第4話
その小型ポットは卵型で成人男性がやっと一人入れる程の大きさであった。このポッドは海に落ち、誰もが流れ星か宇宙ゴミだと思って引き揚げようとはしなかった。代わりに人々が注目したのは、ここから数十キロ先の空港に着陸した宇宙船であった。
様々な報道機関に取り上げられた宇宙船には盗賊団が乗っていた。盗賊団の名前は『スペース・ア・ゴー・ゴー(SAGG)』。彼らが報道機関のみならず、民間人にも注目されたのは、この盗賊団が様々な星で奴隷を解放しているからである。奴隷たちや奴隷制に反対する勢力はSAGGを応援していた。
宇宙一有名な盗賊団の長は『カズヤン』という丸々と太った豚の様な男であったが、報道機関とSAGGによる宣伝によって英雄であり、またイケメンとなっていた。この男の経歴は謎に包まれている。誰もカズヤンの秘密を掴んでいる者はいなかった。正確には、知っている者は殺されたのだ。
この男はつい数時間前にある施設に攻撃を仕掛けた。その施設には手に入れれば全銀河を支配できると言われている『マグナム』の設計図があった。しかし、その設計図を持った者が施設から宇宙ポッドに乗って逃亡した。カズヤンはそのポッドを追っている。問題は施設から放たれた宇宙ポッドが5機存在していたことであった。彼は設計図を持った者を探し出すために、SAGG最強の探し屋『アニプラ』を採用した。
アニプラは土星で生まれた犬人間であり、嗅覚は本物の犬と同様に優れている。かつて奴隷の身分であったアニプラは、SAGGの宣伝用に奴隷から解放され、幹部にまで指名された。一般大衆はこのようなシンデラストーリーに弱く、SAGGの評判はこの頃から良くなった。
今、アニプラは150インチサイズのモニターに映し出されているカズヤの前で跪いている。
「設計図は手に入れたのか?」
カズヤンがチョコレートを貪りながら言い、チョコレートをかじる度にその破片がカズヤンの汗ばんだ腹の上に落ちた。
「ポッドは回収できましたが、中身は空でした。」
「何!?」
盗賊団長の口が開くと同時にカメラにチョコレートの破片がくっついた。
「カズヤン様、安心してください。この星に落ちたポッドが最後です。それに部下の報告を聞いた限り、他のポッドが落ちた星は人が住めない場所であり、一応捜索しましたが、設計図はありませんでした。ゆえに奴はここにいると思われます。」
「そうか…では、頑張れ。私はこれからキャバクラに行く。終わったら、メールをくれ。」
「了解しました。」
アニプラの前にあるモニターからカズヤンが消え、現在いる星の基本データや 町に出て調査を行っている部下たちが送ってきた情報が表示された。
あの豚は見るだけで反吐が出そうになる。できれば早く死ねばいいのだが、ああいうのに限って死なない。まず、設計図を持ちだしたクソ野郎を捕まえて、メス犬たちと戯れたいもんだ。