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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GALLIA エピソード ”零”「燃える大灯台砦」
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第32話 不死の魔法使い

      挿絵(By みてみん)





 アイル”時と音楽の妖精”レアン・ファウ・シーを送り出したマーリン。その後、まるで彼は旅にでも出るかのように荷物をまとめていた。


 そこへ、予言者”黄昏のモイラ”の三女ラケシスが訪れる。



「マーリン……。貴方も、行くのですね……」


「ああ……」



 そんなマーリンの背中に、ラケシスは続けた。



「アルビオンのかたきを取るつもりですか?」



 ふと、荷造りの手を止めるマーリン。



「そこまで馬鹿じゃないさ。いくらアルビオンが俺の育ての親だからって、相手が神様じゃな。人間の魔法使いとじゃ、命が幾つあっても足りない……」


「では何故? あなたも戦いを求めているの?」



 再び荷造りの手を動かし始めるマーリン。



「そんなんじゃナイさ。二度と起こる筈の無かった神々の戦いが見れるんだ。チョット後学の為にね……」


「私達の、為?」



 やはり、手を止めるマーリン。



「確かに戦が始まれば、ここも無関係じゃいられない。君たちには世話になったしな……」


「……」



 無言のラケシスに振り返るマーリン。その場の空気を取りつくろう様に彼は、笑顔でラケシスを見詰めた。



「でも、それだけでもナイんだ。上手く言えないけど、俺のやるべき事と言うか、なんというか……。最近、何となくだけど、アルビオンの言っていたことが分かったような気がする……」


「言っていたこと?」


「ああ。”力は人の為に使え”ってさ。口癖だったからな……。黙って見てるのも性に合わないしな。戦になれば、魔法使いの人手ぐらい必要になるだろ……」


「……」



 そして、再び旅の荷造りを始めるマーリンだった。




◆・.。*†*。.・◆




 そんなマーリンの元に、今度は”黄昏たそがれのモイラ”長姉ちょうしのクロトと次姉じしのアトロスも姿を現す。



「マーリン」


「今度はクロトにアトロスか。なんだい、みんなして今日は? 見送りに出も来てくれたのか?」


「マーリン。貴方に渡したいものがあります」



 長姉のクロトが言う。



「俺に?」



 そう掌に差し出されたモノ。それを見てラケシスが驚きの表情を浮かべた。



「姉さん。それは……」



 それはマーリンも同じであった。



「こ、これは、”黄金の柘榴ざくろ”……」


「そう。大地母神ガイアが私達に与えてくれた最後の一つです」


「驚いたな、まだ現存していたなんて。俺も実物を見るのは初めてだ……」



 ガリア草創期。大地母神ガイアによって神々に対を成して分け与えられた”黄金の柘榴”。その神話の果実が目の前にあった。



「これを貴方に差し上げます」


「俺に?」


「きっと役に立つでしょう」


「姉さん、何故……」



 不安と哀しみの表情を表すラケシス。



「いいんだラケシス。俺も知っている。それがただの不死の源じゃないってことは……」


「マーリン……」



--- ”黄金の柘榴ざくろ”。またの名を”不死の果実”という。古より、その果実を求める者多かれど、それを口にした者、未だいず ---



「それを口にした者とは人間のことで、元来、”黄金の柘榴”は神々が食するもの……」


「知っていましたか……」


「ああ。そして人の場合。柘榴の持つぼう大なエネルギーが、最後は魂や肉体まで食い尽くすって事もね……」


「それを知っていながら、それでも貴方は、この”黄金の柘榴”を受け取ってくれますか?」



 マーリンに躊躇ためらいは無かった。



「ああ、願ったりかなったりだ。丁度いい。手ぶらでどうしようか迷ってた所だ。でもクロト……。これを俺にくれるって事は、俺に何かをやらせたいって事なんじゃないのか?」



 クロトは小さく頷いた。



「残る聖者を守って貰いたいのです」


「聖者?」


「そう、アイル”白炎の騎士”ルゴス・ルクリウスを……」



 その名を聞いて、マーリンは合点がいった。



「ルゴス? そりゃぁ、アレか? やっぱ、もう一つの”封神の指輪”を使えるのは、ヤツしかいないってことか?」


「……」



 クロトは答えなかった。


 それはクロトにも確証が無かったのか? それとも、言う必要が無かったのか? マーリンには分からなかったが、彼の好奇心は留まる所を知らない。



「それと、残る聖者ということは、本来、指輪を使う資格のあった聖者が他にもいた……。やはり、皇女ネヴァンは死んだのか?」


「いいえ。半神半人の女神は、やがて転生しよみがえる事でしょう。ですが、それは少し先の話……」



 マーリンの予想は当たっていた。



「今はルゴス。ヤツしか居ないってことか……。いいだろ。その話、乗ったぜ。”黄金の柘榴”もあるしな。これで神とも五分で戦える!」


「それは違います……」



 静かに否定するクロト。困惑と言うよりは、やはり好奇心が口をついて出るマーリン。



「違う? 違うって、何が?」


「本当の敵は、神でも人でも無い者……」


「神でも人でも、無い者? 何だい、そりゃ?」


「見えるのです。ガリアを、いえ、この世界を変えようとする”四つの黒き者”が……」


「”四つの黒き者”?」


「マーリン。仲間と共に戦うのです。”四つの黒き者”をくじく”四人の聖者”として」


「仲間と、”四人の聖者”。えっ! 俺が聖者っ!?」


「そう、貴方がそのひとりです」


「マジ、かよ……」


「それが”黄金の柘榴ざくろ”を貴方に受け取ってもらいたい理由なのです」



 マーリンは自分が、”聖者”などというガラでは無いのは分かっていた。


 しかし、予言者たるクロトに指名されたと言う事は、名誉などと言う事ではなく、それは課せられ逃れられないごうなのだと感じていた。



「ま、それはそれでいっかぁ……。でもよ、天才の俺は分かる。

 で、”白炎の騎士”ルゴス・ルクリウスだろ。剣技の速さはピカイチだと聞く。”三位一体神”バズウ・カハの一角、将軍ヴァハの副官を務める程だ。

 で、あと二人。残る二人は誰なんだい?」


「一人はウェルのダヴィド王。”風の戦士”スウェン・セバイク」


「おおっ! ケルト最強の魔法剣士か。あるるぁ、つえええぜっ! 天空神の神器”聖剣”カレト・ブルッフの使い手だ。で、もう一人は?」


「……」



 クロトは俄かに顔色を落とすと、何かを躊躇ためらうように一瞬口を閉ざした。



「ん? どうした?」



 すると、思案に耽るクロトに変わりアトロスが語り始めた。



「本来、”四聖者”は”新たな王たりうる者達”。つまり人族と半神半人のネヴァンの筈だった……」


「でも、ネヴァンは当てにならないんだろ?」


「そのネヴァンが今生の命を失った今……」


「今?」


「普通であれば”三位一体神”バズウ・カハの次女。”いかれる赤いたてがみ”ヴァハが皇女の務めを果たし、”聖者”とならなければならない……」


「いやぁ、”聖者”も大概たいがいだが、皇女ってタマじゃネエだろぉアイツわぁw。ムリムリwww」


「だが、きっと彼女は拒むでしょう……」


「拒、む……?」


「いえ。そもそも、それは出来ないのかもしれません……」


「出来ない、って、どういうことだ?」


「それが、半神半人の”三位一体神”となった理由だからです……」


「んん? んん~、ナンカ訳アリなのは分かった。まあ、いいや。じゃ、あと一人。残りの一人は、どうすんだい?」



 再びクロトが口を開く。



「クレス……。スクォーラ”森の大精霊神”クレス・ワイナが、その穴を埋めてくれるでしょう……」


「森の大神官か。そっちの方がシックリくるな……。で、この先、俺はどうすりゃいい?」


「クレス。彼を訪ねてください。彼が進むべき方向を指し示してくれるでしょう……」


「ファイフの森”知恵のオオミミズク”か……」



 それは、普段クレス・ワイナが住むファイフの森で、ミミズクの姿を借りて暮らしている所からついた別称であった。




 ふと、マーリンはブリーンから放逐ほうちくされた時の事を思い出した。


 当てもなくケルトを彷徨さまよっていた折り、行く先アンティリアを指示してくれた竜神霊セマグル。


 マーリンには、セマグルとクレスが同様の存在として重なって見えていた。おそらく、自分よりも何十倍、何百倍と生きているであろう知恵者として。


 人の業でもあるが、知恵や知識に飢えている彼にとって、彼らは学ぶべき師として仰ぐ事が出来た。


 また、その出会いが彼を成長させると、育ての親であるアルビオンも分かっていたのかも知れない。



「おっと! クロト。”黄金の柘榴ざくろ”を忘れてた。今、ここでそれを食えばいいのか?」



 クロトは優しく微笑むと首を横に振った。彼女は改めて右の掌に乗せた”黄金の柘榴”を差し出した。



「マーリン。この柘榴に手を当てて……。そして、柘榴に触った瞬間。私と貴方との契約が成立します」


「OK、イイいぜ!」




 壊れものを触るかに柘榴の実を左手で包み込むマーリン。


 そうして、その指先が果実に触れた時。黄金に輝く柘榴ざくろの光が、放射状に大きく弾けた。


 その金色の光線は生き物のように激しく集散を繰り返すと、マーリンの全身を包み込み、やがて溶け込むように彼の胸の中で形を成した。


 その熱く焼けるような鼓動は、まるで黄金に輝く心の臓が透けて見えるようでもあり、マーリンに計り知れない力と苦痛を与えた。




 思わず膝を折り、重く地に両の手を落とすマーリン。



「マーリンっ!」



 ラケシスが歩み寄る。しかし、それを拒むかにマーリンは制する仕草を見せる。


 更に自力で立ち上がると、彼は仁王立ちに天を仰ぎ雄叫びを上げた。



「っおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」



 それは体の中で暴れまわるエネルギーを力づくで抑え込むようでもあり。苦痛と己がさがとに耐えるようでもあった。


 


 大きく深呼吸をし、瞼を閉じる。


 また、静かに瞼を開く時。


 彼のハーフロングの髪の毛は腰に届く程の長さに伸び、色もブルネットからホワイト・シルバーに変わり輝いた。


 これが”不死の魔法使い”マーリンの誕生であった。




「アレっ? 俺の髪の毛の色が……。ヤレヤレだな。まったく……」






 つづく

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