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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GATE 01「フィヨルドの騎士とセルリアの魔女」前編
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第3話 神殺しの神器

      挿絵(By みてみん)




 竜王カザナスとの謁見えっけんに於いて、”炎の剣”を返上したいという騎士ユランの願い。重苦しい空気の中、先に口を開いたのカザナス王であった。



「ユラン、お前の気持ち分からんでもない、それも良かろう……」


「えっ、オイ! 冗談だろカザナスっ!」



 かたわらにいたマーリンは茫然ぼうぜんとした。


 ”ガリアの戦い”以来。百年の時を越えて、ようやく聖者ルゴスの転生者を見つけ出し、”炎の剣”を渡すという積年の願いを果たした魔法使いマーリン。


 彼にとってカザナスの下した言葉は受け入れがたいものだった。


 それに、”風の国”で”魔のとばりの三騎士”タナトスと戦った時。あの時に受けた”死の灰”が原因で”死灰病”に犯されたカザナス。


 最早、彼にも”炎の剣”を使いこなせるだけの力が残っては居無い事を、マーリンは薄々ながら気づいていた。


 魔力に対する耐性が強い竜神族の末裔まつえいではあったが、長い時間を掛けて確実に体をむしばみ続けた毒手どくしゅは、それ程までに彼から力を奪い去っていた。




◆・.。*†*。.・◆




 玉座の壇上からユランの目の前に歩み降りるカザナス。



「但しユラン、お前は一つ誤解している」


「誤解……?」


「そうだ、その誤解は解いておかねばな……」



 彼はユランが手にする”炎の剣”をさやから抜き取って見せた。


 そして、感慨かんがいふけるような眼差まなざしを剣に向けると、長年の友に語りかけるよう話を始めた。



「残念ながら、コイツが必要としているのは私では無い。これまでも、コイツが本当の力を私に見せた事は一度も無い……」



 カザナスの言葉にユランは耳を疑った。



「まさか、王は"風の国"でも魔の三騎士すら退しりぞけたと……」


「確かに退けはした。しかし、完全にほうむったと思っていた、あのヒュプノスは生きていた。この間の内戦で、お前が切った奴だ。おそらく、何れ又(よみがえ)る……」


「そんな……」


「まあ聞け、ユラン。確かに、この”炎の剣”は魔神に対して有効な力を持っているのかもしれん。しかし、私が知っている話では、この”炎の剣”も白い炎を放つという神剣の半身だという……」


「白い炎。神剣の半身……」


「そうだったな? マーリン……」


「ああ……」



 それはかつてて”風の国”で共に戦った時。マーリンがカザナスに語った話だった。




 無言に話をうながすカザナス。静かにマーリンは語り始めた。



「あの”ガリアの戦い”の時。”カルヤラの女神”エタニティのもと


 ”白き大地神”アルビオンを失ったアングル・ブリーン。


 ケルト大精霊神クレス・ワイナの”森の国”スクォーラ・ファイフ。


 ”月の女神”の国ウェル・ロッド。


 いくさ女神バズウ・カハの国アイル・ダーナ。


 それら古代ケルトよん国とヴァニラ・フィールズのヴェリール王家が同盟を結んだ。


 そこにテッサリア”虹の女神”イリスの王国クレテが加わって、言わずと知れた”白き軍勢”の完成だ。


 その中から、アンティリア島の”黄昏たそがれのモイラ”達の予知と指名によって


 スクォーラの”大精霊神にしてケルト大神官”クレス・ワイナ。


 ウェルから”風の戦士”スウェン・セバイク。


 アイルから”白炎の騎士”ルゴス・ルクリウス。


 そして


 ブリーンの”不死の大魔法使い”テオゴニア・マーリン。


 つまりこの俺様だ!


 四人の”聖者”を立て”黒き軍勢”に対抗した。


 可愛い妹ネヴァンを殺られた、”半神半人の女神”バズウ・カハのモリガンとヴァハもいたが、まあ、あいつらは女神だナンダって、同盟を結んだ割に我儘わがままでな……。


 ま、それはいいとして、厄介やっかいだったのが”闇夜の軍勢”らを束ねる


 ”死の灰”のタナトス。


 ”永久とわの眠り”のヒュプノス。


 ”悪夢の女騎士”オネイロス。


 御存じ”魔のとばりの三騎士”だ。


 どいつもこいつも剣だ弓矢だナンだの使い手で、しかも物理的攻撃以外、魔法は程んど通じないときたモンダ。で、剣技にける騎士ルゴスと剣士スウェン、そして、戦女神モリガンを奴らにぶつける事にした。


 ただ、戦いの最中で気づいた事だったが、奴等を滅するには特別な武器が必要だった。タナトスが持つ”死灰の剣”フォール・アウト同様に”神殺し”の神器がな……。


 奴らは打ち倒す事が出来ても滅する事が出来ない魔神。要は死なない。俺様と同じ不死と言う事だ。


 そこで、何でも知ってるティタニスの”時と記憶の女神”アネモネから、神器の事を聞き出そうと思ったんだが、肝心の彼女は何処どこぞに行方不明で手掛かり無し……。


 んで。仕方なく、再び予言者モイラたちが居るアンティリアはヘスペリスの園へ。お告げとやらを頼りに理知的で賢い俺様が調べたところ、三つの神器が浮かび上がった。


 一つは、”閃光せんこうまばゆき聖剣”カレトヴルッフ。


 二つ目は、”稲光に輝く神槍しんそう”ブリューナ。


 そして


 三つめが、”白き炎に燃える神剣”クレイヴ・ソリッシュ。


 ところが、だ。我々にあったのはウェルに伝わる”聖剣カレトヴルッフ”のみ。


 モイラの予言者クロトいわく。”神槍ブリューナ”は、”影の国”だか”光の園”とやらに居る”戦いの女神”ヴァルキュリヤ将軍たちの誰かが持っている。


 ”神剣クレイヴ・ソリッシュ”の半身である”ミスティル・テイン”は、アイル北方都市フィンジアスの教会に収められていたが、もう一方の半身”であるレーヴァ・テイン”、いわゆる”炎の剣"は敵の手にあると思われていた。


 始まってしまった戦の最中さなか。残りの神器を探すに探せず、仕方なくルゴスは”ミスティル・テイン”で。モリガンは自前の”竜槍りゅうそうゲイ・ボルグ”で死なない化け物どもと戦うハメに……。


 ま、大まかに、ザッと、昔しカザナスに話した古い話だが……」



 そう、マーリンが話を終わらせようとした時。突然に現れる大きな光と気配が城の広間を埋めていった。


 と同時に、そばでマーリンの話を聞いていたカザナス王が、玉座に向かって丁寧にこうべを垂れると静かに一歩二歩と後ずさった。


 その頭の先。玉座に向かう皆の視線。そこにはに艶めく錦織りの衣に身を包み、黄金の杖を突く一人の老人がかすみのように姿を現すのだった。






 つづく

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