第3章 星のかけら (17)
零式との出会いは、まったくの時間の無駄だった。しかし武器というものが、必ずしも武器っぽい形をしているとは限らないことが分かった。まぁ、これが唯一の収穫と言えるのだろうか。
零式の次に僕が見つけた武器、それは聖剣エクスカリバーであった。その聖剣は、道の真ん中に突き刺さっていて、僕が進もうとする道をふさいでいた。鬼は、道を邪魔する武器は、片っ端から破壊していったはずだ。だのに、なぜかその剣だけは破壊されずに、道の中央に突き立てられている。鬼が通ったときも邪魔だったはずなのに、これはいったいどういうことだろう。
不思議に思いながら近づいていく僕に、それは突然話しかけてきた。心に直接語りかけてくるやり方は、真実の剣のときと同じだ。
「我は聖剣エクスカリパー、電脳世界F3に生まれし最強の剣。汝が我を有するに足る勇者なれば、我は汝に最強の力と最高の名誉、すなわち我の偉大な力と崇高な権威を貸し与えてやろう。汝がもし我を望むなら、汝の手で我を大地の縛めより解き放て」
また何か面倒くさそうなのがでてきた。だが、その嫌味なほどに偉そうな口調とは裏腹に、聖剣の名にふさわしく、剣は輝くオーラに包まれていて、鋭く輝くその刀身には一点の曇りもない。これは当たりかもしれない。「大地の縛めより解き放つ」とは、剣を地面から引き抜けば良いということだろうか。そう言えば、古のアーサー王伝説でも似たような話があった気がする。もしこれがあの有名な聖剣なら、この剣こそが、僕がこの世界にきた目的そのものだ。僕は近づいていって、さっそく剣を引き抜いてみることにした。僕は気合を込めて、剣に手をかけた。
・・・と思った瞬間、剣が微妙に左に動いて、僕の手はむなしく空をきった。
「あれ???」
改めて、僕は剣に手をかけようとした。
その瞬間! 剣はまた僅かに左に動いて、僕の手は再度、むなしく空を切った。
???・・・ ???・・・
僕は狐につままれたような気持ちで、剣が突き刺さっている地面のほうへ視線を下ろした。
??? !!!!!! なに~~~~~~~~!!! 足だと~~~~!!!
エクスカリバーの刀身には、剣先のほうに小さな足が付いていた。そしてそいつは、僕が手を伸ばすタイミングで足を使って高速移動し、僕の手を振り切っていたのだ。
「はははははっ おっそいの~~~。勇者かどうかって聞いたの、あれ取り消すわ。おまえみたいなグズ、勇者のはずないもんな。さっき通ったウドの大木より遅いって、何それ? おまえマジ笑えるわ。はははははっ。 おまえってアレ? あの噂のカメ君?」
その瞬間、僕は何も言わずに黒い剣を振るい、聖剣エクスカリバーの刀身を真横から叩き折った。
「パギャーー フォントのサイズは15ポイント以上で~」と意味不明な叫び声を上げながら、それは真っ二つに砕け、そのまま静かになった。
よし、これで道を邪魔するものはいなくなった。僕はまた先を目指して歩き出す。