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『ザ・ファンタジーフィールズ』 第零章 LABYRINTH  作者: メル・ホワイト・プリンス・ヴェリール
GALLIA エピソード ”零”「燃える大灯台砦」
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第30話 神々の定義

      挿絵(By みてみん)




 予言者姉妹”つむぐ者”クロト、”不可避の者”アトロス、そして、”割り当てる者”ラケシス。


 ”黄昏たそがれのモイラ”と呼ばれる彼女たちが住まうアンティリア島。




 祖国アングル・ブリーンを”白き大地神”アルビオンによって放逐ほうちくされていた魔法使いマーリン。


 ひょんな事から彼は、そのヘスペリスの園にアイル・ダーナ”時と音楽の妖精”レアン・ファウ・シーと共に暮らしていた。




 その日も、数多あまたの魔法を極めるべく、また禁断の呪法を解明すべく、その呪式や魔法印の研究に没頭していた。


 大概たいがいの事には大雑把な正確の持ち主ではあったが、それが魔法絡みとなれば几帳面な一面を見せた。


 ぶつぶつと呟きながら、魔術書グリモワールを読み漁り、自前の黒書ブラック・ブックスを整理するマーリン。


 そんな彼に、不安げな表情でレアン・シーが話しかける。



「マーリン……」


「ああ。ブリーンとアイルで何かが起こっている。戦でも始まるかな……」



 このケルトから遠く離れたアンティリアにあって、それでも彼はブリーンとアイルから消える二つの大きな気を感じ取っていた。


 そして、それが意味するものが何なのか?


 マーリンには察して有り余るものがあった。


 同様に、詳細は別として、その徒ならぬ気配を妖精レアンも感じたのだと彼は思った。




◆・.。*†*。.・◆




「ねえ、マーリン。モイラたちが言ってた、世界が消えてなくなっちゃうって本当なの?」


「いや。アトロスが言うほど、簡単に世界は無くなったりしないさ……」


「でも、アルベリヒ様も同じようなことを言っていたわ。もしアルビオン様が死んでしまうようなことになったら?」


「ブリーンの妖精王アルベリヒ・オベロンか……。それにしても、そうはならないさ……」


「どうして? マーリンには分かるの?」


「分かるというよりは、神霊質のアルビオンの場合、そう簡単には殺せないってことさ……」


「神霊質? 殺せない? んん~、いまひとつピンとこないなぁ。もっとレアンにも分かるように話して」


「いいかい。この世界は遥か昔に数多の神々によって創造された……」


「フムフム」


「この世の物質の全ての元となるカオスからだ……」


「フムフム」


「それは力オスが持つ力、神霊力を神々が反映させたと言ってもいい……」


「そいでそいでぇ?」


「すなわち。神々は世界と密接に繋がっていて、いや、むしろこの世界自体が神々の力の揺りかごと言える……」


「でも、それじゃぁ、アトロス様やアルベリヒ様の言うとおりに……」


「このケルト世界がアルビオンだけで創造した世界ならね」


「あっ、そっかぁ。モリガン様やクレス様もいるのよね……。あっ、ウェルにはアリアン・ロッド様もいるわ」


「最も、そんな事になる前に君んとこの女神様が黙ってないと思うけどね」


「そうよっ! モリガン様が黙ってないわ!」


「モリガンもそうだが、もう一人……」


「もう一人?」


「怒らせると怖いのがいるだろ……」


「ああぁ、ヴァハ様ぁ!?」


「そっ。アレが怒るとやっかいだ……」


「ひっど~い。ヴァハ様に言い付けちゃうわよ……」


「ま、それはさておき。従属神クラスならいざ知らず。そんな真祖神をヤタラメッタラ殺すとなると……」


「殺すとなると?」


「神々の定義によって不都合が生じる……」


「神々の、定義?」


「ああ、神々の死の定義さ。単純に言って、神々の死は我々人間とは違う。死ぬと言うよりは消滅すると言ったほうがいい……」


「消えてなくなっちゃう、ってこと?」


「ああ。神々と言っても色々な存在形態がある……」


「存在、けいたい? ん~っ、分かりやすくぅ!」


「例えば、大きく分けて二つ……」


「はい、ふたつ」


「アルビオンやエレボスらは、この世界創世記の頃のまま神霊質。つまり実体を持たないエネルギー体の部類になる……」


「フムフム」


「そして、もう1つは君んとこの女神様モリガンやヴァハのように、何らかの理由によって肉体を持ち実体化した部類……」


「フムフム」


「さっき、肉体を持つ女神ネヴァンの気が消えたということは?」


「エッ!? ネヴァン様……」



 思わず出してしまったネヴァンの名前にレアンの表情が曇った。


 ここまでレアンがアイルの妖精である事を気遣って、先に消えた気の一つがネヴァンだと言わずにいたマーリン。


 ただ、話の流れで調子に乗った彼は、つい口を滑らせてしまった。



「マーリン。ネヴァン様に何かあったの?」


「いや、その、おそらく肉体的損傷を受けて一時的に気が弱まったか、肉体を失った為に存在を維持出来なくなったか……」



 マーリンのトーン下がる。



「維持出来なくなった……? エエ~っ! 死んじゃったのぉ!?」


「いや、ただ、その場合。神霊質を繋ぎとめる器を失った場合に備えた転生が行われてるはず……」


「転生? ってことは死んでないのね?」


「まぁ、人間で言えば、一度死んだことになるけど……。いや、神々の場合。神霊質のエネルギー体が消滅しない限り、死んだとは言えないだろぉなぁ……」



 レアンの顔色をうかがうマーリン。



「よかったぁ~。ネヴァン様が死んじゃったら、レアンも生きてイケナイっ!」


「しかし、転生したとしても記憶が残っているかどうか……」


「エっ! そぉなのぉ~っ!?」


「ああ。特に彼女たちの場合。より人間に近い存在だからな……」


「もしそうだとしても、それでもレアンはいい。また会えるなら……」



 若干、レアンの機嫌が戻ったのを逃さず、マーリンは話を戻した。



「そこで、話は本題に戻る……」


「ほんだい?」


「アルビオンが、なぜ簡単に死なないかってことさ……」


「あ~、ハイハイ!」


「アルビオンが神霊質。つまりエネルギー体だってことは話ただろ……」


「ハイハイ」


「そのアルビオンを消滅させるには、神々の定義に従うと、それと同等のエネルギーが必要になる……」


「同等の、エネルギー?」


「結論から言えば、エレボスがアルビオンと心中する気なら可能だ……」


「しんぢゅう……。って何だっけ?」


「一緒に死ぬ。共倒れする気ならってことさ……」


「それはナイわぁ。だって世界の王様になりたいんでしょ?」


「だろ?」


「でもぉ。じゃぁ、何で、また戦を始めるのかしら?」


「ん~、あらかたの神々が去って、残っているのは恨みのあるケルト神。だからかな……」


「でぇもぉ、決着はつかないんでしょ?」


「確かに。いや、殺せなくても勝てる方法があるにはある……」


「あるにはある? あっ、わかった。”封神の指輪”グレイプニルね!」


「それはレアンも知ってるんだ(笑)……」


「んっも~! 馬鹿にしてるでしょ! レアン、馬鹿じゃないモン!」


「しかしなぁ、その指輪の持ち主自体がアルビオンとエタニティだからな……」


「あっ! 例えばぁ、指輪を奪う為に戦を始めたとか?」


「なるほど。それにしてもだ。奪ったところでエレボスには使えない……」


「使えないって、どゆこと?」


「グレイプニル・リングの力を行使するには、秘密とされてる条件が必要なんだ……」


「条件?」


「ああ。その指輪の力を行使するには、条件がもうけられ秘密とされた。二人を除いては……」


「ふたり、って? あっ、アルビオン様とエタニティ様ね」


「そう。しかし、そのふたりも管理者であり、力を行使することはできないんだ……」


「できないって、それじゃぁ、意味ないじゃない?」


「当の二人が、そう決めたらしい……」


「自分で?」


「ああ。始祖神ですら封印出来る力だからな。自分達もしかるべき者に神器と呪文を授ける者でしかないと……」


「アルビオン様とエタニティ様なら言いそうね。さすがは法の番人と呼ばれるだけあるわぁ」


「だから、例え指輪を手に入れても、力を行使する資格と呪文を知らなければ宝の持ち腐れってやつさ……」


「その資格と呪文って?」


「残念だが、それはアルビオンとエタニティの頭の中にある……」


「なぁんだ、マーリンも知らないんだぁ」


「と、思うだろ……」


「エエっ! 知ってるのっ!? おせぇておせぇて!?」


「絶対ナイショだぞ……」


「ハイハイ、ナイショ、ナイショ!」


「指輪の力を行使出来る資格とは……」


「資格とは?」


「新たな王たりうる者……」


「……。スミマセン。分かりやすく、御願いしますm(_ _)m」


「ようは、次に世界を引き継いで王となる可能性、資格のある者ってことになるな……」


「ついで……、王様になる?」


「ってことは?」


「ってことは、もしかして……。王子様っ!?」


「正解。だから、既に闇の王となってるエレボスは資格から外れてる……」


「ナルホドぉ。で、呪文の方は?」


「呪文は……」


「呪文わぁ?」


「知らんっ!」


「なぁんだ、やっぱり知らないんじゃナイ!」


「残念でした……」


「ま、そこまで知ってる人間ってだけでも、犯罪モンよね」


「だろ。呪文は二人の記憶の中。簡単に分かるぐらいなら苦労しないだろ……」


「ごもっとも。でも、ナンでそんなに詳しいの?」


「そりゃぁ、俺が天才だから……」


「よっ、さすがっ!大魔法使いっ!!」


「いやっ、それほどでもぉ……」



 ただ、そんなマーリンにも確証が持てるだけの材料は少なかった。


 ここで語りはしなかったが、最後の呪文についても思うところを持っていたマーリンではあった。


 彼の近くに予言者である”黄昏たそがれのモイラ”たちが居た事も大きいであろう。そのずば抜けた状況を推察する能力が導き出した答えは正確であったが、その能力が故に、秘密の呪文を口にする事には躊躇ちゅうちょせざるを得なかった。






 つづく

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