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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GATE 01「フィヨルドの騎士とセルリアの魔女」前編
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第4話 竜神族

      挿絵(By みてみん)




 "ガリアの戦い"にまつわる神器についてマーリンが語る中。玉座の壇上に、突如姿を現した一人の老人。


 それは七つのかしらを持つという伝説の聖獣。古の竜神王であり、竜神族長老のセマグルであった。


 普段、彼は神霊化した状態で”リュブリャナの森”のキエフ神殿にいた。ただ時折、人に姿を変えては人間世界に現れた。




◆・.。*†*。.・◆




「ナンダ、セマグルの爺さんか。ビックリさせるなぃ……」


「ナンダとは愛想がないのぉ、テオゴニア……」


「気安くファースト・ネームで呼ぶんじゃねっ!」



 マーリンとセマグルの会話に面喰うユラン。セマグルに対して口の悪いマーリンではあったが、彼は彼なりにセマグルに敬意を持ちしたっていた。




 マーリンとセマグルが初めて出会ったのは"ガリアの戦い"前であった。まだ”不死の大魔法使い”と呼ばれる以前の事。


 もともと”白き大地神”の国アングル・ブリーンの民であったマーリンは、若くして数多あまたの魔法、呪法じゅほうの奥義を極めていた。


 そして、生まれ持ってのものか? あるいは天性の才に溺れてか? 


 その傲慢ごうまんさと粗暴さをもって神アルビオンに放逐ほうちくされ、祖国を後にした。




 彼らが出逢ったのはその頃であった。時に人に姿を変えたセマグルは、マーリンに託宣たくせんを与え。時に神霊として現れ、力を貸して彼を助けていた。



「変わらんのぉ……。”風の国”で賢者として過ごした時間で、幾らか大人になったと思ったがの……」


「うるせいっ! 数千年も生きてるアンタから見たら可愛いモンだろっ!」


「ほっほっほっ、そうかも知れんの……。それはそうと、どこまで話したかのぉ?」


「なんだよ、俺の話を聞いてたのか?」


「そうそう、それでじゃ。彼らに代わって、行方ゆくえ知れずじゃった”炎の剣”をワシが探したんじゃ……」


「直接アンタが、しかももっと早く剣を持って来てくれたら楽だったんだがね……」


「それは出来ぬ相談よ。我ら竜神族は、本来中立の立場じゃからの。一族から去り、また破門された馬鹿者共は別じゃが。それが亡き女神との約束じゃ……」



 竜族達が神格化される前の時代の事。神々に匹敵する神霊力を持っていた彼らは、自身の国を持っては居なかった。


 その代りに、また神々の争い事に関与せぬ代りに、柘榴ざくろの森を自由に往来する事を許された。また、”ガリア世界”の何れの柘榴の森にも住処すみかを得る権利を与えられた。彼らが”柘榴の森の門番”と言われるようになった所以ゆえんである。


 それが創造主であり”大地母神”であるガイアとの約束であった。




 ”ガリアの戦い”での経緯いきさつを知っているだけに、ふとセマグルの言葉に反発を覚えるマーリン。



「破門!? 馬鹿者だと!? ヤツは、ドライグはな、ストリの……」



 マーリンの言葉をさえぎる様に、セマグルはその名を呼んだ。



「ドライグ……。ドライグか、懐かしいのぉ……」


「セマグル様。ドライグって、僕のお兄様の事?」


「なんじゃウーゼル。お前も来ておったか……」



 ユランとフィンが王城へ行く姿を偶然見かけたウーゼル。彼は共に同行する事をていよく断られてはいたが、ちゃっかり付いて来ていた。


 そして、気づかれぬようキフラ城へと忍び込み、竜の間に幾つもある柱の影で事の一部始終を聞いていた。



「セマグル様、僕のお兄様の事ですよね?」


「そうじゃ、お前の兄じゃ。立派な戦士じゃった。お前が生まれる前に旅立って行ったからの。今頃どうしておるかのぉ……」



 ”赤い火竜かりゅう”のドライグ。それは竜神族でありながら”ガリアの戦い”で、”白き軍勢”と共に闇夜と戦った神竜の一神だった。


 彼は現竜神王リグラフと”水竜の女王”モードの長子ちょうしであり、ウーゼルの兄であった。




 マーリンはセマグルの言葉を聞いて、いや、それよりもむしろウーゼルの顔を見て、それ以上セマグルにドライグの事を問いただすのを止めた。


 それはドライグ本人も、いや、セマグルもすでに承知している古い古い昔の話のせいもあった。




 ウーゼルの登場によって話の腰を折られた雰囲気を、マーリンは取りつくろうようセマグルに話を戻した。



「ま、あれは置いておくとして、それから?」



 セマグルも思い出したようにユランに話を続けた。



「おお、そうじゃ、そうじゃ。それにの、”炎の剣”はワシにも中々手の届かぬ所にあっての。まあ、結局カザナスに頼んで運んで貰ったのじゃ……」




 そう、”ガリアの戦い”から後の事。


 竜神族末裔(まつえい)の建国を目指して旅する竜騎士カザナスらに、”炎の剣”を”風の国”へと届けるよう神託しんたくし、このスラフの地に呼び寄せたのも何を隠そうセマグルであった。


 また、ガリア世界”白き軍勢”の国々を、女神エタニティが次元(へき)隔離かくりした時。手助けしたのも彼だった。




 そんなセマグルの話を黙って聞いていたカザナス王であったが、そこで何かに気付いたように口を開いた。



「セマグル様……」


「王も気づいたか?」


「いや、しかし……」



 そんな言葉にならない会話に戸惑うユランたち。


 そして、慈愛に満ちた微笑ほほえみに改めてユランへと語りかるセマグル。



「どうじゃユラン。ひとつ頼まれてはくれんか?」


「は、はい、セマグル様。私に出来る事であれば……」


「そうか。では、この”炎の剣”を、とある所に届けてくれんかの?」


「剣を、届ける……。とある所に?」



 ユランの答えに、そして問いに対し、一際ひときわ大きな声でセマグルは言った。



「それは約束の地カレワラ。みやこフィンジアス!」



 それは先のマーリンの話に出てきた”神剣クレイヴ・ソリッシュ”の半身”ミスティル・テイン”が、かつて収められていたというアイル北方の魔法四都の一つフィンジアスであった。



--- フィンジアス ---



 そのセマグルの言葉は広間全体に鳥肌が立つような、いや、武者震いに震えるような空気をき立てた。



「ユランよ。もともと我ら竜神族には、或る程度の年になると自分の住処すみかを見つける為、柘榴ざくろの森を通って旅に出る。そういった習わしがあった。

 じゃが、スラフ・カザナス建国によって集い、ついの住処を、念願の国を持って以来、それは久しく忘れておった……。なあ、カザナスよ……」


「はい……」


「このカザナス・スヴァローグも、かつては


 お前の父親ユラトフ・クァシーラ

 フィンの父チェレス・ウゴール

 そして

 スカヤ・ザスタヴァ。


 仲間と共に剣を届ける竜騎士として旅をしたのじゃ……」


「はい。その話は父から聞いております……」


「では、今度はお前の番じゃ。”神剣クレイヴ・ソリッシュ”の半身である”炎の剣”があるべき所。それは聖者ルゴスが死した後に復活を信じ、彼の剣”ミスティル・テイン”を再び収めた場所。いにしえみやこ”フィンジアス”じゃ。


 今はトゥーアサ・ジェー・ザナンの国。ティル・ナ・ノーグと名を変えておるがの。古のアイル・ダーナ。その都エヴァンにある”魔法宗教国家”アルスターの北方自治区であり、魔法都市連合の一つとなった”フィンジアス”じゃ。


 お前も間もなく十七歳。旅に出るには良い頃じゃ。お前もそのつもりでいたのじゃろう?」



 セマグルは気づいていた。ユランが”炎の剣”をカザナス王に返上した後。このスラフ・カザナスを離れ、何処いずことも分からぬ旅に出ようとしていた事を。


 確かに、目に見えぬ期待や漠然ばくぜんとした不安から逃れたい。そういう想いもあるにはあった。


 しかし、己が聖者の生まれ変わりか否か? 何を為すべきか? いや、何が出来るのか? 確かめたいと思っていた。


 ただ、その目的の場所は愚か、手立てすら当てがある訳では無かった。それでも、このまま何かをして待つよりはマシと思えた。




 そんな会話の中。一人冷めた目で憮然ぶぜんとするマーリンが居た。



「で、爺さん。話が見えんのだが?」


「見えぬとは?」


とぼけんなぃ。旅は分かった。フィンジアスもいいだろう。で、道はどうする?」



 かつていにしえに起こった闇夜との、”黒き軍勢”との”ガリアの戦い”。


 その終結後。”女神エタニティ”は、次なる戦いに備える為。また、魔の者達の侵入を防ぐ為。旧”白き軍勢”の国々を次元(へき)隔離かくりした。


 それはガリア世界創造の元素となった”カオス”の残りである”柘榴ざくろの森”。数多あまたの王国を、同時並行に存在するという他世界とを繋ぐ空間転移門を、その出入口全てを閉ざした事を意味していた。






 つづく

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