてくれるとは思わなかったわ」


「呪いをかけられていることは信じますよ」


どういう呪いなのかはわからないけどね。


「あら、優秀な鑑定を持っているのね。

普通の鑑定なら、呪いは読み取れないはずだもの」


呪いが読み取れる鑑定は珍しいのか。注意しないとな。

それにしても、オカマ、いや、ランの言っているが本当なら、追っ手とか来るかもしれない。

どうしようかな。

見捨てると後味が悪そうだし。

ランの探りには答えず、質問してみる。


「ラン様の目的は、呪いを解くことですか?」


「ええ。王都の私立大学にいる、解呪の権威と会おうと思っているの」


「それでは、行きましょうか」


やばくなったら逃げ出そう。


「ああそういえば、完璧に忘れてたけど、この呪いのことを知った人っていなくなっちゃうのよね。

母が手を回しているんだと思うけど」


「俺は知られてないからセーフでしょう」


「ああ、なんてことでしょう。

この盗聴のペンダントを潰すのを忘れていたわ。

幸い、少し前くらいの話しか聞こえていないだろうけど、あなたが呪いについて知ったことが、母に知られてしまったわね。ごめんなさい」


このオカマ、最悪だ。

オカマはつけていたペンダントを見せびらかした。

ペンダントな鑑定をかけると、盗聴機能があり、おそらくはオカマの母親に俺のことを知られてしまっただろう。

しょうがない。

とりあえずこいつと大学に向かうのは変わらない。


「ところで、王族って馬車に乗っているイメージですけど、ここへは歩いて来たんですか」


「当然でしょ。馬より私の方が速いんだから」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ