藍と昴
漠然と、自分は夢の中にいるのだと理解した。体がふよふよしていて、景色もぼんやりしている。昴は野を走っていた。
綺麗な空が続いていて、それが空気が透明になる秋の空だということに気が付いた。けれど地は青々としていて、夏の香りがする。さすが夢だ、と笑って、昴は唐突に足を止めた。
強い風になびく草原の真ん中に、一人の少女が立っていた。長く美しい髪が揺れ、時々光の当たる角度が変わると、青みを帯びて、それがことさら胸にせまった。純白の小袖と裳を着ている。どこかの巫女だろうか。
少し興味を覚えて――正確にはなぜか惹かれて、昴は近寄った。だがその足もふと止まる。
昴に気付いたのか、振り返り、精悍な顔付きでこちらを見つめる。
途端昴は、とんでもないことに気が付いた。動きたいのに、言葉を発したいのに、それが出来ない。畏れという見えない大きな手にがっちりと掴まれて、それは身体を動かすことを許してくれなかった。
そんな昴を見て少女は、ふわりと笑んだ。その表情は優雅というより、凛々しかった。一つの絵のように美しく、自分が誰であるかを忘れさせるくらいの心地良い空気。彼女は何かを言うベく口を開いた――。
「待っていたよ。会うのは二度目だね。『昴』」
名を呼ばれ、昴は息をのんだ。やはりそうだ。彼女はーー。
「あなたの思っている通り。わたしは月影……いや、あなたの世では月の神子と呼ばれているのだっかな?」
藍と同じ、日に当たると青みを帯びる髪。秋の空に夏の香りを放つこの世界で、その髪は美しく輝いていた。そして凛とした眼差しがもつ美しさといったら。瞳が合ったその瞬間に感じる、魂が囚われてしまったかのような、閑麗な空気。彼女はまさしく月の神子であった。
「それにしても、随分来るのが遅かったね」
しかし、その雰囲気に似合わず、彼女は飄々と言葉をかける。
「あなたのことだから、もっと早くに『私』に会いに来るかと思っていたのに」
それだけ、君の魂は彼女にしか向いていなかったのだろうねーーと、呟く。
「ねえ、座らない?」
月の神子はにっこりと微笑んだ。ふと気づくと、昴と月の神子の元には、若い一本の木があり、頭上には青々とした木の葉が風に靡き、木漏れ日を作り出していた。
ちょっと昔話に付き合ってよーーと言いながら、神子は木の根元に腰掛ける。その様子を見て、昴も近くに腰かけた。
「ありがとう。人としゃべるのは久しぶりだから、嬉しいんだ。」
嬉しそうな笑顔に、昴の知る、愛おしい笑顔が被った。
「私と『彼女』はそんなに似ているかな?」
昴は驚いて神子を見つめた。
「心が詠めるのですか?」
「顔に書いてあるよ。『藍に会いたい』って」
口元をおさえて、クスクスと笑う様子も、そっくりだった。やはり藍は、この女性の生まれ変わりなのだと、ぼんやりと思う。
だが似ていても、目の前の彼女は藍ではない。それが理解できるから、昴の心は凍りついたまま、何も揺れ動かなかった。
「あなたたちは、会えたんだものね」
自分のことのように嬉しそうに、しかし寂しそうに、月の神子は言う。
「私も『彼』もね、三千年の間、ただひたすら待ち続けたんだ」
月の神子は視線を落とした。
「彼は自分の使命を果たした。彼の望みを叶える条件は整っていた。けれど私は鬼神を滅するという使命を果たせず……失敗してしまってね……世界より彼を選んでしまった」
その時の記憶を思い出しているのか、神子は遠くを見つめながらかたい表情のまま言うのを、昴は黙って聞いていた。
「その結果、私に課せられた罰であり、償いであるのが、人の世の守り神となることだった。人の営みを見守ることで、私の罪が少しでも償えるのなら、それはそれで良かったのだけれど、元が人間の私にとっては、魂の消耗が激しくてね……自分の責だとはいえ、苦しかったよ」
それなのに、彼はーーと、月の神子は続ける。
「自分の使命は果たしたのに、私に付き合ってくれたんだ。三千年なんていう莫迦みたいに長い時の流れを、私と同じ存在となって、見守り続けてくれた。月影と対の日影の存在があったからこそ、世界は均衡を保てていた。私が唯一であれば、世界は夜叉に滅ぼされていたか、天神らによって、無に返されていたかもしれない……彼は……本当に、私を愛してくれている」
目を閉じて微笑む月の神子が思い浮かべるのは、きっと日の神子なのだろう。昴は彼女の言葉を待つ。
「私たちがまだ只人で、月華と日華を握ることを使命と課せられたときから、私は彼を愛していた。彼も愛してくれていた。だから私が使命を全うできなかったことの責は、私と彼の永い別れ以外にあり得なかった」
「……日の神子と月の神子という同じ存在で、対の存在でありながら、会うことは叶わない……ということですか?」
「そう。人神として生きていた頃は、私が高原を、彼が葦原を治めた。肉体が滅んだ後は、守護の神として碧の国を私が預かり、彼は紅の国を預かった。その間、彼も私も、互いが世界に『在る』ことは知っていたけれど、感じることはできなかった……。守護の神として、私達の魂は人々の信仰の対象を受け、願いを受け、祈りを聞き、それに応えるうちに憔悴していった。輪廻の輪にも戻れず、ただただ世界のために存在し続ける……天神は私にぴったりの償いを用意したんだよ」
神子は続ける。
「だが、その役目も三千世界の一回りを迎え、ようやく終わりを告げた。永い時を経て、私は再び、使命を全うする機会を得た。私の魂に寄り添い、自ら望んで私と同じ役回りを得た彼と、時をほとんど同じくして輪廻の輪に戻った。私たちが消えると世界は荒れたが、それは鬼神を滅ぼすための、始まりでもあった。天神は現世には手出しができない。私は人として、鬼神を滅ぼす必要があったから、『藍』として生まれ変わり、鬼神を倒す『人』として、あの地に降り立った。……降り立ったはずだった」
月の神子は、昴を見つめ、笑った。
「ところがね、私の中に残っていた『人』としての部分は、輪廻の輪に戻ったみたいなんだけれど、私のほとんどは、この空間に残ってしまったんだ」
おそらく長すぎたんだ、と神子は言う。
「三千年という永い時間を経て、私は本当に神になってしまったらしい。私の人としての部分をもって生まれた『藍』の中に、私の魂は欠片も入っていなかった。器は似ていても、彼女は月影でもなく、月の神子の再来でもなく、間違いなく『藍』でしかないんだよ。だから私は、彼女の夢幻で、彼女に会ったことがない」
昴を通してしか私は藍を知らないんだ、と神子は笑う。
昴はその言葉に疑問を覚えた。
「……俺が夢であなたに会うのは、あなたの魂が俺の中にあるからですか?」
「……笑っちゃうでしょ」
神子は微笑む。
「私の魂は生まれ変わるはずの『私』ではなく、生まれ変わった『あなた』を守護していた。そしておそらく、彼も『あなた』ではなく、『彼女』を……」
昴は言葉をなくした。
想い合う二人は、人として生きた時間、神として祀られた三千年という時間、そして生まれ変わってもなお、互いのことだけを想い続けたのだ。人としての魂を本来の肉体から切り離すことになってまでーー。
言葉が出ない昴を見て、月の神子はふふっと、笑う。
「何を驚いているんだい?あなたも彼女も同じことをしているでしょうに。あなたは己の命を投げ打って鬼神を滅ぼし、彼女は己の魂を永遠に無とすることを選んでまで、あなたを生かした。生まれ変わっても、やっていることはほとんど変わらないんだから、おかしいよね」
昴は視線を落とした。
「では、藍もあなたと同じように……いや、あなた以上の時間を、あの空間で過ごさなければならないのですか?」
それが藍に課せられた償いならばーー、と昴は唇を噛む。
「あまりに惨い。あの虚無の空間に捕らわれたのは、元々俺だ。鬼神の誘惑に負けて、捕らわれのは、俺の意志の弱さが原因だった。なのに、俺は……現世でのうのうと生きている」
鬼神に引きずられて落ちたあの空間。深い深い闇の中、己以外の気配も何も感じられない本物の孤独の中、昴を包んだのは、求め続け、望み続けた存在そのものだった。頰に落ちた滴も、彼女からの言葉も、今にも思い出せる。
黙り込んだ昴をじっと見つめていた神子だったが、やがておもむろに口を開く。
「私と違い、彼女が償うものなど、何もないよ」
弾かれたように、昴は顔をあげた。神子はそんな昴を優しげに見つめる。
「確かにね、彼女はまたしても、世界より『あなた』を選んだ。『あなた』を殺すことはできないとふんだ、鬼神のたくらみは、当たったわけだ。けれど、『彼女』は結果として、鬼神を滅ぼしたんだよ。その事実はきちんとある。月華も消えたはずだ。ーーねえ、昴。あなたは何のために、生まれ変わったの?」
「俺ーー?」
昴は神子を見返した。その瞳は、愛おしそうに昴を見ていた。
「日影は使命を果たした。それでも、己の願いを叶えず、月影に想いを寄り添わせ、月影と同じ役目を担い、月影と同じときをして人に生まれ変わった。つまりそれはーー」
唐突に、昴は理解した。まるで閉ざされていた世界が、今この瞬間に開かれたかのようだった。それと同時に、どこか心にひっかかっていたものが、解けほぐされるのを感じた。
「そうかーー」
胸を占めるのは、喜び。
「俺はーー」
ーー藍のために生まれてきたのだ。
使命を果たしたという日の神子が生まれ変わる必要はない。それでも、月の神子と同じ役目を担った藍と同じ時代に生まれ、彼女と出会い、生きたのは、昴が藍のために生まれてきたからだったのだ。藍が役目を果たすため、藍が生きるため、藍が幸せになれるようにするために、昴は生まれて来たーー。
あの時ーー、鬼神が昴の中に入り込み、藍が世界ではなく、昴を選んだあのときーー三千年前と同じ悲劇を繰り返さないため、藍に己ごと鬼神を殺させた『昴』は、必然だった。日の神子が、月の神子を守るためーーいや。昴が藍を解き放つために、昴はこの世に生を受けた。
最初から、藍だけのために、昴は生きてきたのだ。世界も神も関係ない。昴の世界は、藍だったーー。
「さあ、『昴』。時間が来たようだね」
神子はゆっくりと立ち上がった。その姿はやはり、どこまでも優雅で、どこまでも凛々しい。
「彼女はーー、私はようやく、鬼神を滅するという使命を果たした。藍を想う昴の気持ちがあったから、彼女は役目を全うした。そして彼女は願いを叶えるため、彼女の色の勾玉を使い、あなたを魂の『無』と肉体の『死』から引っ張り出した」
何をすべきか、昴には分かっていた。神子に合わせて、昴も立ち上がる。神子は微笑んだ。
「日影は勾玉を使わなかった。そして今はーー、あなたのものだ」
胸元にある紅玉の勾玉を、昴は握りしめ、大きく頷いた。そんな昴をじっと見つめていた神子だが、やがて昴の頭に手を伸ばすと、くしゃくしゃと乱雑に髪をはらった。
「藍のために、生まれて来てくれてありがとう」
あなたを見ていたら、と神子は笑う。その笑顔に、昴は釘付けになった。
「藍を思う昴を見ていたら、私も和津に会いたくなっちゃった」
恋する乙女のように、心から笑う目の前の人物に、もはや厳かな雰囲気も、凛とした張り詰めた空気もない。あるのは、心からの喜びと、これからの幸せを噛みしめる少女だった。
「闇の中の灯は
木々の宝を胸に秘め
風の音色を聴かずとも
秋と夢を供にする」
神子は嬉しそうに諳んじた。
「彼がね、先に行って待ってるの」
ーー深い闇の中にあっても、消えることのないこの想いは。
「ずっと、ずーっと待ち続けたから」
ーー永い時を経ても、決して忘れることなく、あせることなく。
「ありがとう」
ーー傍にいなくても、声を聞くことができなくても。
「昴、藍。大好きよ!」
ーーあなたと供に。
ほうーー、と息を吐いた。空っぽの器に、少しずつ清水が注がれていくような、そんな感覚。霞みがかっていた頭の中が少しずつ晴れていき、身体中に命が吹き込まれる。瞼を通して世界が徐々に明るみを増していくーー。
藍はゆっくりと目をあけた。
視界の焦点が合わない。ここがどこかの室内だということだけは、なんとなく認識できた。仕方なく、体を起こそうとしてみるが、身体の中が深海にあったかのように冷えており、起こすという感覚がまだ戻ってこない。困ったなーー、とぼんやりと思う。
「ーー?」
ふいに、耳に音が入った気がして、藍は驚いた。音を拾ったのが、随分昔のことだったように思えたからだ。感覚を使うこと自体、久方ぶりのようなーー。
そう思うと、今度は身体が生き返るような気がしてならなかった。心の臓が鼓動を奏で、柔らかい、花の香りが鼻先をかすめる。血が身体中を駆け巡り、息を吸って胸がふくらむ。そしてーー、右手に感じる、柔らかなぬくもり。
ーーあたたかい……。
自然と、頰が緩む。まだ霞む視界を、そちらの方に向けた。
「藍!」
懐かしい声だった。愛おしい気配だった。返事をしようと思ってゆっくり息を吸い、声を出したーーつもりだったが、口から漏れ出たのは、細い吐息だけだった。
徐々に視界がはっきりし出す。目の前の人物の輪郭が理解できたとき、藍はようやく、己の側に寄り添っている人物が誰であるかを認めた。
男はーー昴は、藍の手を握りしめたまま、藍に視界を合わせた。
「藍ーー、俺だ。分かるか?」
なぜ、そんな当たり前のことを聞くのだろうーーと、藍は不思議に思った。愛しくて愛しくてたまらない人のことが、分からないはずないのに。
返事の代わりに、藍は握りしめられている手に力を入れた。気管を通る空気の量が細くて、まだ声が出なかったけれど、彼の言葉になんとか答えたかった。
握り返されたその手を、昴はハッと見た。そしてもう一度、藍を見つめた。
それは、ふいに起こった。
冷たい己の身体に、そのぬくもりはひどく安心できるものだった。抱きしめられ、彼に触れている箇所全てから、彼の体温を分けてもらっているようで。まだ力が入らない自分の身体なのに、彼との距離に一部の隙もないのは、腰と背に回された腕が、藍をがっちりと捉えて離さないからだった。
藍の寝台に乗りあがり、藍を強く抱きしめた昴は、何も言葉を発しなかった。視界が開け、少しずつ身体に自由が戻り始めた藍は、やがて、その事実に気づく。
「昴ーー」
掠れるような声が、ようやく喉元から出る。
「ーー泣いてるの?」
ギュッと、抱きしめる力が増した。捉えて離さないとでもいうように、藍をかき抱く。ますます昴の震えが藍に伝わるが、まるで心と心が繋がっているかのように、魂が一つであるかのように、藍の瞳にも、うっすらと膜が張り始める。
両腕に力を入れると、思いの外すんなりと動いた。その腕を昴の背にまわし、自ら彼に擦り寄る。彼のぬくもりをまた深く感じ、瞳から雫が一筋流れた。
「昴」
「ーーなんだ」
「顔、見せて」
ぴくり、と昴は反応する。イヤだ、というように、昴は藍の頰へ自分の頰をぴたりと寄せた。甘えるようなその仕草に、藍はふふっ、と笑う。
「ねえ、お願いーー」
間があって、やがて昴は観念したように、ゆっくりと身体を離すと、視線を合わせた。
そこにあったのは、藍の大好きな、透けるような茶の瞳だった。あの血のような赤はない。少しだけ膜を張ったその瞳がますます綺麗に見えて、藍は思わず微笑んだ。歓喜が、心から湧き上がる。自分の瞳から、ポロポロと流れる涙にも気付かず、藍は昴に微笑み続けた。
そんな藍をじっと見ていた昴は、やがて苦笑すると、愛おしそうに、優しく藍の頰に触れた。そのまま涙を拭う。
「泣いているのは、藍じゃないか」
拭っても、拭っても、ポロポロと流れ続ける涙を、昴は何度も拭った。その度に、昴が藍を大事に想う気持ちが伝わってきて、藍はますます涙を流す。
「だって、止まらないーー」
ひっく、としゃくりあげ始めた藍を、昴は再び腕に抱く。
「心がね、ずっと叫んでた。昴に会いたいってーー」
抱く腕の力が強まる。
「昴が好き。大好き」
「ーーっ!」
「ねえ、昴、私はあなたをーー」
言葉を紡ぐことができなかった。
想いの深さを思わせるような口付けは、藍に言葉を、呼吸を許さなかった。腰を引き寄せ、後頭部に手をまわし、離さない。逃げることを許さないとでもいうように、唇を喰み、角度を変え、昴は何度も藍に口付けた。荒々しいまでのそれは、身体に、魂に刻みつけるかのような、獰猛なまでの『生』であった。
藍と昴が、互いの存在の最期に感じたのは、命の炎が燃え尽きようとする瞬間だった。その強烈なまでの、恐怖すら抱かせる印象が、二人の間にあった最期の感覚であり、記憶であった。その感覚が、記憶が、凄まじい勢いで塗り替えられて行く。
生きていることのーー、輝かんばかりの命を感じることが、どれだけの喜びであるのか、藍は生まれて初めて知ったのだ。
やがて、湧き上がる歓喜の次に藍に訪れたのは、息をしたいーー、という、当たり前の感覚だった。昴の肩を何度か叩き、強く押したところで、昴はやっと、藍から離れた。かわりに、藍を寝台に押し倒し、先ほどと同じように強く藍を抱きしめる。
「はっーーっ……」
ドクドクと打つ胸、こぼれる吐息、感じる熱。全てが命を感じさせる。同時に、溢れんばかりの愛しさと、切なさで、藍の瞳からまたもや雫が流れ落ちた。
藍の肩口に顔をうずめていた昴は、それを感じ取ったのか、再び顔をあげると、藍を見つめた。鼻先が触れんばかりのその距離で、昴は藍の頰を撫で、額をこつりと合わせると、深く息をはいた。
「愛している」
会えた喜び、感じる存在、互いの生ーー、それらが猛烈な勢いで、藍の中を駆け巡った。視線をそらさず、藍は昴と見つめ合う。
「愛しているんだ、藍。お前しかいらない。藍がいれば何もいらない。俺はお前がーー」
ーー藍がほしい。
ああ、と藍は思う。
きっとこれは、終焉だ。今この瞬間に、克羅藍の魂も心も、誰よりも愛おしい、世界の全てである目の前の男に、奪われたのだ。神も輪廻も、勾玉も関係ない。『昴』という魂によって。
そしてーー。
「昴」
昴の両頬に手を伸ばす。
「……愛してる」
この口付けとともに、藍の生命は、始まるのだ。
昴と藍が生きる、唯一無二の、この果てしない世界で。




