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10話

「それでランちゃん。

さっそく決着をつけにいくの?」


「こんな所で話さないで。

別の貸し部屋に向かっているから、そこで話しましょう」



ランに連れられ、石でできた一軒家に来た。


「入りましょう」


ランが促し、ドアを開けると、異常にドアと壁が分厚い。


「なんで、さっきの部屋では話さないかったんだい?」


高橋がランに聞く。


「さっきの部屋よりも、もっと機密性の高い部屋なの、ここ」


まあ、外からはわからないが、壁の分厚さはかなりのものだ。

しかも、意味がありそうな魔法陣が、所狭しと壁に刻まれている。


「それでは、色々聞かせていただけますか」


あたりを見回した後、話を切り出す。


「早速お母さんに会いに行くの?」


高橋が聞く。


「ええ。

今なら奇襲できるはずだから。

母は私が王都に来ていることを、まだ知らないもの」


やはり襲うつもりか。


「それじゃあ、ランちゃんのお母さんについて聞かせてくれる?」


高橋が漠然と質問する。


「聞かせて、と言われても困るわ。

具体的に何が聞きたいの?」


「護衛とかは、いないんですか?」


大事なことだと思うし、聞いてみる。


「護衛?

当然いるわ。

王の側室で、第1王子の母よ。

利用価値はいくらでもあるわ」


「護衛って、どれくらいいる?」


しばらくランは上を向いていた。


「屋敷には、だいたい100人くらい、いるのかしら。

でも、母は部屋の中に1人しか入れないの。

本当に問題なのは、その1人だけ」


「その1人について詳しく教えてください」


どうやってその部屋まで行くんだよ。

そうは思いながらも話を進める。


「その護衛はエルフなの。

正直、彼女を出し抜くことは難しいわ。

たぶん、私1人なら、確実に無理ね」


「それで、そのエルフの具体的な能力はわかりますか?」


「わからないわ。

だって、移動すら見えないんですもの」


こいつ、どうやって1人で戦うつもりだったんだ。

黙ってランを見ていたら、高橋が声を上げた。


「せめてユニークスキルは、わからないの?」


「私の『鑑定』はスキルよ。

そこまで詳しくはわからないわ」


「そのまえに、ユニークスキルとスキルの違いを教えてもらえませんか?」


俺が持っている、『鑑定』の能力もよくわからない。


「いいよ、無知な君に教えてあげる」


高橋が笑顔で言ってきた。

こいつ、人に教えるのが好きなんだな。

男と融合していたときは、ムカついたが、今は可愛らしく思える。

見た目のいい女って得だ。


「いや、お前には聞いていない」


まあ俺の場合、男の本能より、負けず嫌いな気質の方が強い。

ドヤ顔で説明されるのは嫌だ。


「何でだ⁉︎」


「もし時間がないなら、別にいいですけど」


高橋を無視してランに話しかける、


「本当に君は失礼な奴だね」


「いえ、知らないなら、知っていた方がいいわ。

下手をすれば生死すら分ける、大事な知識だから。

幸い、今すぐ動かないといけないわけじゃないわ」



ランも高橋を無視して説明してくれた。


ランが語ったユニークスキルとスキルの違いは、シンプルだった。


ユニークスキルは、才能。

スキルは努力。


つまり、ユニークスキルは資質によって得た能力を、言葉にしたもの。

スキルは、誰であれ、何であれ、条件さえ満たせば手に入れられる、世界の祝福だそうだ。


ユニークスキルの方は、同じ名前でも持っている者によって、効果が違う。

しかし、スキルは同じ名前の能力なら、同じ効果を発揮できる。


そして、大事な違いとして、スキルはあげたり、貰ったりすることができる。

そして、奪取系のユニークスキルで奪われることもある。

ユニークスキルは奪えないし、奪われない。


「いい?

なんであれ、敵対した相手には必ず『鑑定』をかけること。

これは徹底しておきなさい」


「まあ、スキルの『鑑定』では、ユニークスキルは読み取れないけどね」


「彼が持っている『鑑定』はユニークスキルでしょう。

私の呪いを読み取れたくらいだから、かなり役に立つはずよ」


説明を終えて、ランが息を吐く。


「わざわざここに貴方達を連れて着たのは、最後の確認のためよ。

護衛に関してすら、大した情報を持っていないわ。

失敗してもしなくても、王配殺しとして、追われるかもしれない。

それでも私に協力してくれるの?」


たしかにそうだ。

わざわざ危険な橋を渡らなくても、情報は集められるかもしれない。


「大丈夫だよ。

僕は元の世界に帰る。

この世界でお尋ねものになろうと問題ないさ」


こいつは腹が据わっている。

高橋がここまでカッコつけたのに、俺が引くのもな。

そんな熱さは持ち合わせていないが、異世界の情報を集めるのに、自力ではどれだけ時間がかかるかわからない。

それなら、ランの選択を記録した方が早い。


「俺も同じです。

あなたに協力したほうが得をします。

それだけですよ」


ランは少し目を閉じた。


「ありがとう。

さて、時間をかけない方が襲撃しやすいわ。

行きましょう」


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