第3章 星のかけら (3)
「盗むって、誰から?」と僕。
「うむ。誰、というのはちょっと違うかもしれぬ。正しくは、どこから、というべきなのだが・・・。
まぁ聞け。私は以前、と言ってもおまえの感覚でいえば数百年も前のことになるが、とある世界に迷い込んでしまったことがある。フィールドの不安定領域を歩いているうちに、いつしかその世界に迷い込んでしまったのだ。驚くことに、そこにはおびただしい数の剣や刀、そのほかにも、槍や戦斧、鎌、銃、奇妙な形のありとあらゆる武器が、山のようにうち捨てられていたのだ。そのほとんどは錆びていたり、折れ曲がっていたり、あるいは壊れていたりと、もう使えないものばかりではあったがな。
たぶんそこは、武器の墓場だったのだと思う。古来より、業物と呼ばれる優れた武具には魂が宿ると言われてきた。あるいは命を奪うという行為こそが、武具に命を刻み込んでゆくのかもしれぬ。つまりその空間は、役目を終えた武具の魂が、最後にたどり着く場所だったのだろう。戦いを終えた武具たちの安住の墓場、荒ぶる魂を鎮める鎮魂の世界と言えばわかるか。
あのとき私が見た武具のほとんどは、もう役にも立たぬ鉄くずばかりであった。しかし中には、まだ武器として使えるものも確かにあったのだ。私はその世界をさ迷いながら、まだ武器としての魂を失っていない、なにか力強い波動を時折感じていた。だからあそこに行けば、うまくすればおまえの役に立つ武器を何か見つけることができるかもしれない。
私が、これからおまえをそこへと導いてやる。おまえは、自分の運と力で、そこで自分に必要な武器を探し出してくるのだ。今すぐ力を手に入れるというなら、たぶんこの方法以外にはない」
「いま、自分の力でって言ったような気がするんだけど、もちろんムーンライトも来てくれるんだよね」
「それはできん。その空間は実は少々危険なのだ。その空間はそこにいる者すべてを鎮め、その世界に封じ込めてしまう性質があるらしい。二人で行けば、二人そろってその空間に閉じ込められる危険がある。私はその空間の外にいて、おまえが帰還できるよう出口を守らねばならん」
「でも、以前に入った時は、出られたんだよね。だったら今度も大丈夫じゃないかな。僕一人で行くなんて無理だよ。それに、その少々危険っていうところも、かなりひっかかるんだけど・・・」
「そのときは、運が良かっただけだ。空間に囚われて意識を失う寸前、たまたま時空の裂け目から出ることができた。だが再びそこに入れば、自力で出るのはたぶん無理であろう。だから私は空間の外にいて、おまえが武器を手にして出てくるとき、再びゲートを開いてやる。だからおまえは一人で、武器を探しに行かねばならん」
「じゃぁ、その少々危険っていうのは、どんなふうに危険なの? 閉じ込められる危険は分かったけど、ほかには無いよね?」
「あ~ それなんだが、ちょっと面倒な小鬼がうろついていた記憶がある。かつてその世界に閉じ込められ、今では意識を乗っ取られてしまった哀れな亡者たちだ。だが大丈夫。もし近くに小鬼がいたら、すぐに隠れればよい。幸い、ヤツラは意識を乗っ取られていて、オツムが弱い。
あっ、それと、あまり長い時間そこにいると、おまえも小鬼の仲間入りだ。おまえがどれ程の時間、自分の意識を保っていられるかわからん。私との絆が呪となり、おまえの意識をある程度までなら守るだろう。だからすぐに意識を失うことはない。だがもし危険だと思ったら、迷わず私に助けを求めよ。お前が強く念じれば絆を通して私に伝わる。すぐに出口を開いてやろう」
「キミの少々っていうのが、実はかなり危険だってことは、よ~く分かったよ。じゃぁ、最後にもう1つ聞くけど、僕に必要な武器ってどうやって探せばいいのさ」
「それは自分で考えろ。いや、自分で感じ取れ、というほかないな。武具が放つ覇気は、おまえにも感じ取れるはずだ。物によっては、おまえに直接話しかけてくる武具もあるやもしれぬ。自分の直感と知恵でもって、おまえに必要な力を手に入れてこい」