第2章 ムーンライト (4)
「お話の途中に割り込んでしまってごめんなさい。
でもその説明、もしよろしければ私にさせてくれませんか?」
にっこり微笑む少女の姿に、ぼくは思わず見とれてしまう。そこには、ロングヘアーが似合うスタイルの良い美少女が立っている。
突然現われたこの少女はいったい誰だろう。テレビや雑誌に出てくるモデルやアイドルにも、こんなきれいな女の子はいない。非のうちどころがないその容姿は、やはりここが夢の世界だからだろうか。ともかく、僕はこんなにきれいな女の子を見たことがないのだから、当然、彼女は僕のクラスメイトではないはずだ。しかし僕の想像力で、こんなにもリアルな美少女をイメージできるわけはない。彼女はいったい誰だろう。
「とつぜん声をかけて、驚かせてしまったかしら?
でもその話、私にとっても興味ある話なの。それに、私ならきっとネコさん以上に上手に説明できると思うわ。だからその話、続きは私にさせてくれないかしら?」
そう言うと彼女は、美しい黒髪をわずかに揺らしながら、無邪気な笑顔で僕に近づいてくる。
無防備に近づいてくる彼女は、気が付くともうすぐそばにいて、おどけたしぐさで僕を見上げながら微笑んだ。これだけ近いと、長い睫毛の一本一本までもが良く見える。
僕は女の子の顔を、こんなにも近くで見た記憶がない。ほんのりとピンクに光るその唇から、僕は目をそらすことができない。香水の甘い香りに僕は胸をドキドキさせながら、彼女に聞いてみた。
「え、えっ~と、君って、誰だったかな? 僕のクラスメイトに君みたいな可愛い子がいた記憶はないんだけど・・・」
彼女は僕の瞳をじっ~と見つめながら、にっこりと微笑んで話し始める。
「あらっ、女の子相手にお世辞が上手ね。なかなかの紳士ぶりで、高感度アップよ。
でもちょっとショックかも。私はキミのことをずーとを前から知っていたし、あなたと友達になりたくて、用も無いのによくこのクラスにも遊びに来てたんだけどな~。でもキミは私のことなんか興味なくて、気付いてもくれなかったんだね。ちょっとショックかも。でもいいの。きっと、これからふたりは仲の良い友達になれるよね。
そうだ! もしあなたが迷惑でなければ、今ここで〈彼女〉に立候補しちゃおうかな?
わたしの名前は、佐藤莉理栖。リリスって、名前で呼んでくれるとうれしいな。」