序章「始まりへと続く回想」
始めましての方もお久しぶりですの方もこんにちは!
深海です!
少し毛色の変わったものが出てきたように思えますが、あまり変わりません!
コンセプトは!
よろしくお願いいたします。
―――時間を同じにしたかの子らは、転じた体を見つめる定めを受ける。
真なる変異。
これは物語に繋がる物語。
『竜の詩人(語り部)』
―――この戦いに、絶望も希望もない・・・。そして俺には、瞬間しかない―――
薄汚れた金属製の灰色の通路に炸裂音が響く。
反響の具合からしても高い天井に幅も広いので、まさかすれ違いざまに相手とぶつかるなどと思う者などいないほどに大きな通路。
ただし、この通路はそんな常識を覆すようなモノ達の行きかう場だった。
「・・・日高少佐、現在第一前線付近で敵増援が確認され―――・・・至急・・・。」
ノイズ交じりの音声が無線より発せられ続けている。
大体2~3分前からだろうか?
そんな事は分かっていると何度も胸中で舌打ちした。
分かっているんだ、と。
大型のショットガンのような武器を手にしたその男はイラつくことすらなくただ、通路の向こうからのそのそと歩いてくるそれに狙いを定めた。
日に焼けた黒の直毛は短髪。
ガチガチではないが逞しい筋肉に被われた体。
鋭い眼光。
日高少佐と呼ばれた男は全神経を集中させるように方に腕に力を込める。
すると、武器の先端部にほのかな光がともる。
ぶよぶよとして、人の形はあるが表面にはくぼみがちょうど顔のあたりにある飲みの暗い灰色のそいつはこちらに向かって大して早くもない足取りで近づいてくる。
来た!
そのくぼみのある頭のように見える部分に弾丸を叩き込むとその部分がはじけ飛び火花の粒子へと変わり舞い散る。
実際急所など分からないからいつも着弾点は違う。
ただ20代半ばではないかと思われるこの男、どう見ても鍛えられてはいるが体格は基本的に大柄なわけでも筋骨隆々というわけでもない。
いたって標準的な体格をしているのだ。
到底こんな大砲のような威力の大型銃器を単体で扱えるような人物には見えない。
しかし、さらに1体。
また1体と敵を撃破していく。
だが、次から次へと現れる敵に若干の効率の悪さを覚えたのか1度後方の友軍エリアへ戻ろうかと背後をふさいでいた敵に、さらに一発ぶち込む。
だが・・・・。
「・・・こいつ、新型の『変異体』なのか?」
通路の向こうから響く金属的な足音はこれまでの相手とは違うサソリの様な下半身。
上半身はカニの足か何かをつけた銃身のない砲台を思わせた。
色はやはり今までの敵と同じ暗い灰色のようだが・・・。
これは1度戻ったほうがいい。
気づかれる前に。
思うや否やすばやく背後に下がると、すぐさまエレベータの巨大な扉の前に立ちボタンをたたく。
”人類側”のもの意外は反応しないこの仕組み。
よくも敵地に設置できたものだと考えつつ開く扉の中から別のものが出てくる。
一瞬息を呑み動きを止めて見上げたそれは、今しがた目撃した新型そっくりの異形である。
ただし、色は白だ。
人類側が”相手”を真似て製造したのだ。
それはゆっくり出て行く。
入れ違いにエレベータに乗り込むと、すぐさま大きな金属音とともに扉が閉じる。
「あの新型が既に製造されていると言う事は、出現前例があると言う事か・・・。」
胸糞悪い!
当り散らす事も出来ず内心で悪態をつく。
連絡網の麻痺か?
または故意、か?
どちらにせよ嫌なものだった。
後者なら確実にお上の圧力だ。
人類滅亡の危機だというのに、よくこんな馬鹿な事を考えられるものだと舌打ちする。
ただでさえ・・・。
「・・・いたちごっこだな」
いつも思っている事だ。
全部後手に回ったままの現状。
この瞬間もである。
思いつつもどうにもできないということも分かってはいる、頭の中では。
だが、それでも『これ以外』の方法はなかったのか、と。
選んだことの重さと”あの時”の彼らの顔が脳裏を掠める。
不意に視線の先にゆれるものに気づいて目を見開く。
坊主頭の口元の笑んだ人形だ。
腕には『あの』ブレスレットを思わせる模様らしきものが見える。
冗談じゃない。
悪趣味な。
だが、このブレスレットをつけられていないから俺はまだ・・・。
敵は『変異体』。
そして人は”敵”の因子を改良して投与し超人的な力を手に入れて戦っている。
彼らはいったい何処から来ているのかも分からない。
ある日突然の発生例が増え、気づいたら”何もない空間”を裂く様に巨大な戦艦が地球に根を張ろうと伸びてきていた。
船とは形容しがたいとも思うが。
絶対宇宙から来たわけではないだろう。
直接的には。
それは科学者達も言っていた。
そして、権力のための武装兵という名目から『人体強化処置・人工変異兵』へと名を変え奴との戦争は始まった。
敵の戦艦を乗っ取りながら進む戦いだ。
進んでは退くの繰り返しという戦いはなかなか進まないが敵の特性も見方の戦意を削っていった。
戦意はおろか、何の意思も示さない化け物との戦いだ。
まあ、『人工変異兵』もその一部を取り込んで戦っているのだからあまり変わらないように思えると自嘲気味に語ってしまうが。
それでも開戦後に『人体強化処置』を受けた奴や俺は”まだ人”だと思う。
二の腕にブレスレット。
この権力のためと作られた彼らは自我などない。
あってももはや人のそれではない道具へと転じてしまっているのだ。
俺も”あの時”違和感を不信がり逃げ出していなければどうなっていたのだろうか?
政府は最初、『人体強化処置』を自衛官や警察関係者を中心に施し始めた。
もちろん俺も当時刑事として走り回っていた。
健康診断、と称されて。
まだ、数ヶ月しか経っていないはずなのに十年以上前の出来事のように思える。
戦いはあの日から、始まっていたのだ。
今回が現在の”彼”です。
次回、回想が始まります!