第3章 星のかけら (7)
「それだけどさ、武器も探さなきゃなんないんだけど、とりあえずステラがさっき話してたウソつきジイサンに会ってみたいんだ。たしか近くにあるって言ってたよね。彼のところに連れてってくれるかい」
ウソつきジイサンという名前とは裏腹に、言っていることはウソじゃないような・・・。なんだか奇妙で、どうでもいいことだけど気になってしかたがない。
「そんなのお安い御用さ。今このへんに鬼はいないみたいだから、行くなら早く行こう。すぐ近くさ。ついてきな」
ステラはそう言うなり、地面をスルスルと流れるように歩いていく。小さな体からは想像もできないほどの早さだ。油断してると置いてかれてしまいそうだ。ステラの後ろを足早に追いかけながら、僕はふと思いついて聞いてみた。
「ところでステラ、キミはお母さんとか友達とかに、お別れをしなくてイイの? ここを出たら、たぶんもう戻ってはこられないよ」
「オカアサン? トモダチ? この世界にそんなヤツはいないよ。いるのは壊れた武器や鬼たちくらいのもんさ。オレは生まれたときから一人だし、別れを言いたいのはウソつきジイサンくらいなもんかな。これから会いに行くならちょうどいいや」
「え? お母さんっていうのは、ステラを生んでくれたのがお母さんだよ。それに友達っていうのはキミの仲間のことさ。たとえばステラと同じ様な姿をした仲間とかいないの?」
「そんなのいないよ。オレは生まれたときから、ずっと一人。話し相手なら武器たちが何人かいるけどね。鬼たちはオレを捕まえようとするから、トモダチってのに当てはまらないと思うな。姿も似てないしな」
なるほど。たぶんステラは卵かなにかのとき、この世界に偶然に入り込んでしまったのだろう。あるいは母親だけ先に死んでしまったとか。そしてここから出られないまま、ずっと一人で生きてきた、ということなのだろう。こんな寂しい世界で、親も仲間もないまま、外の世界に出ることだけを願い続けてきたのだろう。ステラがさっき泣いていた理由がやっと分かった気がする。
「そうか。なんか悪いこと聞いちゃったね。ごめんよ」
「何を謝ってるのかわかんないけど、別に気にしなくてイイさ。そんなことより、もう着いたぜ。そこの岩に突き刺さってるのが、ウソつきジイサンさ」
見れば無数の剣に囲まれた大きな岩の中央に、1本のみすぼらしい剣が突きたてられていた。その剣の刀身はもうボロボロに錆びていて、柄の部分も既に半分が朽ち落ちて無くなっている。
「よく来たな、夢の子よ。我は古き神との契約に従って、おぬしに幾つかの助言と、神が許容した限りにおいての真実を伝えよう」
その朽ちた剣から発せられる意識の波動が、僕の心に直接話しかけてくる。