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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GALLIA エピソード ”零”「燃える大灯台砦」
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第34話 赤毛の女将軍

      挿絵(By みてみん)




「それにしても、なんという数だ……」



 大洋ポトスを埋め尽くすかにふくれ上がる黒い艦影に、目を奪われるばかりの海竜ストリではあったが、それも束の間。


 その光景に呆然とする己を直ぐにも消し去ると、彼女はうろこを逆立て押し寄せる闇夜の艦隊の元へと向かった。


 もしストリが危惧きぐする通り、再び闇夜の者達が戦を始めるというのなら、向かう先は間違いなくヴァニラ・フィールズであった。


 そして、彼女がつい棲家すみかと定めた港町ノーア・トゥーン周辺一帯の海を、戦によって荒らされるなど断じて許す事は出来なかった。




 ストリは押し寄せる黒い艦影の数里前に、その巨体を浮かび上がらせた。そして、我が身を誇示こじするよう、また、艦隊の行く手をはばむかのように翼を大きく広げ身構えた。


 それは、どの艦艇の甲板からも目視出来る姿、距離であった。


 うごめくような無数の黒い船影に立ちはだかる海竜ストリ。


 その姿に気付いてか、ゆっくりと艦隊は足を止めた。すると、その中から一際大きな軍船の一隻が、速度を上げると彼女の前へと進み出た。


 海竜ストリをも凌ぐ船の巨体は、船底で切る波飛沫(しぶき)を次第に鈍く押しやると、風がぐよう緩やかにストリの目の前で停止する。


 ストリが言う。



「我が名はストリ・イシェボ。スラフ竜神族に連なる者」



 彼女の咆哮ほうこうにも聞こえる言葉に船上はどよめいた。


 すると、甲板を埋める兵士達を割り、船先に指揮官らしき女将軍が姿を現した。


 黒い甲冑に身を包み、赤紫の外套がいとうひるがえす赤毛の女将軍は、さやに納める巨剣の切っ先を甲板に立て仁王立ちし船首でストリに対峙した。


 そして、彼女は右手ひとつの仕草で、どよめく甲板の兵士たちを静まらせて見せた。


 それは、海を駆る獣の群れを、一瞬にして規律ある軍団組織にも変えて見せたのである。




 やがて、その後方。艦隊も一糸乱れぬ隊列を組んだかと思うと、矢庭に女将軍が口を開いた。



「我が名はオネイロス。アイトリアの艦隊を束ねるもの。何故、貴殿は我らの行く手をはばむのか?」


「オネイロス……」



 その名の響きに、ストリは聞き覚えがあった。どこで耳にした噂かは思い出せなかったが、”神々の盟約”以降に現れた得体の知れない者達の一人だと。


 彼らは”魔のとばりの三騎士”とも呼ばれ、瞬く間に”闇夜の軍勢”の指揮命令を握り統括するようになったと聞いていた。


 そして、この鉛色の黒い甲冑かっちゅうに華美に装飾されたアラベスクのような文様。薔薇と十字架のモチーフが散りばめられた巨剣のさや。更には、赤紫の外套と戦場には似つかわしくない艶やかな赤毛。


 そのどれもがくだんうわさに符号していた。


 それだけに、この黒い艦隊が、ただ民を乗せて移動してるとは思えなかった。いやむしろ、その目的が戦であるのは明らかだった。






 つづく

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