犬
外が明るくなってきたわん。
そわそわするわん。
そわそわするわん。
―――ガチャ。トントントントン。
降りてきたわん。
シッポ追いかけたくなったわん。
ハッハッハッ。ぐるぐるぐる。
「お母さん、おはよう。」
「あらエリ、おはよう。夕方のお散歩はお母さん行くから、朝ごはんの前にエビゾウのお散歩お願いね。」
「はーい。歯を磨いたら行って来るね。」
「学校に遅れないように早めに戻ってくるのよ。」
「わかってまーす。・・・エビゾウもおはよー。ヨシヨシ、朝からそんなにはしゃがないの。歯磨いてくるからいい子で待っててねー。」
―――シャカシャカ。ぶくぶくぶく。ぺっ。
まだ来ないわん。何してるわん。
ナワバリ見回りするときの荷物はこっちだわん。
わすれたのかわん。
けしからんわん。
けしからんわん。
「ワン! ワン! ワン!」
「こらエビゾウ! 朝からそんなに大声で吠えなーーい。」
「ハッハッハッ。」
「さーて。紐付けてー(かちゃり。)、お散歩袋持ってー。これでイイかな。」
―――ガチャ。きぃ~。
「じゃお母さん、行って来まーす。」
「はーい。行ってらっしゃい。」
はやく行くわん。
じれったいわん。
走るわん!
ぐいぐいっ。
「わ、エビゾウそんなに引っ張っちゃダメー。きゃあーーーー。」
外の風うれしいわん。
走るわん。
どこまでも走るわん!
・・・でも紐が邪魔で走れないわん。
けしからんわん。
けしからんわん。
―――ちろり。
「おおー。エビゾウ偉い。ちゃんと飼い主見ながら歩くね。アイコンタクトだね!」
あっちいくわん。
くんくん。
他の犬の匂いするわん。
「うわ。・・・こーら。そっちは行かないよ。こっち行くよー。」
あっちいくんだわん。ぐいっ。
こっちも気になるわん。ぐいぐいっ。
「エビゾウだーめ。ジグザグに歩くと車にひかれちゃうんだから。危ないよー。」
力ではかなわないわん。
でも負けたわけじゃないわん。
あわせてあげただけわん。
でもくやしいわん。
―――じろり。
「よしよし、エビゾウえらいぞ~。」
くんくんくん。
あっちの方からちょっと気になる匂いするわん。
―――ピタッ。じいいっ。
「こんな所に小さい公園あったんだ。・・・エビゾウー。犬は公園の中に入っちゃいけないんだよ。」
ぐいっ。
気になる匂いだった気がしただけだわん。
別にいいわん。
それよりあっちからいい匂いしてきたわん。
おなかすいたわん。
―――ハッハッハッ。(よだれ)
「エビゾウ、もうバス停の方まで来ちゃったねぇ。・・・あの辺に行ったら戻ろっか。」
くんくんくん、ふんふん。
そこのカタマリから怪しげな犬の匂いするわん。
けしからんわん!
ふんふん。
やっぱりアヤシイ匂いだわん。
なんという!
これはけしからんわん!
これはけしからんわん!
こっちの方が強いって言うのを教えてやるわん。
―――片足ひょい。
「あーーーーっ! だーめだめだめ! その人は電信柱じゃないったらーー。」
ひっぱるなわん。
出かかったものが引っ込むわん。
なにするわん。
きっとこいつのせいだわん。
こらしめてやるわん!
「がう~~~。」
「すみません!ごめんなさーーーーい。」
―――お散歩紐をぎゅっ。ダッシュ。(逃走)
行きたくないわん。
あいつを成敗するんだわん。
もどるわん。
ぐいっ。ずるずるずる。
―――タッタッタッタッ。がちゃ。バタン。
「ワン! ワン! ワン!」
「あーーー疲れたー。・・・ただいまー。」
「二人共おかえりなさい。あら、走ってきたの?」
「もうお母さん聞いてよー。バス停の所まで行って来たんだけどさぁ。」
「そんな所まで行ってたの。」
「うん。そしたらエビゾウったらさ、バス停でしゃがんでたおじさんにおしっこ引っ掛けようとしたの!」
「あらやだ。・・・それで、引っ掛けちゃったの?」
「足上げた所で止めたわよ。で、その人にごめんなさいって謝って、慌ててエビゾウの紐引っ張って走って帰ってきちゃった。」
「あらまぁ。間に合って良かったわねぇ。」
「ホント。ああつかれたーー。」
何してるわん。
ご飯欲しいわん。
お腹すいたわん。
こっち見てわん。
「きゅーん、きゅーん。」
「ほらエリ。エビゾウったら、謝ってるわよ。」
「うん・・・エビゾウも反省してるようだから、許してあげよっかな。」
「そうねぇ(笑)。さ、早くご飯食べちゃいなさい。」
「はーい。いただきまーす。」
ご飯まだかわん。
お腹すいてるんだわん。
においだけだなんてひどいわん。
けしからんわん。
けしからんわん。
「きゅーん、きゅーん、きゅうぅん・・・。」